Person 17-2 並び立つ傑作
初版 2025/02/05 18:22
改訂 2025/02/06 12:39

マックス・レーガー/クラリネット五重奏曲 イ長調op.146
第1楽章 モデラート アマービレ
第2楽章 ヴィヴァーチェ
第3楽章 ラルゴ
第4楽章 ポコ アレグレット
クラリネット五重奏曲と言うと先ずはモーツァルト。それからブラ―ムス。少しぶっ飛んでパウル・ヒンデミット、
…いやボクはこの胆汁気質のこの作品をあげたい。それもモーツァルトの次あたりに…後ろから石でもぶつけられそーだけど。
この曲はモーツァルトと同じイ長調の作品。彼の室内楽は膨大で聴けもしないのに23枚のCDの全集が家にある。衝動買いの最たるもので自戒の念を込めてMuuseoのため込んだ音楽の1の部屋の冒頭の写真に使っている。その中でこの曲を捜したけれど、なかなか見つけられなかった。何のことはない1枚目のCDに入ってた。( ´艸`)
普段は今はもう多分売っていないだろうカール・ライスターのクラリネットで録音されたLPをダビングしたメタルテープで聴いている。
正直持っている全集では聴いてないんだね。
さて、この レーガーのクラリネット五重奏曲は晦渋であることは間違いないんだけど、何度も聴くうちに、何度も聴くだけの傑作であることがじわりとわかってくる。
後ろを振り返るとブラームスがいて、前を見るとヒンデミットがいる。
彼はモーツアルトのような不可思議で諦念の中に底のない寂しさや、愛しさを希有な音の紡ぎ方で、得難い心象をボクに与えてくれるものではないが、そこにモーツアルトとレーガーがあり、「さあ、どっちを聴こうか」という段になると不思議とレーガーに手を伸ばしてしまう。
ボクはこ難しいオヤジではないのだが(爺はそろそろそこに自信がなくなってきた)、何故か、このクラリネット五重奏曲が好きです。
ここではカラヤンとベルリンフィルを引き裂いたかのザビーネ嬢とウイーン・セクステットの演奏を薦めましょうか。
この曲は彼の数少なそうだけど、親しい友人であったカール・ウェンドリング教授に捧げられています。(この人がどういう関係がある人か知らないんだね僕は。)
この曲といきなり出会うと『やあ!』と言った後でクルリとUターンされそうです。そこでグッと我慢して聴くと、例えば古典主義と豊かで洗練された後期ロマン派の半音階主義(後期ブラームス、シェーンベルク)に出会ったことのない方でも、ちょっと不可能と思われるような形で出会うのかもしれません。
第 1 楽章 (Moderato ed amabile) は広々として叙情的で、幅広い第 1 主題と、穏やかで静かで立ち止まっては少し駆け出すようなの第 2 主題を持ちます。クラリネットの息遣いがぴったりはまる感じ。
続く第2楽章のヴィヴァーチェ はスケルツォの舞踏のリズムが刻まれ、簡潔で伝統的な構成を保っています。クラリネットと弦楽のリズムの交差は、古典から頭を少し未来に向けているような感じ。
そして第3楽章の『ラルゴ』は、3 部構成の思索的で内省的でと言える深いところから聴こえてきて彼がそれまでに作った音楽の中でも出色ではないかと思います。この部分で最も説得力のある渋さを持つのはブラームスでしょうが、セピアカラーから抜け出したところでクラリネットが静かに歌います。
最終楽章 (Poco allegretto) は主題と変奏曲であり、古典音楽としてその才能を明示できる変奏という分野において彼のいくつかの作品と同様に作曲家としてのレーガーの優れた特徴を示しています。
でもいつも思うことですが、クラリネット五重奏曲をプログラムに載せるときはどうしてもモーツアルトですね。もう一曲となったとき同じ調性のものを選ぶか、諦念の叙情を短調で歌うブラームスを選ぶかですね。敢えてこの曲を選んだプログラムがあったら是非聴きに行きたいものです。

Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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woodstein
2025/02/06昨年亡くなった私の父は、日本モーツァルト協会に入会したほどのモーツァルトを始めとしたクラシック音楽愛好家であり、当然私もその影響を受けたのですが、その父に話の流れで、モーツァルトを主題とした変奏曲の類についてどう思うかを尋ねたことがありました。当然、父はベートーヴェン愛好家でもあるので「『魔笛』の主題による変奏曲は嫌いではない」と言っていましたが、他はどうかと尋ねると「レーガーの『モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ』なる曲を聞いたことはあるが、あれは気に入らなかった」という旨を言っていました。父は好みとして後期ロマン派以降のクラシック音楽は、特定のものを除いて総じて好みではなかったので、そんな意見だったのでしょうが、そのことで興味を持ち、ほどなく上述の曲を聴いたのがレーガーとの出会いでした。
レーガーについてはあまり馴染みはないものの、それなりに思うところはありますが、それについてはいずれ機会があれば…。
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Mineosaurus
2025/02/06レーガーをお聴きになる方を久々に知りました。ボクにとってもあまりに膨大すぎて入り口が見つからない作曲家です。変奏曲の作曲家としての実力は本物ですし、冗談が通じない苦手なおじさまという感じです。でも、どうしてだか聴きたくなる時があるんですね。モーツァルトを聴こうとしていて『お、その前にこれを聴いてからにしよう』という感じです。お菓子をおいしくいただく前の渋茶のひと口のような…
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