Person-24 エルノ・フォン・ドホナーニ 『熱い20世紀』
初版 2025/02/12 17:31
改訂 2025/02/12 17:31

エルンスト フォン ドホナーニ/ヴァイオリン ソナタ第1番嬰ハ短調 op.21
第1楽章 アレグロ・アパッショナート
第2楽章 アレグロ・マ・コンテネレッツァ(優しく愛情を込めて)
第3楽章 ヴィヴァーチェ・アッサイ
エルノ・ドホナーニは20世紀の著名なピアニストであり作曲家であった。
スタイルは後期ロマン派特にブラームスの重さと目の詰んだ曲想を持っている。
現在活躍している指揮者クリストフは彼の孫にあたる。
僕の大好きなピアニストであったゲーザ・アンダは彼の愛弟子だった。他にお弟子さんはアニー・フィッシャー、指揮者ゲオルク・ショルティやフレンツ・フリッチャイなども門下生に名を連ねている。
ドホナーニはオーストリア=ハンガリー二重帝国時代に生まれたけれど、ハンガリー人として当時のバルトークやコダーイのような愛国的芸術家とは異なり政治に超然とした態度を取り続けたが、帝国側からはバルトークやコダーイと同じ左翼芸術家とみなされていたようだ。
彼は最初の作品であったピアノ五重奏曲がリスペクトしていたブラームスから絶賛され、文字通り、ブラームスへの敬意を貫いた作曲家であった。
なのに彼自身多くの演奏を録音に残しているにも拘わらず、シューマンやベートーヴェンに比べてブラームスの作品は少ない。
敬して遠ざけたのかなあ…?
彼の室内楽の中で記録されているヴァイオリン・ソナタはこの一曲である。
エネスコやバルトークとカップリングでよく録音される。
第1楽章はやはり20世紀の洗練を纏いつつも、熱気にはブラームスのような厚みを孕んでいる。
バルトークのような民族的な作風ではなく、ドイツ・オーストリアの音楽の中にハンガリーの血の流れはひっそりと閉ざされている。
激情的なパッセージが決して俗っぽい見栄にならず、品格を持った中間部のカンタービレはヴァイオリンの高音の悲鳴をゆとりを持って抑制しつつ、表面静かな歌になる。自制された精神力を感じる楽章です。
第2楽章もアレグロですが、歌い出しの歌謡的なフレーズが変奏され、どこかでブラームスのヴァイオリンソナタが聞こえてくるようです。
ピツィカートの後に再現される主題は形を変え、コケットなピアノに絡みつつ楽章を閉じる。
第3楽章の生き生きとした響きが唯一作られた年代にふさわしい着想を持っているようだ。
決して19世紀ロマン派の生き残りとか言うレベルではなく、人間の本質が持っている短調の旋律への共感を素直に示した作品である。
全ての熱情が吐き出された後のコーダは素晴らしく美しい!
全楽章の演奏がいくつかあった。ただ、古いモノラルが多いね。ピアニストとしてのドホナーニの名声がまだ高すぎるのかとも思う。
当然演奏会では重要な20世紀の作品という位置づけではある。ボクは不勉強で参考にした演奏はヴァイオリニストもピアニストも知らない。
アナログレコードからのダビングのようで、スクラッチノイズがヴァイオリンのセピア色の音色によく合っている。
全部で20分弱の作品。
19世紀、20世紀、という音楽の歴史のとらえ方がもう少し、広いスパンになったら、間違いなく、彼はブラームスの空いている隣に座っていると思う。

Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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