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カール・シューリヒトのブルックナー第7番
カール・シューリヒトのブルックナー交響曲第7番
1964年9月 デン・ハーグでの録音 指揮:カール・シューリヒト
オーケストラ:バーグ・フィルハーモニー管弦楽団
録音は平凡。音は薄く、残響音は長くはない。
オルガンの重層的な音の重なりが常にオーケストラの弦楽に、管楽に聞こえるはずであり、求められる筈の演奏。
この演奏には現代の楽器を駆使する精緻な音の追求はない。
『交響』という、様式を不問にしたレベルでの音響の交錯この曲ほどSymphonyというより交響曲という呼び名が似合う曲はない。
第1楽章の弦楽のトレモロからフィナーレ迄、音の景色が色濃く心に残る。
セピア色に滲んだ景色の中に回顧するようにゆっくりと第二楽章の叙情が滔々と流れる。スターバトマーテルの主題が耳に同化する。
オイゲン・ヨッフムがリンツの協会で録音した演奏が最高だとボクはいまだに思っているのに、この古い演奏と録音は何だろう!
オーケストラの力のなさにすらボクは目をつぶってしまう。
カール・シューリヒトがボクに聴かせたブルックナーの第7交響曲は、この作曲家の全てを知っているかのように、遠くから響いてくる余韻を、薄い音の重なりの中から拾い上げ、無形の暖かさに包まれた音符の流れとしてボクに聴かせる。
紫色のラベンダーが一面に揺れる丘。夕暮れの丘はホルンのセピアの音色の中に染まり、ラベンダーの紫も、山々の深い緑も古い写真の中の風景のようにくすみながら、いつまでも沈まない太陽がゆっくりと頭を垂れるのを待っている。
どんな演奏家の録音でも、その時までボクはこの曲を最後まで聴けたことがなかった。
この第7番のシューリヒトとブルックナーには田園のオーケストラが似合う。古びた田舎町の協会のパイプオルガンが鳴るように。
余談だが、中学生の頃、洋間のステレオでボクはビートルズを聴いていた頃だ。フランス在住の叔母が何を思ったかボクにレコードを贈ってくれた。コンサートホールという会社のLPでシューベルトの未完成とベートーヴェンの第8番が収録されていた。
クラシックレコードを初めて通して聴いた。それがこの年になるまで続いている。そのプレゼントがなければ、きっと僕の耳はクラシック音楽に向くことはなかったろうと思う。感謝。
https://youtu.be/a9_pJ8R3GLY?si=JYwHnDbBB6FSbZdu