ジェラルド・フィンジィ チェロ協奏曲・ピアノと弦楽のためのエクローグ他

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ジェラルド・フィンジィのチェロとピアノのための協奏的作品等を一枚に収めたCD

僕がHMVで購入した頃はあんまり彼の作品は出回ってはいなかった。今はYO-Yo-Maとか比較的名前の知れたチェリストの演奏も、力のある管弦楽団の演奏も聴くことができる。このCDは比較的平均点で作品の紹介をするには適している。

1.チェロ協奏曲op.40
 第1楽章 アレグロ モデラート
 第2楽章 アンダンテ クワイエット
 第3楽章 ロンド:アダージオ-アレグロ ジョコーゾ

2.ピアノのための大幻想曲とトッカータ

3.ピアノと弦楽のためのエクローグ
  (パストラル=田園とか羊飼いの風景を描写した詩))

フィンジィの作品は一度彼のクラリネット協奏曲を取り上げてLabに書いた。
https://muuseo.com/Mineosaurus/diaries/138

これ以後もとりあげたい作品がいくつかある。
中でもこのチェロ協奏曲は20世紀に作曲された調性音楽として出色の出来映えだと考えています。彼の作曲家としてのあまり長いとはいえない人生の中で1955年は死を翌年に控えた最晩年の円熟期であり、名作クラリネット協奏曲に続く聴き応えのある作品でしょう。
こういうきっちりとした3楽章形式で懐かしい響きと節度と品の良さを持つ協奏曲を20世紀半ばに書く意味、とか言うことになると議論したい向きもいるかも知れないけれど、実験的な冒険はなく、ただただ音楽と楽器と感性に忠実な本当に自然な心を感じる作品です。

第1楽章の序奏の厳粛さそしてチェロが入ってくるときの渋い主題の展開は、あたかもエルガーが楽譜に記した『ノビルメンテ』の標記がここにも銘記されているのではないかと思える。
本人は純粋のユダヤの家庭に生まれているが育ったイギリスの空気がその血管の隅々まで行き渡っている。
サー・エドワードの作品が持つイギリスのプライドを継承している作品です。
とはいっても、そのエルガーの作品ほど劇的緊張力があるものではなく、ディーリアスの自然を謳歌する手放しの抒情の流れが明確であるわけではない。
それでも、彼らの作品を止揚した中庸がどの楽章にも燻銀のように鈍く輝いている。
第1楽章は長い。
でも技巧的にも主題の気品からも、聴き直すたびに引き込まれるものがある。

第2楽章の素朴だが美しく見事な旋律、そしてコーダ近くの硬質のロマンティシズム、独自の劇性。変転しつつ流れ、じわりと心の奥を熱くする。
主題は何度繰り返されても美しく優しいメロディは淡く糸を引くように心に向かって流れ込む。

そしてここで紹介する第3楽章。
ピツィカートを織り交ぜた序奏から遠くのホルンの響きが終わる頃、非常に印象的なギャロップを始める。
きれいに磨かれた乗馬用の駿馬が踏むリズムのように整然としつつ、『ここに来たかったんだなあ』という感慨を抱かせる音楽が繰り返される。
細かいチェロの技術は高いものが要求されているが、管弦楽との調和が絶妙で決して目立たず、協奏というよりも共奏である。
そしてとてもプライドを感じる作品です。
これは是非全曲を聴いて頂きたい音楽ですが、ちょっと長いですねえ。

聴きながら書きましたので結構な時間がかかりました。

第3楽章を

https://youtu.be/tKFVEq0KJNg?si=XZOA_vW-La2nbhHc

CDには日本語の裏書が一枚付いています。

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