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- 9F ため込んだ音楽1(Classic)
- ヴェートーヴェン/後期ピアノソナタ集 28番~32番までの5曲 マウリッツィオ・ポッリーニ
ヴェートーヴェン/後期ピアノソナタ集 28番~32番までの5曲 マウリッツィオ・ポッリーニ
ポッリーニはこの後期の曲の録音からベートーヴェンのピアノソナタの全集を始めた。音楽もここまでくると、誰が弾いたからどうだというようなレベルではない。ただ、ショパンコンクルールでアシュケナージと1位を分けて以降、10年間彼は録音をしなかった。そしていきなり出たのがストラヴィンスキーの『組曲ペトリューシュカからの3楽章』だった。
物凄い演奏だった。アポロ的でアルカイックな彼のピアノのソノリティはショパンのエチュードをロマンティックな部分を削ぎ落したマッシヴな音楽として聴かせてくれた。ショパンをあまり聴かないボクの耳を引っぱって『聴いてみろ』と言わんばかりだった。
そしてこのベートーヴェンが出た時は作曲者の顔を浮かべることなく、唯々、その鳴りきったピアノと深く何処までも濁りのない世界を見せてくれたと思う。
特に第29番の第3楽章の長大なラルゴ/アレグロマエストーソの心の隅々まで真っ白な陽光に染まってゆくような演奏。その集中力が長大な緩徐楽章を支え切った終楽章のフーガの見事さ。
ここから彼は長い年月をかけて最後の5曲をのぞくベートーヴェンを録音し始めたが、そこにはイタリア人後の中に流れるカンタービレを聴かせるゆとりも出てきた。ただ、技術的にはここからバルトークまでがピークだったのではないかとぼくは思っている。
申し訳ないが、年を取ってくるにしたがって聴き手のボクの方もそれなりに根元が緩んできて、あの頃の集中力はない。
このCDは素晴らしい。特に第29番は。
https://youtu.be/qX6WFwQ2PnE?si=6yYgFZ_x__87MBbi
