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Thalassoceras sp.
Species :Thalassoceras sp. Age :前期ペルム紀アーティンスキアン location:カザフスタン/アクトべ カザフスタン産のペルム紀のゴニアタイト。 ペルム紀の頭足類化石といえば一般市場の流通に乗る標本は産地が限られており、カザフのアクトべ周辺かインドネシアのティモール島西側が二大産地となっている。 そのなかでもThalassocerasは個体数が少なく割と希少な標本。 特筆すべきは特徴的な縫合線だろうか。 巻きの内側(全体の3分の1程度の箇所)はトルノセラス科に類似したアーチを描いているが、3分の2から外側においてはアンモナイト型とはまた違ったカエデの葉の様に鋭く枝分かれした複雑な縫合線を描いており、非常に面白い縫合線を有している。 カザフスタン産のペルム紀化石は、頭足類化石収集の初期にたまたま大放出されていたのを買い占めたため多数所有してはいるものの、特に石炭紀やペルム紀のゴニアタイトに関する知識はほぼ皆無。 そのため、この様な縫合線を有するグループがどういった経緯で進化したのか。 それ以前にデボン紀以降どのようなグループがいたのか。 まったくと言って良い程知識がない。 遠い将来、潤沢な時間を得られる時期が来たら、こうした標本群をじっくりと調べて整理しつつデータベースや系統樹にまとめたい。
化石 2016年頃 ペルム紀Arato510
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Cladiscites beyrichi
Species :Cladiscites beyrichi Age :後期三畳紀ノーリアン location:インドネシア/西ティモール ノエ・ビハティ セラタイト目の仲間。 セラタイテス属の次くらいに流通量が多い属。 外殻を残しており、縦リブとは違った横にはしる条線がしっかりと確認できる反面、裏側は磨かれ縫合線が観察可能な標本となっている。 購入時点でこの姿だったため、知的好奇心に溢れていた収集初期に飛び付いて購入した標本のひとつ。 よくあるセラタイト型縫合線ではなく、複雑に枝葉がわかれた縫合線を有しているため、アンモナイト目の仲間だと勘違いする人も居そう。
化石 2016年頃 三畳紀Arato510
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Lituites cf.Toernquisti
Species :Lituites cf.Toernquisti Age :オルドビス紀 location:スウェーデン/エーランド島 新しくコレクション入りしたゼンマイ。 ではなくリツイテス目のノーチロイド。 この標本も例にもれずLituites lituusとして販売されていたが、幼年殻に相当する巻殻の部分が非常に小さく外径20㎜程度しかない。 私が所有している他のリツイテス属標本と比較しても半分程度しかない。 巻殻がみるからに小さいので、購入前にWebの販売写真を見てすぐにあたりをつけて事前にざっくりっと同定したうえで購入した。 リツイテス目を数値ベースで細かに分類した論文を参考に 20㎜前後の巻きの小さなリツイテス属はL.ToernquistiもしくはL.baculusのみ。 L.Toernquistiは資料内での計測標本で巻殻の直径が最大モノは20㎜。 L.baculusは産出が少ないのか、計測数が1例のみで、資料上の標本モデルでは巻き殻の直径20.8㎜。 両者の違いは、巻き部分の拡大率とバックコイル部分(巻き部分の背面のこと?)の装飾の違いらしい。 L.Toernquistiが1.5倍の急速拡大とのことなので、細かい計測はしていないものの、拡大率が高いのでこの標本は、両者の二択であればL.Toernquistiと判断して概ね間違いなさそう……な気がしなくもなくもない。という素人判断で採決。 リツイテス属以外で巻きの小さな属は、ホルミセラス属やアンシストロセラス属がいる。 しかし初期に分化しているグループで双方とも太肋なしの細肋のみの殻を有しおり、竿殻は曲がらず真っ直ぐに伸びて、ホルミセラス属は太目の竿を形成しアンシストロセラス属は極太に極大成長する。 素人でもひとめで判別がつくほど特異な形態をしているため、これらの属ではないと言える。 個人的に同属別種を何体も集めたのはリツイテス属くらいだろうか。 リツイテス目の仲間対して強い興味を抱いているというのもあるが、リツイテス目の分類を細かにまとめてくれた論文があるおかげで同定作業がはかどり収集欲が湧く。 やはり研究者は偉大だ。
化石 2025年3月 オルドビス紀Arato510
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Buchiceras bilobatum
Species :Buchiceras bilobatum Age :後期白亜紀コニアシアン location:ペルー/バグアグランデ 別途掲載しているティッソティア属(※1)同様にアンモナイト目の中でも単純な疑似セラタイト型の縫合線を有している。 個人的に複雑な縫合線を有したアンモノイドを収集するのとは対極的にアンモナイト目では単純な縫合線を有した属種を見つけたら収集する様にしている。 ティッソティア属もそうだが、頭足類化石の産地としては割とマイナーなペルーや中東などで産出するらしい。 共に縫合線が単純化(一種の後退的進化)を遂げた属種が、近時代・同海域に生息していたということは、単純な縫合線を有する種が生存に優位な環境だったのだろうか。 アンモナイト目の系統樹に関して知識が皆無なので詳細な分化系統は不明だが、アカントセラス科(マミテス亜科)のブチセラス属とティッソティア科のティッソティア属は共にアカントセラス上科なので、縫合線を単純化させたグループのルートとなる属種がアカントセラス上科内に居て、その属種から単純な縫合線という特徴を継承したと考えるのが自然。 だとすれば、その属種はこれらの標本が産出するコニアシアン以前のかつての海域で発生したのかもしれない。 ※1=https://muuseo.com/Nautil_Works/items/48?theme_id=49412
化石 2016年頃 白亜紀Arato510
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Medlicottia orbignyana
Species :Medlicottia orbignyana Age :前期ペルム紀アーティンスキアン location:カザフスタン/ウラル南部Aktjubinskaya Oblat プロレカナイト目の仲間だが縫合線が複雑なメドリコティア科の仲間。 複雑と言っても幾重にも枝葉がわかれたアンモナイトタイプではなく波が密に細かく刻まれている。 アンモノイド黎明期のバクトリテス目は例外だが、このメドリコティアの様にアゴニアタイト目~セラタイト目まで各目で、アンモナイト目の仲間以外にもある程度縫合線が複雑化したグループ(※1)はいる。 ただし複雑な縫合線を有しているグループはいずれも傍流。 次世代の目を生み出すグループは概ね単純であり、アゴニアタイト目~アンモナイト目初期グループまでの直系の中で、縫合線の複雑化を一番推し進めたのは、意外にも一番地味なプロレカナイト目である。 しかし、このメドリコティア科の仲間は傍流であり、残念ながらこの細かな縫合線を引き継いだ次世代を生み出す事なく絶滅する。 別途コレクションアイテムとして掲載しているダラエリテス属(※2)が次世代のセラタイト目の仲間を生み出す事になる。 ※画像5=引用"Classification of the Late Paleozoic Family Medlicottiidae Karpinsky (Ammonoidea)" ※1=ゴニアタイト目で縫合線を複雑化した例:https://muuseo.com/Nautil_Works/items/47?theme_id=49407 ※2=https://muuseo.com/Nautil_Works/items/22?theme_id=49409
化石 2016年頃 ペルム紀Arato510
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Goniatites gerberi
Species :Goniatites gerberi Age :前期石炭紀(ミシシッピ亜紀)ビゼーアン location:モロッコ/リガット ゴニアタイト目のタイプ属にして、貴重な石炭紀のアンモノイド標本。 属レベルではデボン紀~後期三畳紀にかけて産出するらしい。 驚異の長命属だ。 しかし、今回の標本であるG.gerberiは石炭紀のみの産出で、ゴニアタイテス属の他の種についても石炭紀に産出する種が多い模様。 石炭紀の頭足類化石である程度鑑賞に堪えうる保存状態の標本は希少なため、駆け出しコレクター時代に何も考えず脳死で飛び付いて衝動買いした標本。 天然物のコレクション趣味においては、逃せば一生手に入らないどころかお目にかかる事すらできなくなる可能性が高いため、その時々の衝動やフィーリングは非常に重要。 この標本は一生手に入らないという程の標本ではないが、購入した際の衝動についてはまったく後悔していない。
化石 2016年頃 石炭紀Arato510
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Gomphoceras sp.
Species :Gomphoceras sp. Age :中期シルル紀ウェンロック location:スウェーデン/ゴットランド オンコセラス目のノーチロイド。 Oncoceras sp.として販売されていた標本だがどう見ても違う。 アレもコレもオンコセラス属に分類されるのはブレビコーン(※1)あるある。 ※1=ズングリした形状の殻 毎度のことながらノーチロイドの同定については、専門性の高いセラーでも雑同定が多い。 Gomphoceras sp.として扱っているが、半世紀以上昔の古い文献と海外のノーチロイドコレクターのWebサイトを参考に産地、時代、サイズ、形態が一番違い属だったので割り当てたが、あくまで暫定。 同オンコセラス目のトリメロセラス科(※1)やテトラメロセラス科の仲間が、ゴンフォセラス属と類様の形態で時代も近いので、同定が非常に困難。 すぼんだりヒダ状に波打ったりした個性的な殻口になっているのだが、それが観察できれば話は別。 また、オンコセラス目だけでなくディスコソルス目にも類様形態の属種が存在しており、時代と外観的形態を考慮するとOvocerinaという属が一番近い様に見受けらる。 しかしOvocerinaは隔壁の間隔が狭くより細かいうえに、恐らくシルル紀の中でもウェンロックより後のラドロー以降の産出と思われる。 更にシルル紀頭足類の二大名産地であるチェコでの産例は見つかったが、ゴットランドからの産例は確認できなかった。 オンコセラス目とディスコソルス目にはブレビコーン繋がりで似た外観の属種が多数いるが、産例や時代を抜きにして形態だけで判断するなら素人としては連室細管を観察しないと正直わからない。 ※1=所持参照用URL:https://muuseo.com/Nautil_Works/items/13?theme_id=45684
化石 2024年3月 シルル紀Arato510
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Anarcestes cf.latissimus
pecies :Anarcestes cf.latissimus Age :前期デボン紀エムシアン location:モロッコ/Bou Tcharafine アゴニアタイト目のアンモノイドなのだが、昔は目名にアナルセステス目という名称が用いられていたらしく、日本語の資料では未だにアゴニアタイト目ではなくアナルセステス目と表記されているものもある様子。 日本は北海道をはじめとした白亜紀末期の頭足類化石の名産地だが、ジュラ紀以前の海生化石を含む地層が貧乏しいため、アンモノイドの研究はほぼされていないのだろう。 そしてこの標本だが、中心に丸いプロトコンクという部位が観察できる。 プロトコンクとは軟体動物が初期発生の段階で身に付けている殻で、オウムガイが皿状なのに対してアンモナイトが球状といのがノーチラス亜綱とアンモナイト亜綱を隔てる形態的な差異らしい。 因みにノーチロイドであるオルソセラス目の仲間から、球状のプロトコンクを持つバクトリテス目が産まれたのがアンモノイドの始まりで、その後アゴニアタイト目を生み出したという流れ。 頭足類化石にはまり始めた頃にその情報を知って、プロトコンクが観察できる標本を探しこの標本を手に入れた。 標本自体は非常に小さいが、プロトコンクが観察しやすく大変素晴らしい標本。
化石 2016年頃 デボン紀Arato510
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Epiwocklumeria applanata
Species :Epiwocklumeria applanata Age :後期デボン紀ファメニアン location:ポーランド/コヴァラ クリメニア目の非常にレアな三つコブ系の属種。 ポーランドのデボン紀標本ではよくある事なのだが、外殻が熔けてせっかくの三つコブ形状が観察しずらくなっている。 遠方の実家保管で2体所有しておりクラウド上の写真整理でみつけため、2体ごっちゃになって雑に掲載しているが産地・属種共に同じなのでご了承いただきたい。 入手は化石収集の長いブランクを経る約十年前に2体同時に購入。 頭足類化石にハマった直後くらいのガチのペーペーだった時分。 クリメニア目が頭足類の中のどんな存在だとかを知ったばかりの様な状況。 クリメニア目はアンモナイト目への系譜に連ならない遠縁の分家筋で、デボン紀末期に爆発するかの様に一気に適応放散して、デボン紀の終焉と共に爆散するかの様に絶滅したグループ。 当時はそういった玄人好みのコアな標本が好きで、大衆に人気の白亜紀アンモナイトそっちのけでクリメニアの標本を探し回っていた。 そんな中で、たまたまポーランドのセラーから入手した。 その祭、今は音信不通となった先輩頭足類マニアから、クリメニアと言えばポーランドが名産地という情報を教えてもらった。 当時、ebayにウォックルメリア上科の標本が出品された際アラートを飛ばすよう設定していたのだが、頭足類化石にハマって1年ほど狂った様に集めた後、勉学や仕事に我武者羅に打ち込んで化石収集からすっかり離れてしまい、収集復帰した際に十年近く溜まったアラート専用フォルダを漁ってみたが、エピウォックルメリア属は一件も通知が来ていなかった。 ※ただし、もっとレアな近縁属の標本は一件だけ通知が来ていた。履歴を見たら5年くらい昔。悔しいッ!! とにかくビギナーズラックで入手出来てよかったといえる、個人的に思い出深い標本。 ちなみにebay以外では、モロッコ産のゴニアタイト(※1)がエピウォックルメリア属として販売されているのが散見されるが、標本ではなく美術品として化石を取り扱っている怪しい業者が、故意に偽って販売している様に見受けられるので気を付けて頂きたい。 ※1=ゴニアタイト目の仲間には、Mimimitoceras、Maeneceras、Cheilocerasなど濃いめの成長線が等間隔に走り三つコブや四つコブに見える属種が存在する。もちろんこれらの標本そのものは素晴らしいモノである。 ↓ウォックルメリア科の三つコブ仲間 https://muuseo.com/Nautil_Works/items/56?theme_id=49408 https://muuseo.com/Nautil_Works/items/46?theme_id=49408
化石 2016年頃 デボン紀Arato510
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Parawocklumeria paradoxa
Species :Parawocklumeria paradoxa Age :後期デボン紀ファメニアン location:ドイツ/メンデン 非常にレアな三つコブ系クリメニアの中では割とたまに……それなりに稀に流通してるパラウォックルメリア属の物凄いちっさいヤツ。 この標本は5㎜くらいだが、20㎜くらいある海外コレクターの写真を見たことがるのでもっと成長するはず。 しかし、市場ではそのくらい大きな標本は見た事が無い。 20㎜前後のサイズであれば、間違いなくレア度★4以上に跳ね上がる。 因みにP.patensとして売られていたが全然違う。 ドイツのデボン紀標本全般的に言える事だが、しっかり外殻が保存されている代りに縫合線を観察するのは困難。 仮に縫合線が露出していたとして、今回の標本は小さすぎて観察困難なので、縫合線での同定は不可能。 ヘソやコブの形状でしか属種の判別ができないのだが、どの資料を見てもこの標本はP.paradoxaだと言っている様に見える。 成長に伴い巻きが変化するのかもしれないが、成長の途中で丸巻きに変化するWoklumeria(※1)やSoliclymeniaの様に成長に伴って変化するといった情報が見当たらない。 P.patensについてはゴニアタイト図鑑というWebサイトが非常に綺麗な標本として掲示されているが、それと見比べても似ても似つかない。 ※画像2枚目:引用"fossilium catalogus animalia Pars 138" ※画像3枚目:引用"Impact of environmental perturbations on heterochronic development in Palaeozoic ammonoids" ※1=https://muuseo.com/Nautil_Works/items/46?theme_id=45504
化石 2024年1月 デボン紀Arato510
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Peismoceras sp.
Species :Peismoceras sp. Age :後期シルル紀ラドロー location:チェコ/クッヘルバート Trochoceras sandbergeriiとして入手したオルドコレクション。 Trochocerasはノーチラス目ルトセラス科のノーチラスで本来、デボン紀の属らしいけど何故かシルル紀産になっていたうえにリブがもっとはっきりしており、なによりあからさまな傾斜コイル状の巻きが確認出来るハズなのだが、この標本は巻きが僅かに傾斜している様に見えなくもない程度で、母岩が邪魔過ぎて満足に観察できないためなんとも言えない。 岩質は確かにチェコ産のシルル紀の標本群同様の茶色で硬い岩質をしているので、産地年代よりも属種名のほうが怪しい。 そう思って調査したところ、種小名までの同定は素人には不可能だったがPeismocerasというタルフィセラス目の属に近いとの判断に至った。 ※ただし、コレクションとして素人が所有する場合に限る笑 以下、調査の経緯。 https://muuseo.com/Nautil_Works/diaries/16
化石 2024年2月 シルル紀Arato510
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Lechritrochoceras sp.
Species :Lechritrochoceras sp. Age :中期シルル紀ウェンロック location:スウェーデン/ゴットランド タルフィセラス目バランデオセラス亜目レクリトロコセラス科のノーチロイド。 Labログにも記載(※1)しているが、Discoceras sp.はPeismoceras sp.として誤った認識で市場流通しており、市場でペイスモセラス属として扱われているディスコセラス属はトロコセラス科の仲間だが、本当のペイスモセラス属は今回紹介しているレクリトロコセラス属と同じレクリトロコセラス科(※2)に分類されている近縁の属種である。 ※ディスコセラス属『https://muuseo.com/Nautil_Works/items/1?theme_id=45684』参照 ※ペイスモセラス属『https://muuseo.com/Nautil_Works/items/55?theme_id=45684』参照 別途掲載しているDiscoceras sp.(ペイスモセラス属モドキ)と比較すると、成長倍率が高く太いリブを形成しており、外観だけならノーチロイドよりも白亜紀末のアンモナイトに近い印象を受ける。 巻かない殻が有殻頭足類のデファクトスタンダードだったオルドビス前期の時代から、巻き型の先駆けとして繁栄していたタルフィセラス目。 その中でもレクリトロコセラス科の一群は更なる異端児で、一見すると普通に巻いている様に見えるが、右斜め螺旋を描いてネジ巻き状に成長している異常巻きという特徴がある。 ※画像2枚目参照 この標本については、背面側に突き出ているはずの幼年殻が母岩に埋没して観察できないので残念。 しかし採掘時に中心付近から真横に真っ二つに割れており、セラー(個人的に付き合いが長く一番取引量が多い全幅の信頼を置くドイツのセラー)いわく補修前に保存されているのを確認しているとのことでプレパレーション後の観察が期待できる。 ※1=Labログ『https://muuseo.com/Nautil_Works/diaries/2』参照 ※2=写真5枚目参照(引用:"Treatise on Invertebrate Paleontology Part K, Mollusca 3, Complete Volume")
化石 2024年3月 シルル紀Arato510
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Rhynchorthoceras sp.
Species :Rhynchorthoceras sp. Age :中期オルドビス紀 location:ドイツ/Kassow,Mecklenburg-Vorpommern リンコルソセラス属という名前が紛らわしい(※1)が、オルソセラス目の仲間ではなくリツイテス目の仲間。 ※1=学名を分解して読むとRhynch・orthoceras=リンチ・オルソセラスと読めるため紛らわしい属名 リツイテス目といっても、本属は幼年殻が巻かないタイプ。 直角貝タイプの中でも成長率(※2)が割と高く先端(幼年殻)が僅かに曲を描いているのが特徴。 ※2=成長に伴い殻径が肥大する比率 本属の曲型を描いた幼年殻が巻いてゼンマイ型リツイテスに進化した説がある。 リツイテス目のゼンマイ型は大別して、2つのグループに分かれている(※3)が、世界中のオルドビス紀地層で多産しているリツイテス属と、稀産のホルミセラス属に分化する。 ホルミセラス属をざっくり説明すると少し巻いた後、曲を描かず真っ直ぐに太い竿を形成する属で、細肋はあるがリツイテスの様な太肋は有していない。 更にアンシストロセラス属という極大成長して極太コーン状の竿を有する属を生み出す。 この標本に話しを戻そう。 母岩を地面側に置いた状態で側面から観察すると、殻の細いほう(幼年殻方面)3分の1~4分の1程度あたりから丸みを帯びている様に見えるので、微妙にカーブを描いている様に見えなくも無くも無くもないが、カーブの先端側が母岩にめり込んでおり判定が難しい。 しっかりと観察したいなら母岩を取り除くしかない。 つぎに産地について。 そしてセラーいわく、この標本は砂利工事?にて産出したとのこと。 ドイツ語話者と日本語話者がつたない英語力と発展途上のAI翻訳を活用してコミュニケーションを取っているため、砂利工事?が何を意味するのかは不明。 →後日調査:恐らく地層の事を指しており、ドイツに砂利を含むオルドビス紀地層があるらしく、細かな年代の特定が難しい様子。 最後に標本の評価について。 まず本属の市場流通は滅多にない。 知識に乏しい採掘者やセラーの手に渡り、恐らくオルソセラス類として処理されている可能性もある。 それは直角貝タイプ全般の宿命ともいえる。 そしてこの標本個体においては、住房は欠損しているものの住房側の断面には連室細管が観察できる。 更に表面にカサガイの様な貝類が不着しており、大変おもしろい標本となっている。 この貝類。 まさかッ!? 頭足類の先祖、単板類の仲間だったりして……。 ※画像4=参照"Phylogeny of Middle-Late Ordovician lituitid cephalopods based on cladistic analysis”
化石 2024年3月 オルドビス紀Arato510
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Lituites cf.kruegeri
Species :Lituites cf.kruegeri Age :中期オルドビス紀 location:中国/貴州省 リツイテス目のノーチロイド。 例の如くLituites sp.として流通していた。 仕方がないので、論文を参考に自力で同定した。 リツイテス目を形態データまで掲載して、ほぼ網羅的にまとめたご都合主義な論文だ。 貴州省にも海生化石を含むオルドビス紀の海成層があるのは割と有名だが、こうした赤色系の岩に苔が生えた様な黄緑がかった様な岩質(地学知識が皆無なので岩質をロジカルに語れない)の標本が多い様に見受けられる。 そしてたまに見かける貴州省のリツイテス属は緩い標本ばかり。 古地理の話になるがオルドビス紀時代に現貴州省にあった海域で繁殖していた種なのだろうか。 本種に限らず緩まきは耐久性に難があるため、化石形成プロセスより前から破損していたり、形成段階の圧で破損したり、発掘時の採掘者の圧(お宝発掘を前にした熱意)で弾き飛ばされたり、プレパレーション(標本整形)時のプレパレーター(標本製作者)の圧(お宝生成を前にした熱意)で弾き飛ばされたりと保存されている標本が少ない。 その点、この標本は巻きが割と観察できる程度には保存されており良質な標本となっている。
化石 2024年2月 オルドビス紀Arato510
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Charactoceras sp.
Species :Charactoceras sp. Age :中期オルドビス紀ダーリウィリアン location:スウェーデン/エーランド タルフィセラス目の仲間。 終始ジャイロコニック(ゆる巻き)かつ横幅の成長率が高く厚みがある珍しい形態のタルフィセラス。 腹側寄りを通る連室細管が確認できる。 太い緩巻きに滑らかな外殻の外観が、モロッコのデボン紀層にいそうな腹足類に見えなくもないけど、隔壁や連室細管が観察できる立派な頭足類。 Charactoceras sp.として購入したものの、同定が疑わしい謎の標本。 論文を見るとキャラクトセラス属は後期オルドの属で形態も異なる。 他の属だと判断して、厚みのある独特の螺管形状と腹寄りの連室細管という形態情報を元に分類を試みた。 でも同時代に類似形態の属が見当たらずお手上げ状態。 最終的に暫定で Charactoceras sp. として扱うことにした。 詳しくはラボページ参照
化石 2024年2月 オルドビス紀Arato510
