湯河原沸石 (yugawaralite) 湯河原町不動滝 #0715

0

湯河原沸石は日本産新鉱物の一つです。箱根火山の一部を構成する新生代第三紀中新世前期~中期(1600万年前~1100万年前)に形成された湯ヶ島層群(ゆがしまそうぐん)の安山岩質の火山角礫岩、凝灰岩中に熱水が侵入して二次的に形成された鉱物で、白色半透明の細脈中に濁沸石などと一緒に産出します。1930年(昭和5年)に当時旧制中学生であり後年高名なアマチュア鉱物学者となった櫻井欽一(さくらいきんいち)氏が発見し、1952年(昭和27年)に林瑛(はやしあきら)氏と共に発表しました。結晶は無色透明で,変形した六角形の薄い板状の結晶をなし、バラバラの向きで集合します。本標本では矢印の先の空隙に板状の自形結晶が観察でき、その他の白く見える脈の部分にも湯河原沸石が存在します。湯河原沸石は日本地質学会により「神奈川県の鉱物」に選定されています。(1枚目~4枚目は背景をソフトウエア処理しています。)

この標本は1973年(昭和48年)に不動滝の水の落ち口周辺の補修工事がなされたときに採集されたものを信頼できる標本店から購入させていただいた原産地標本ですが、不動滝周辺はその後1982年(昭和57年)に湯河原町の天然記念物に指定されたため、現在は採集できなくなっています。湯河原沸石はその後静岡県、宮城県、岩手県などでも見つかっています。

Default