鴻之舞鉱山 青化場/北海道紋別市 PC009-01

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この絵葉書には「住友鴻之舞鉱業所 青化場「メリル」金銀沈殿装置」とあります。青化法(せいかほう)は、シアン(青酸)化合物の水溶液に金が溶けることを利用して低品位の金鉱石から金を浸出させる湿式製錬技術です。金銀鉱石はブレーキクラッシャー等の破砕機で砕かれ手選鉱された後、コニカルミル等の複数段階の磨鉱機で泥状になるまですりつぶされ、加水されスラリーと呼ばれる懸濁液になります。このスラリーにシアン化ナトリウムやシアン化カリウムを0.1~0.3%含んだ水溶液を加え、更にコンプレッサーで酸素を供給して2昼夜にわたりアジテーターと呼ばれる機械で攪拌し、金を水溶性の [Au(CN)2]−に変化させます。撹拌を終えたスラリーを濾過して得られた溶液を貴液と呼び、この貴液から今度は真空装置で酸素を除き、シアン酸イオンとの化学親和性の強い亜鉛粉末を加えて金銀を析出・沈殿させ、沈殿物中の亜鉛粉末を硫酸で溶解除去し、これを更に濾過して残った物質(金銀殿物)を溶融製錬しドーレと呼ばれる青金(金銀の合金)の延べ棒に加工します。この延べ棒は同じ住友傘下の新居浜や瀬戸内海の四阪島に航送され、電解精錬により、純金・純銀に加工されました。
絵葉書にある「メリル」とは、貴液を脱気の上、亜鉛粉末を加えて金を沈殿させ、次いで沈殿物から亜鉛を除去し金を精製する基本的なプロセスを確立し、1910年(明治43年)に特許を取得した米国の製錬技術者Charles Washington Merrill (1869年〜1956年)のことで、アコーディオン状に見えるのは貴液を得るための縦型リーフフィルターと呼ばれる濾過装置です。

鴻之舞鉱山は1915年(大正4年)に発見され、共同組合方式で開発が始まりましたが、1917年(大正6年)に住友総本店(後の住友金属鉱山)が買収、以後資源枯渇等により1973年(昭和48年)に閉山になるまで、累計で金72.6トン、銀1,234トンを産出したとされ、金生産量は菱刈鉱山(鹿児島県、現在も稼行中)、佐渡鉱山(新潟県、1989年(平成元年)閉山)に次ぐ日本第3位の大規模金山でした。

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