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- 「深海の使者」(新潮文庫/吉村昭著)
「深海の使者」(新潮文庫/吉村昭著)
第二次大戦中、同盟関係にあった日本とドイツですが、その間は3万キロの距離と英米勢力に阻まれて交流は思うままになりませんでした。
そこで、日独は潜水艦と特設巡洋艦を行き来させて連絡を取り合っていたのですが(日本からの潜水艦はいわゆる「遣独潜水艦」)、この書は吉村昭氏の調査によりその周辺も含めて掘り下げた力作です。
技術交流だけでなく、インド独立の志士チャンドラ・ボース氏の来日にもこの遣独潜水艦が関わっています。
この書のほとんどが潜水艦による日独連絡の話しですが、実験機A26による試みについての記述や、暗号通信の代わりに鹿児島弁を使ってドイツの日本大使館と国際電話で会話する件とか、興味深い逸話が織り交ぜられていて全編にわたってとても面白い本です。
なおA26についての調査は中公文庫の「歴史の影絵」のなかにも個別に短編(もとは昭和55年の中央公論社「歴史と人物」記事のひとつ)として収録されています。
