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- カラフトアツモリソウ
カラフトアツモリソウ
ソビエト連邦 1991年
学名:Cypripedium calceolus
ラン科アツモリソウ属に属する多年草。
ユーラシア大陸の温帯から冷温帯にかけて広く分布しており、西はスペイン、フランス、スイス、ドイツ、オーストリアなどヨーロッパ中部から、東は中国北部、シベリア、モンゴル、日本では北海道・東北・中部地方の一部の山地にまで見られる。標高はおおよそ500〜2000mの間に位置する冷涼な落葉広葉樹林や針葉樹林の林縁、あるいは草原や渓流沿いの半日陰の環境に生育しており、腐植に富み、石灰岩質のややアルカリ性の土壌を好む。
高さは30〜60㎝程度に育ち、茎はまっすぐに立ち上がり、互生する葉を3〜5枚程度つける。葉は楕円形から披針形で、長さ10〜20㎝程度、表面にわずかな毛を持ち、しっかりとした質感がある。春から初夏にかけて開花し、茎の先に1〜2輪の大きな花を咲かせる。花は非常に印象的で、袋状に大きく膨らんだ唇弁は鮮やかな黄色で艶があり、その上部にある2枚の花弁と2枚の萼片は細長く、赤褐色ないし暗紫色をしていて、ねじれるように広がる。そのコントラストが非常に美しく、「スリッパ」あるいは「兜」に見立てられる花形状は古くから人気が高い。
繁殖は地下茎と種子の両方で行われるが、自然下では受粉を媒介する昆虫との関係が特異である。唇弁の袋に昆虫が入り込み、出口が限られているため、脱出の過程で花粉が体につき、別の個体への受粉を助けるという仕組みになっている。果実は長楕円形の蒴果で、微細な種子を多数含むが、発芽には特定の菌根菌との共生が必要であるため、野外での発芽率は極めて低い。
多年草であり、適切な環境下では10年以上にわたって生存・開花することができる。ただし、成長は非常にゆっくりで、種子から開花までに7〜10年を要するとも言われている。気候変動や森林伐採、人為的な採取などの影響で、個体数は減少しており、IUCNでは準絶滅危惧種(NT)に分類されている。ヨーロッパ諸国では多くの地域で法的に保護されており、日本でも環境省のレッドリストで絶滅危惧II類(VU)に指定されている。
