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角川書店 角川文庫 金色の魔術師
キャプションは後ほど #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 仮面城
昭和五十三年十二月三十日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和26年(1951年)から昭和27年(1952年)にかけて雑誌「小学五年生」に連載された「仮面城の秘密」を改題し、昭和27年にポプラ社から刊行された横溝正史の長編小説「仮面城」。 朝のニュース・ショーの尋ね人のコーナーで、大野健蔵という人が自分のことを探していると知った文彦少年は母親が止めるのも聞かず、持ち前の好奇心からその人物を訪ねて行った。そして、雑木林の奥にある一軒の洋館にたどり着くと、中から少女の悲鳴が上がった。文彦少年が夢中で飛び込むと、そこには頭に鮮血を滲ませた老人が床に倒れていた。その老人こそ大野健蔵その人であった。こうして文彦少年は恐ろしい事件に巻き込まれていったのだ... 横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。ふとしたことから恐ろしい事件に巻き込まれる少年少女たちと、それを助ける金田一耕助、彼らが立ち向かう今回の敵が、純粋な炭素からダイヤを造り出す“人造ダイヤ”の秘密を狙う怪盗・銀仮面です。ピンと一文字につばの張った、山の低い帽子の下に、いやらしい銀の仮面がいつもニヤニヤと笑っていて、身体をすっぽりと長いマントでくるんだコウモリのような出で立ちの怪人で、そんな銀仮面が怪汽船“宝石丸”という船舶を所有していたり、伊豆半島の西海岸、伊浜の山中に“仮面城”というアジトを構えていたりするケレン味溢れる世界観は、如何にもジュヴナイルらしい楽しさに満ち溢れていました。本書には表題作の他に「悪魔の画像」「ビロードの星」「怪盗どくろ指紋」の短編3編が併録されています。いずれも少年少女向け雑誌に掲載されたものですが、個人的には江戸川乱歩の「悪魔の紋章」を彷彿させる“三重渦状紋”を持つ怪盗が登場する“由利先生もの”の「怪盗どくろ指紋」が興味深かったです。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。 画像は昭和53年(1978年)に角川書店より刊行された「角川文庫 仮面城」です。ニヤニヤと笑みを浮かべている仮面と、魔法使いのような老婆。怪盗・銀仮面と、その手下が化けた老婆を描いた表紙画ですね。背景に描かれた“仮面城”がまるでヨーロッパの古城のようで、この画だけ見るとお伽話と勘違いしそうです。 表面に「帰って来た金田一耕助」の惹句、裏面に東映映画『悪魔が来りて笛を吹く』の公開告知が入った宣伝帯付きです。 #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #金田一耕助 #由利麟太郎 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 黄金の指紋
昭和五十三年十二月二十五日 初版発行 昭和五十四年九月三十日 五版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和26年(1951年)から昭和27年(1952年)にかけて雑誌「少年少女譚海」に連載された「皇帝の燭台」を改題し、昭和28年(1953年)に偕成社から刊行された横溝正史の長編小説「黄金の指紋」。 ある嵐の夜、東京から岡山の伯父の家に遊びに来ていた邦雄少年は、難破船を知らせる半鐘の音で目を覚ました。燈台の灯が消えているのに気づいた邦雄少年は、仲の良い燈台守が心配で燈台へ向かうが、その途中、難破船の遭難者の青年に遭遇する。銃で撃たれて瀕死の青年は、邦雄少年が東京から来ていることを知ると「これを...金田一耕助という人に渡してくれ...」と黒い箱を彼に託す。箱の中にはくっきりと指紋が焼き付けられた、黄金の燭台があった。一人の薄倖の少女の命運を左右するその燭台を巡って、二組の悪党と名探偵・金田一耕助の三つ巴の戦いが始まる... 横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。一人の薄倖の少女の命運を左右する黄金の燭台を巡って、ジュヴナイルらしく悪役キャラクターと名探偵・金田一耕助が攻防を繰り広げる訳ですが、今回、金田一が相手にする悪役キャラクターはそれぞれ目的が異なる二組の悪党。一組は燈台守を殺害し、船を転覆させた鐘馗髭とその相棒の黒衣の女。そして、もう一組はご存知、横溝ジュヴナイルワールドを代表する悪役キャラクター、怪獣男爵とその忠実な手下の音丸。この二組が金田一ばかりでなく、互いに騙し騙され、また時には内部からの裏切りがあったりと、悪役側のドラマも描かれていて、そんな三つ巴の戦いには独特の面白さがありました。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。 画像は昭和54年(1979年)に角川書店より刊行された「角川文庫 黄金の指紋」です。宝石で出来たブドウの実があしらわれた黄金の燭台を狙う、シルクハットを被った仮面の怪人。ゴリラのような素顔を仮面で隠した、怪獣男爵を描いた表紙画ですね。一人の薄倖の少女の命運を左右する、燭台に焼き付けられた指紋が良いアクセントとなっています。 #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 夜光怪人
昭和五十三年十二月二十五日 初版発行 昭和五十四年二月二十八日 三版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和24年(1949年)から昭和25年(1950年)にかけて雑誌「少年少女譚海」に連載された横溝正史の長編小説「夜光怪人」。 つば広の帽子にダブダブのマントを着込み、帽子の下から能面のような表情の無い顔をのぞかせている怪盗・夜光怪人。その名の通り、全身から蛍火のような妖しい光を放つこの怪盗が、真珠王・小田切準造老人が所有する真珠の首飾り“人魚の涙”に続いて、古宮元伯爵家の家宝のダイヤの首飾りに狙いをつけた。古宮元伯爵の依頼で警備にあたる新日報社の花形記者・三津木俊助と“探偵小僧”の御子柴進。しかし、ダイヤの首飾りは奪われずに済んだものの、古宮元伯爵の令嬢・珠子が夜光怪人にさらわれてしまう。そして遂に、名探偵・金田一耕助が事件解決に乗り出す... 横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。今回の悪役キャラクターは、全身から蛍火のような妖しい光を放つ怪盗・夜光怪人。大富豪や元華族たちが所有する宝石類を狙うばかりか、考古学者・一柳博士が発見した海賊の大宝庫の秘密を得る為に数々の非道な行いをする大悪党ですが、これに対するのが我らが名探偵・金田一耕助、そして、新日報社の花形記者・三津木俊助と“探偵小僧”の御子柴進のトリオです。あの金田一耕助と、横溝ワールドもう一人の名探偵・由利麟太郎の相棒である三津木俊助の夢の共演ではありますが...、実はこの「夜光怪人」、元々探偵役が由利麟太郎だったものを、山村正夫が横溝正史の了解のもとに改変したバージョンなんですね。その為、金田一が例の吃音癖もなく、由利先生のようなスマートな口調で喋ったり、物語の終盤に登場する「獄門島」の鬼頭儀兵衛や清水巡査とは「獄門島」事件の後にもかかわらず初対面扱いという、何ともちぐはぐなものになってしまっているんですね。どうせ改変するならば、そこのところも気を使って欲しかったと今更ながら思います。本書には表題作の他に「謎の五十銭銀貨」「花びらの秘密」の短編2編が併録されています。どちらも少年少女向け雑誌に掲載されたもので、暗号もの仕立てのお話ですが、如何にもジュヴナイルらしいシンプルな謎解きになっているのが微笑ましいです。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。 画像は昭和54年(1979年)に角川書店より刊行された「角川文庫 夜光怪人」です。どこかの令嬢のような女性を捕えようとしている妖しい光を放つ怪人。つば広の帽子にダブダブのマントを着込み、帽子の下から能面のような表情の無い顔をのぞかせている、夜光怪人を描いた表紙画ですね。ジュヴナイルであることは遵守しつつ、そこはかとなく杉本表紙画らしい淫靡さが漂っているのが良いですね。 表面に「帰って来た金田一耕助」の惹句、裏面に東映映画『悪魔が来りて笛を吹く』の公開告知が入った宣伝帯付きです。 #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 怪獣男爵
昭和五十三年十二月二十五日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和23年(1948年)に偕成社から書き下ろしで刊行された横溝正史の長編小説「怪獣男爵」。 瀬戸内海の真ん中に浮かぶ離れ小島、男爵島。島の中ほどに古柳荘という西洋の古城のような奇妙な建物が建ち、得体の知れない怪物が棲むという噂があるこの島に、突然の嵐に遭った、2人の少年と1人の青年を乗せたヨットが漂着してきた。3人は古柳荘に雨宿りを求めるが、彼らは部屋に閉じ込められ、ゴリラのような怪物にヨットを奪われてしまう。その怪物とは3年前に死刑になったはずの古柳男爵の脳をゴリラと人間の合いの子に移植した、恐ろしい“怪獣男爵”であった。復活した“怪獣男爵”が東京中を恐怖のどん底に陥れる... 横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。昭和のジュヴナイルのミステリー作品に欠かせないものといえば、やっぱり怪盗や怪人といった悪役キャラクターだと思います。中でも江戸川乱歩のジュヴナイル作品に登場する大怪盗“怪人二十面相”はあまりにも有名ですが、横溝正史のジュヴナイル作品に登場する悪役キャラクターで代表的なのが“怪獣男爵”こと古柳冬彦男爵です。元々は世界で五本の指に数えられるほどの優秀な脳科学者でありながら、悪事に手を染め、死刑となった古柳男爵。しかし、世を恨む彼は、ゴリラと人間の合いの子に自らの脳を移植させて“怪獣男爵”として復活します。本格派を好んでいた小中学生の頃はそんな如何にも子供騙しじみた設定に今一つノレませんでしたが、今読み返すとまるで特撮ヒーローものの悪役みたいな趣がある“怪獣男爵”に、また違った感懐を抱くようになりました。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。 画像は昭和53年(1978年)に角川書店より刊行された「角川文庫 怪獣男爵」です。雷鳴が轟き、荒れ狂う海に浮かぶ古城のような建物が建つ孤島と、それを見つめるゴリラのような怪物の眼。古柳荘がある男爵島と、“怪獣王”“ゴリラ男爵”とも呼ばれている“怪獣男爵”こと古柳男爵を描いた表紙画ですね。“怪獣男爵”の瞳に映る稲妻など、細部まで描き込んだ筆致が素晴らしいです。 表面に「帰って来た金田一耕助」の惹句、裏面に東映映画『悪魔が来りて笛を吹く』の公開告知が入った宣伝帯付きです。 #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 迷宮の扉
昭和五十三年十二月二十五日 初版発行 昭和五十四年十二月三十日 五版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和33年(1958年)に雑誌「高校進学」に連載された横溝正史の長編小説「迷宮の扉」。 三浦半島の先端、城ヶ島の燈台からほど遠からぬところに“竜神館”という奇妙な館が建っていた。そして、東京湾をはさんで反対側の房総半島の先端、洲崎の燈台付近には“海神館”という奇妙な館が建っていた。瓜二つの構造を持つこの二つの館にはそれぞれ東海林日奈児、月奈児という少年の当主がいるが、二人は元々シャム双生児だった。二人は父親である東海林竜太郎の莫大な遺産を巡って、周囲の人間たちを巻き込みながら対立していた。やがて起こる奇怪な連続殺人事件に名探偵・金田一耕助が挑む。 横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。ジュヴナイルというと怪盗や怪人が跋扈する、江戸川乱歩の“怪人二十面相シリーズ”的なものを思い浮かべますが、本作で描かれているのは、財を成した父親の莫大な遺産を巡る元シャム双生児と、その周囲の人間たちの軋轢から起きる連続殺人事件。まるで家族間に諍いを起こすのが目的としか思えない遺言状なども出てきて、それはもう“ジュヴナイル版犬神家の一族”とでも呼びたくなるような雰囲気の作品です。ただ、今読み返すと終盤の謎解き部分の雑さと超展開が正直、う~んという感じですが、小学生の頃に夢中で読んだ記憶もあって、個人的には思い出深い一編です。本書には表題作の他に「片耳の男」「動かぬ時計」の短編2編が併録されています。こちらも少年少女向け雑誌に掲載されたものですが、「動かぬ時計」の切なさが泣けました。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。 画像は昭和54年(1979年)に角川書店より刊行された「角川文庫 迷宮の扉」です。胴体は一つしかないのに、頭が二つ、手が四本、足も四本持っている怪物の像。まさに「迷宮の扉」の“竜神館”(あるいは“海神館”)の正面の壁に彫りつけられた像を描いた表紙画ですね。その像に向かって伸びているシャム双生児と思しき影と、それらを見つめている二つの眼が何とも意味深です。横溝ワールドのおどろおどろしさは残しつつ、ジュヴナイルらしい雰囲気で仕上げたこのシリーズは買いやすかったので、横溝好きの小中学生にはありがたかったです。 #横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 死仮面
昭和五十九年七月十日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和24年(1949年)に雑誌「物語」に連載された横溝正史の長編小説「死仮面」。 昭和23年秋、「八つ墓村」事件を解決した名探偵・金田一耕助は、挨拶に立ち寄った岡山県警で磯川警部から不気味なデス・マスクにまつわる話を聞かされる。それは東京で人を殺し、岡山に逃亡してきた山口アケミという女が腐爛死体で発見され、その現場にはデス・マスクが残されていたという事件だった。帰京した金田一は女の異父姉・上野里枝の訪問を受け、女の本名が山内君子で複雑な家庭環境で育ったことを知る。事件に強い興味をそそられた金田一は調査に乗り出すが、君子の一番上の異父姉・川島夏代が校長を務める学園で次々と奇怪な事件が起こる... 「八つ墓村」と同時期に雑誌連載されながらも、その後長らく陽の目を見ることが無かった“幻の作品”ですね。横溝正史の逝去直後に角川ノベルスから新書版が刊行された際は“幻の作品”ということが大きく謳われ、書店でも目立つ位置に置かれていた記憶があります。雑誌連載後、一度も書籍化されなかったのは横溝正史自身がこの物語の陰惨さを嫌っていた為ともいわれていますが、なるほど、確かに家族間の陰鬱な確執や虐待、ネクロフィリアなどの描写が強すぎるきらいはあるものの、女子学園を舞台にした構成は横溝作品としては斬新で、個人的にはかなり楽しく読めました。金田一に協力する女学生・白井澄子のキャラクターが実に良いと思います。本書には表題作の他に「上海氏の収集品」が併録されています。こちらは横溝正史逝去前年に雑誌「野性時代」に分載された作品で、逝去時はこれが絶筆とされましたが、実際には昭和40年頃に書かれた未発表作品でした。前述のように昭和57年(1982年)に角川ノベルスから新書版が刊行されたのち、角川文庫には昭和59年(1984年)に収録されました。 画像は昭和59年(1984年)に角川書店より刊行された「角川文庫 死仮面」です。紅蓮の炎の中に浮かぶ妖しいデス・マスク。まさに「死仮面」事件の山内君子のデス・マスクを描いた表紙画ですね。やや薄目を開け、口も半開き気味になっているところが妙にリアルで、悍ましいです。ちなみにこの「死仮面」、角川ノベルス版・角川文庫版共に途中の欠落部分を評論家の中島河太郎氏が補筆したものであり、のちに発見された欠落部分を収めたオリジナル版は、平成に入ってから春陽文庫から刊行されました。 #横溝正史 #杉本一文 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 空蟬処女
昭和五十八年十二月十日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和21年(1946年)に雑誌「紺青」に掲載予定も、未発表のまま30年以上も埋もれていた横溝正史の短編小説「空蟬処女」。 終戦直後の中秋の名月の夜、ようやく人間らしい感情を取り戻していた「私」は月下の散歩中に不思議な歌声を聴いた。それは「山のあなたの空遠く 幸い住むと人のいう...」というカール・ブッセの詩を歌う、うら若い娘の声だった。虚ろな瞳のその美しい娘は珠生という名で、聞けば神戸で大空襲に遭い、記憶を失っているのだという。瑞々しい処女のように見えながら、時折発作を起こしては「坊や...、坊や...」と泣く、この娘の素性とは一体...? 終戦直後の岡山を舞台に、戦争によって数奇な運命を辿った美しい娘の姿を描いた、横溝正史の異色作ですね。物語冒頭の、横溝正史自身らしい狂言廻しの「私」が美しい娘・珠生と出会う、耽美で幻想的な情景の描写が素晴らしく、そんな作風からは“文芸作品”の香りが漂ってきますが、空襲で記憶を失った娘の謎めいた素性を解き明かしていくのが物語の主体ともなっていて、そういう意味では“広義のミステリー”ともいえる作品だと思います。本書には表題作の他に「玩具店の殺人」「菊花大会事件」「三行広告事件」「頸飾り綺譚」「劉夫人の腕環」「路傍の人」「帰れるお類」「いたずらな恋」の短編8編が併録されています。大正末期から戦前・戦中・終戦直後に書かれた短編で、これまで漏れていたものを集めた“落ち穂拾い”的な一冊ですが、個人的には“由利先生もの”ながら戦時色が色濃く出ている「三行広告事件」が興味深かったです。角川文庫には昭和58年(1983年)に収録されました。 画像は昭和58年(1983年)に角川書店より刊行された「角川文庫 空蟬処女」です。月の光で銀色に輝いて見えるワンピースを着た美しい娘。まさに中秋の名月の夜に「私」が出会った“空蟬処女”の珠生を描いた表紙画ですね。耽美で幻想的な「空蟬処女」に相応しい画柄だと思います。 裏面に角川映画『里見八犬伝』の公開告知が入った宣伝帯付きです。 #横溝正史 #杉本一文 #由利麟太郎 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 血蝙蝠
昭和五十六年八月三十一日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和14年(1939年)に雑誌「現代」に掲載された横溝正史の短編小説「血蝙蝠」。 “幽霊屋敷”と噂される鎌倉・扇ヶ谷にある一軒の空き別荘。蝙蝠が多く棲みついていることから、この空き別荘を“蝙蝠屋敷”と呼ぶ若い男女のグループが退屈しのぎにここで肝試しをすることになった。その一番手に選ばれた甲野通代が“蝙蝠屋敷”の目的の部屋にたどり着くと、その砂壁には血で描かれた蝙蝠の絵が、そして、部屋の隅には女の惨殺死体があった。その事件以降、彼女は怪しい佝僂男に付きまとわれるようになり... “蝙蝠屋敷”で起こった殺人事件、そして、その第1発見者である若い女の殺人未遂事件に挑む名探偵・由利麟太郎と、その相棒の新聞記者・三津木俊助の活躍を描いた戦前の作品ですね。不気味な空き別荘の部屋の砂壁に血で描かれた蝙蝠の絵や、怪しい佝僂男を盛り込んだ、如何にも横溝らしいおどろおどろしさに満ちた物語ですが、せっかくのシチュエーションも僅か30ページでは消化不良の感が否めませんね。本書には表題作の他に「花火から出た話」「物言わぬ鸚鵡の話」「マスコット綺譚」「銀色の舞踏靴」「恋慕猿」「X夫人の肖像」「八百八十番目の護謨の木」「二千六百万年後」の短編8編が併録されています。いずれも戦前に執筆された作品ですが、個人的には横溝正史としては珍しい“科学小説”「二千六百万年後」が興味深かったです。角川文庫には昭和56年(1981年)に収録されました。 画像は昭和56年(1981年)に角川書店より刊行された「角川文庫 血蝙蝠」です。ボロボロに剝げかかった柿色の砂壁に、血で描かれた蝙蝠の絵。まさに“蝙蝠屋敷”の殺人現場となった部屋の砂壁に描かれていた血蝙蝠ですね。血蝙蝠の前を本物の蝙蝠が飛んでいて、その影が砂壁に映っているのが一層不気味さを増しています。 裏面に「悪霊島」「蔵の中」の映画化の告知が入った帯付きです。 #横溝正史 #杉本一文 #由利麟太郎 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 悪霊島(下) 第1期
昭和五十六年五月三十日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和53年(1978年)から昭和55年(1980年)にかけて雑誌「野性時代」に連載された横溝正史の長編小説「悪霊島」。 “黄金の矢”で串刺しにされて殺された刑部神社の宮司・刑部守衛に続き、行方不明になっていたその双子の娘の一人・片帆が、人も通わぬ穏亡谷で死体となって発見された。実は守衛よりも前に絞殺されていた彼女の死体は野性化した猛犬に喰いちぎられ、烏に突かれ、見るも無残な姿に変わり果てていた。事件の鍵は島の地下に広がる大洞窟内の“ある場所”にある、と睨んだ金田一は密かに越智竜平と共に大洞窟内を探索するが、そこで彼らが見たものとは一体...? 解決編となる下巻。一連の連続殺人事件の真犯人の正体と、過去に起こった3つの蒸発事件の謎が解き明かされますが、その真相は横溝作品史上でも類を見ないほど異様で、おぞましいものでした。真犯人たちが洞窟内で作り上げていた情景を想像すると何とも空恐ろしいものがありますが、個人的にはこの作品、“岡山もの”の総決算、集大成であると同時に、横溝が敬愛する江戸川乱歩の「孤島の鬼」からの影響も強く受けているように感じました。あと、印象に残ったのが磯川警部。「本陣殺人事件」以来の、金田一耕助の“岡山もの”での良き相棒であるこの名キャラクターを、もう一人の主役ともいう感じで物語に関わらせ、深く掘り下げているのがファンには堪らないですね。生前の横溝正史はこの「悪霊島」のあとに金田一耕助の“東京もの”での良き相棒である等々力警部ものを書き、そのあと事件が東京と岡山にまたがる等々力・磯川両警部ものを書きたいとの構想を持っていました。それが実現する前に逝去してしまったのが返す返すも残念でなりません。角川文庫には昭和56年(1981年)に収録されました。 画像は昭和56年(1981年)に角川書店より刊行された「角川文庫 角川文庫 悪霊島(下) 第1期」です。女の顔と、海に浮かぶ小さな島という構図は上巻と同じですが、女の顔は鬼女の如く変貌し、島の上空には暗雲が垂れ込め、雷鳴が轟き、穏やかだった波は一転し荒波になっています。まさに怒濤の展開となった下巻に相応しい画柄です。 #横溝正史 #杉本一文 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 悪霊島(上) 第1期
昭和五十六年五月三十日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和53年(1978年)から昭和55年(1980年)にかけて雑誌「野性時代」に連載された横溝正史の長編小説「悪霊島」。 瀬戸内海に浮かぶ周囲14キロばかりの小さな島、刑部島。昭和42年、その島に渡った青木修三という男が謎の失踪を遂げた。名探偵・金田一耕助は青木の上司にあたるアメリカ帰りの大富豪・越智竜平から行方探しを依頼されるも、旧知の磯川警部から青木が既に怪死していることを聞かされる。青木は今際の際に「あの島には悪霊がとりついている... 鵼の鳴く夜に気をつけろ...」との奇怪な言葉を残していた。越智竜平から更なる調査を依頼された金田一は刑部島に渡るが、そこで惨劇が起こる... 横溝正史の実質的な遺作となった作品ですね。古い因習に支配される閉鎖的なコミュニティ、そのコミュニティを二分する二つの勢力、島の地下に広がる大洞窟といったシチュエーションが「獄門島」や「八つ墓村」など黄金期の傑作群を彷彿とさせる作品で、そんな作風は一連の“岡山もの”の総決算、集大成ともいえそうです。この上巻では金田一耕助が久しぶりに磯川警部と再会、島にまつわる2つの事件(青木修三の怪死、浅井はる殺し)の概要を聞き、その後、島に渡り、刑部神社の神主・刑部守衛が“黄金の矢”で串刺しにされて殺されるまでが描かれています。「蜃気楼島の情熱」の志賀泰三のその後が語られたり、金田一が「獄門島」の鬼頭早苗に思いを馳せる描写があるのがファンには嬉しいところです。角川文庫には昭和56年(1981年)に収録されました。 画像は昭和56年(1981年)に角川書店より刊行された「角川文庫 悪霊島(上) 第1期」です。冷たい眼をした女の顔と、海に浮かぶ小さな島。まさに「悪霊島」事件の主要人物の一人である巴御寮人と、事件の舞台である刑部島を描いた表紙画ですね。数羽の鴎が飛び、波も穏やかな様子ですが、不穏な気配に満ち満ちています。「悪霊島」は文庫本化される前に映画化が発表されましたが、それもあってかこの巴御寮人の顔は映画『悪霊島』で同役を演じた岩下志麻に寄せているような気がします。 #横溝正史 #杉本一文 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 七つの仮面
昭和五十四年八月三十日 初版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和31年(1956年)に雑誌「講談俱楽部」に掲載された横溝正史の短編小説「七つの仮面」。 ミッション・スクールに通う「あたし」こと美沙は美しく気品に充ちていて、他人から「聖女」と呼ばれていた。しかし、醜い上級生・山内りん子との同性愛の関係が「あたし」の人生の歯車を狂わせる。卒業後、りん子との関係を断ち、銀座の高級喫茶で働くようになった「あたし」。「あたし」はたちまち男たちを虜にするが、すぐにりん子に見つかり、執拗に付きまとわれるようになる。そんな中、「あたし」は中年の彫刻家・江口と爛れた関係を結び、他にも若い男2人を手玉に取るような女になるが、それがやがて恐ろしい事件へと発展する... かつては「聖女」と呼ばれながらも、今では娼婦へと身を堕としてしまった女の回想という形式で物語が進む、横溝正史の異色作ですね。元々は昭和23年(1948年)に雑誌掲載された「聖女の首」というノンシリーズの短編が原形となっているのですが、これを“金田一モノ”として書き改められたのが本作です。タイトルの「七つの仮面」とは、彫刻家・江口が「あたし」こと美沙をモデルに制作した胸像“聖女の首”と、密かに制作していた6つの胸像のことを指していて、聖女の仮面の下に潜む美沙の本質を偶像化した、この6つの胸像が事件の引き金となります。6つの胸像にはそれぞれ「接吻する聖女」「抱擁する聖女」「法悦する聖女」「悪企みする聖女」「血ぬられた聖女」のタイトルがついているのですが、最後の一つ「縊れたる聖女」が明かされるラストが実に衝撃的です。小品ではありますが、何かどす黒いものがあとに残る、独特の読後感が堪りません。 本書には表題作の他に「猫館」「雌蛭」「日時計の中の女」「猟奇の始末書」「蝙蝠男」「薔薇の別荘」の短編6編が併録されています。いずれも昭和30年代に執筆された“金田一モノ”の作品ですが、個人的には数少ない金田一耕助の変装姿(しかもアロハシャツにハンチングを被って!)が描かれている「雌蛭」が面白かったです。角川文庫には昭和54年(1979年)に収録されました。 画像は昭和54年(1979年)に角川書店より刊行された「角川文庫 七つの仮面」です。美しい女の顔と6つの不気味な顔。彫刻家・江口が「あたし」こと美沙をモデルに制作した胸像“聖女の首”と、密かに制作していた6つの胸像をモチーフにした表紙画ですね。一つ足りないぞ、と思いきや、“聖女の首”の右目辺り、黒枠のところに一部分だけしか描かれていない仮面がちゃんとあります。何とも意味深です。 #横溝正史 #杉本一文 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 金田一耕助の冒険2
昭和五十四年六月十日 初版発行 昭和五十四年九月十日 三版発行 発行所 株式会社角川書店 画像は昭和54年(1979年)に角川書店より刊行された「角川文庫 金田一耕助の冒険2」です。こちらは昭和54年(1979年)、角川映画『金田一耕助の冒険』公開に際し、2冊に分冊された改版バージョンで、この「2」には「夢の中の女」「泥の中の女」「柩の中の女」「鞄の中の女」「赤の中の女」の5編が収められています。装画を手掛けているのは、映画『金田一耕助の冒険』のアニメーションパートを担当した和田誠氏。表紙には映画で古谷一行が演じた金田一耕助が、裏表紙には田中邦衛が演じた等々力警部が味のあるタッチで描かれています。 横溝ファンの間でも大林ファンの間でも評価が分かれる映画『金田一耕助の冒険』は、確かに横溝ブームの末期に咲いた徒花といった感じの作品ですが、今観直すと音楽は良いし、大林監督の映画愛には改めて感服させられるし、非常に見どころの多い作品だと思います。 #横溝正史 #和田誠 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 金田一耕助の冒険1
昭和五十四年六月十日 初版発行 昭和五十六年八月三十日 八版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和32年(1957年)から昭和33年(1958年)にかけて雑誌「週刊東京」に断続的にされた横溝正史の連作短編小説「~の中の女」シリーズ。 のちに長編化された作品が3編あったり(「壷の中の女」→「壺中美人」、「渦の中の女」→「白と黒」、「扉の中の女」→「扉の影の女」)、異色の金田一映画として知られる大林宣彦監督の『金田一耕助の冒険』の原作である「瞳の中の女」があったりと横溝ファンにはお馴染みの短編小説シリーズですが、そんな「~の中の女」シリーズから前述の長編化された3作品を除いた10作(「霧の中の女」「洞の中の女」「鏡の中の女」「傘の中の女」「鞄の中の女」「泥の中の女」「柩の中の女」「瞳の中の女」「檻の中の女」「赤の中の女」)に、昭和31年(1956年)に雑誌「読切小説集」に掲載された「黒衣の女」を改題した「夢の中の女」を加えた、全11話から成る短編集が「金田一耕助の冒険」です。昭和50年(1975年)に春陽堂書店の「横溝正史長編全集20 金田一耕助の冒険」が先行する形で刊行され(但し、この時は「赤の中の女」は収められなかった)、角川文庫には昭和51年(1976年)に収録されました。 画像は昭和56年(1981年)に角川書店より刊行された「角川文庫 金田一耕助の冒険1」です。こちらは昭和54年(1979年)、前述の角川映画『金田一耕助の冒険』公開に際し、2冊に分冊された改版バージョンで、この「1」には「霧の中の女」「洞の中の女」「鏡の中の女」「傘の中の女」「瞳の中の女」「檻の中の女」の6編が収められています。装画を手掛けているのは、映画『金田一耕助の冒険』のアニメーションパートを担当した和田誠氏。表紙には映画で古谷一行が演じた金田一耕助が、裏表紙には田中邦衛が演じた等々力警部が味のあるタッチで描かれています。 #横溝正史 #和田誠 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #小説 #装画
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角川書店 角川文庫 真説金田一耕助
昭和五十四年一月五日 初版発行 昭和五十六年八月三十日 五版発行 発行所 株式会社角川書店 昭和51年(1976年)から昭和52年(1977年)にかけて「毎日新聞」日曜版に連載された横溝正史のエッセイを一冊にまとめた「真説金田一耕助」。 自身の小説が原作の映画が次々と大ヒットし、テレビでは自身の名を冠したドラマシリーズの放映が始まるなど、昭和51年~昭和52年はまさに“横溝正史ブーム”のピークでしたが、そんなブームの熱気に戸惑いながらも探偵小説への思いや飽くなき情熱を軽妙な語り口で綴った好エッセイ集です。昭和52年に毎日新聞社から単行本が刊行されたのち、角川文庫には昭和54年(1979年)に収録されました。 画像は昭和56年(1981年)に角川書店より刊行された「角川文庫 真説金田一耕助」です。角川文庫の横溝作品は「八つ墓村」の初版を除き、一貫して杉本一文氏が装画を手掛けていきましたが、この「真説金田一耕助」は毎日新聞社版から引き続き和田誠氏が装画を手掛けています。 #横溝正史 #和田誠 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #エッセイ #装画
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