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カンパニー1 デレク・ベイリー、エヴァン・パーカー、トリスタン・ホンジンガー 国内盤初回帯付LP
フリー・アンド・プログレッシヴ・ミュージックとして1978-9年にビクター音楽産業から発売された一枚です。このシリーズでは他にベイリーのソロ、スティーブ・レイシー、アンソニー・ブラクストン、ロスコー・ミッチェル なども出ていたようですが、販売実数はいったいどのくらいだったのでしょうか?豊かな時代でなければ実験的・前衛的な表現は、メジャーからはなかなか「発売・発表」の機会を与えられないものですが。ベイリーのギターにパーカーのサックス、ホンジンガーのチェロ、アルテナのベースという布陣で、あくまで個人的な印象に過ぎませんが、これが一般的なフリー・ジャズとは聴こえないのです。いや、厳密にいうと、フリー・ジャズとも呼べるのでしょうが、ちょっと印象が異なる。フリー・ミュージックというのでしょうか、いや、ミュージックと呼ばなくてもいいのかもしれない笑。楽器を発音しつづけあう駆け引きの記録。例によって、この種のレコードにつきものの、清水俊彦、間章両氏によるスクエアかつシリアスを極めた6ページに及ぶライナーノート、ベイリーの組織論と運動論云々と、いつも通りの観念論でレコードを側面から支えているのでした。面白い時代だったといえましょう。
イムプロヴィゼイション LP, Album ビクター揖斐是方
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ジム・ゴードン参加の『JOYRIDE/FRIEND SOUND』 1969年
あの、デレク・アンド・ザ・ドミノスのドラマーであり、長いおつとめで有名なジム・ゴードンがセッションに参加している奇盤です。他の参加メンバーはベーシストのクリス・エスリッジだったり、ポール・リヴィア・アンド・ザ・レイダースのメンバーだったりするのですが、パーマネント・バンドとしての唯一のアルバムではなく、企画もののセッション・アルバムといったところでしょう。しかし、ありがちな、フリーク・トーンやノイズの垂れ流し的なところはなく、かつ、レイドバック気味の単なるリラックスしたセッション・アルバムとも言えない内容で、各曲それぞれが非常にサイケデリックで一定のテンションを保った、なかなか聴かせるものがあるのです。時流に乗った、安易に製作された企画物サイケも横行していた当時、これは拾い物ではないでしょうか。サイケデリック・ロックの隠れた好盤として記憶されるべき一枚だと思います。
サイケデリックロック LP, Album RCA揖斐是方
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三島由紀夫への弔魂歌『憂国』伊藤久男・歌 児玉誉士夫・作詞 古賀政男・作曲
「ニッポンはこれでいいのかーっ!」という命掛けの絶叫に、国民は「いいですよ別に」と笑顔で答えたに等しい、あのお馴染みの事件から半世紀余、しかし三島由紀夫の問いかけは今日いよいよ重く響き渡ります。このレコードは事件から一年後、1971年11月に発売された三島と森田への弔いの歌。歌うは「イヨマンテの夜」の、あの伊藤久男です。作曲が古賀政男ですから、これもれっきとした古賀メロディーといえるでしょう。しかしこの内容ですから、あまり表立ったところでは顧みられていないのかもしれませんが、その辺の事情はどうなんでしょうかね。「筆に尽くせぬ憂国を 剣に替えて叫びたり」と作詞したのは、自称CIAエージェントにして任侠右翼の巨魁、もちろん代表作は「ロッキード事件」の、あの児玉誉士夫。ただ、「剣に替えて」じゃなくて「刃に替えて」にしたほうがよかったのではないでしょうか。ジャケットには7ページにわたって、B面の曲ともどもこの曲の舞のための振り付け写真が。三島由紀夫事件に関して、こうした形でのシンパシーを表現した作品は、他にあまりないのではと思います。その意味では極めて貴重な楽曲といえるでしょう。#三島由紀夫
ディープ歌謡 7" Single コロムビア揖斐是方
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暗い夜 b/w テスト・パターン 古谷充とザ・フレッシュメン
クール・ジャズという言葉がありますが、本当に「クール」な日本人によるジャズとはこういう曲を指すのではないかと思います。普段はジャズ・ボーカルものなど全く聴かないのですが、この曲だけは別格。何度聴いても、昭和の大人たちによる、大人のための音楽であると痛感します。確か小谷氏が20代中ごろの録音のはずなのですが、そのスモーキーな歌声のすばらしさ。言うまでもなく関西ジャズ・シーンの重鎮だった小谷氏、一昨年の逝去が惜しまれます。B面の「テスト・パターン」の歌詞、「夕暮れ前のテレビに映る テスト・パターンのその顔」この曲のリリース当時はまだテレビ放送の黎明期で、テレビの放送開始は夕方からだったはずなのでこういう歌詞。これは誤った解釈だろうか。ちょっと古すぎてそこは定かではありません笑。いずれにしても、日本のジャズ史に残る極めてモダンかつユニークなキラー・チューンだといえるでしょう。
ジャズ 7" Single テイチク揖斐是方
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KAK/KAK アメリカン・サイケデリック・ロックの名作 1969年
一曲目はカンの「コネクション」を思い出さずにいられない、あちらは何年でしたか、どちらが早いのでしょうか「アンリミテッド・エディション」に入っているムーニーの。二曲目のイントロはクレヨラの「ハリケーン・ファイター・プレーン」を想起させるし、B面一曲目の雰囲気はモビー・グレイプだし、こう書くとあたかもこのバンドはオリジナリティー、絶対性に欠けるような印象を持たれるかもしれません。しかし、本質はその対極にあり、サイケデリック・ロックとして極めて優れた内容と音楽性を持つ名盤だと思います。クイックシルバーメッセンジャーサービスのファンなら直ちに納得していただけるのではないか、どこまでも澄み切った青空の中を縦横に駆け巡りながら上昇し大気圏外にまで突き抜けていくような、透徹したギターの音色、このクリアネスこそカクの身上。これが唯一のアルバムで終わったことが残念な非常にユニークかつ貴重なバンドでした。空中に舞うタンバリンも印象的なアートワークも相俟って、サイケデリック・ロック史に今も鮮烈な存在感を示す一枚でしょう。カントリー調のA面と、キャッチーなリフ、弾きまくりのギターが圧倒的なB面がむしろ逆にするべきだったと確信する米プロモ・シングルもありました。
サイケデリックロック LP, Album エピック揖斐是方
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レコードで占う。ルネ・ヴァン・ダールの星占い/愛の予感 スーパー・レコード・ゲーム
盤のエッジ、任意に針を降ろした部分により毎回違った占いの結果が得られるスーパー・レコード・ゲームです。70年代後半あたりの発売で、「競馬」のものも出ていました。林家三平の娘もたしか針を降ろした箇所によって別アレンジの別バージョンが聞こえてくるレコードを出したと記憶しています。このアルバムから流れてくるのは、ハープやピアノの、あるいは「太陽がいっぱい」的なBGMを背景にヴァン・ダールによるノストラダムス的な抽象的な詩による占いが、モノラルで二分間つづきます。聴き終えたあとに再び再生すると、今度は別の結果が。 33 1/3回転のレコードですが驚くほど速く針は進みます。片面で少なくとも10種類の異なる音源が確認できました。当然、特殊なカッティングより製作された盤でしょうが、CDではありえないアナログな面白さがあります。これならば、内周にある曲の宿命である音質の劣化はなく、10曲のモノラルのナンバーが音質上は同じ条件で収録することができます。わざわざそんな盤を創ったアーティストはいないか笑。
占い LP, Album CBSソニー揖斐是方
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逆進行レコード ビージーズ 「リヴィング・アイズ」プロモーション用非売品
通算16枚目くらいの81年作品「リヴィング・アイズ」の、日本独自につくられたと思しきプロモーション盤です。「オデッサ」までのファンとしては、この時代の音楽につらいものがあるのは否めません。しかしレコード針を本来ならばラン・アウト部分、つまり盤の内側に置いて再生する逆進行レコードとなると、物好きとしては話が変わってきます。確かに、内側から一曲目、ラストの三曲目が終わると針は盤のエッジに。かろうじてふみとどまりますが、盤・ターンテーブルから脱落しそうな気がします。針は片減りがなく、マスターテープを逆転させてカッティングしてあるために、音の波形に歪が生じないなどと書いてありますが、そんなもんなんでしょうかね。#beegees
ポップス LP, Album RSO揖斐是方
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ハリー・ニルソン フランス盤独自ジャケットによる初期ベスト NILSSON
レコード・ジャケットそのものが持つ「色気」に関してなのですが、1960年代に製作されたフランス盤のカバー・アートがもつセンス、華というものにお気づきの方はいらっしゃませんでしょうか?かつては日本でも紹介されていたヴォーグ・レーベルなどは最たるもので、同じアルバムを各国盤で何十枚も集めたりしていますと、フランス盤のみが非常に華やかな雰囲気をもっていることに気づきます。ちょっとしたレーベルロゴのもつ配色、デザインなどに、独特の美意識が感じられるのです。このニルソンの珍しい写真を配したコンピレイションも、フロント・ラミネートのフリップ・バック仕様、厳密にいえば1970年代初頭あたりの発売かと思われますが、やはり一瞬でジャケ買いの一枚でした。あまりに過小評価が過ぎるハリー・ニルソン、そこには大いに文句がありますけれども、このアルバムは最初の三枚からセレクトした12曲で、その選曲センスは完璧といっていいでしょう。夥しいベストLPが発売されているニルソンですが、初期に限定されたものとはいえ、これは間違いなくベスト中のベストといっていいアルバムだと思います。またしてもビクター系でした。
ポップス LP, Album RCA ビクター揖斐是方
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ゲーリー・バートン/サイケデリック・ワールド Gary Burton Larry Coryel
ビクター盤が続きますが、これも中古レコード店で何気なく手に取ってから気になり、まずはCDで入手し、内容が 当たりだっために改めてエルピーでもという手順を踏んだ一枚です。ヴィブラフォン奏者ならばロバート・ウッドとミルト・ジャクソンくらいしか知らなかったのですが、やはり落ち着いたところはゲイリー・バートン。このアルバムの前後数枚は特に興味深いものがあります。まだクロスオーバーなんていう言葉すらなかった60年代後半の、ロックとジャズの接近・融合が試みられていたあの時代の空気が横溢する音楽です。原題といい、カバー・デザインといい、サイケ時代へのジャズ側からの返答といっていいでしょう。あの時代、ロックのフィールドにいながら最もジャズに隣接する立ち位置にいたギタリストの一人がロビー・クリューガーとするならば、ここに参加しているラリー・コリエルなどはまさに、ジャズ側からロックに最も接近していたギタリストだったのではないでしょうか。きちんスピーカーに対峙して聴く必要のある、とてもイマジネイティブな音楽です。#psychedelc jazz
ジャズ LP, Album ビクター揖斐是方
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火遊びのブルース b/w 渚の歓喜/応蘭芳 ディープ歌謡
フォーリーブスのマモル少年は、笛を二回吹いてわざわざマグマ大使の女房を呼び出すことはなかったように記憶していますが、皆さんどうでしょうか? ガムか大使ばかりに用があったように思っているのですが。そうでもないですか。その女房「モル」が実は同じ60年代、見事なまでのアダルト歌謡を吹き込んでいたとは。もちろん当時は知る由もなかったのです。歌詞にはその痛烈なフェロモン歌謡ぶりが炸裂しています。今となっては、ディープ歌謡のカテゴライズで落ち着くべきポジションを得た一枚でしょう。ただ、やはりこれは当時のビクター・レコードだから例外なくついていたのでしょうが、この手のレコードにもちゃんとベル・マークが。こういうレコードにもベルマーク。笑。
歌謡曲 7" Single ビクター揖斐是方
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椿説弓張月/三島由紀夫
また今年も今日が来たので、1969年11月に横尾忠則のジャケットで発表された三島由紀夫のセカンド・アンド・ラストアルバムを。三島自身が一人で声色を変えて何役もこなした自作の朗読パフォーマンスで、没後半世紀余、歴史的・文化的な価値は損なわれるどころか、ますます高まっていると思います。が、繰り返して聴く気が起きないのですな、どうも。後年、ジャケット改悪でシーデー・リイシューされたとて、それでも聴けない笑。当たり前だが、本物すぎて、どうしても馴染めないのです。ただ、兜をかぶっているのではなく、兜にかぶられている態の先生の写真と横尾アートだけが印象に残るばかりなのでした。かかる日になどて三島は英霊となりたまいし。そんなフレーズが浮かぶ憂国忌です。#三島由紀夫 #横尾忠則
歌舞伎 LP, Album CD コロムビア揖斐是方
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SEX PISTOLS 3CD BOX SET
初期のデモやスタジオ録音、ライブでのレアリティーズなどをまとめた三枚組ボックス・セットです。2002年のEU盤。ブックレットには写真や資料多数。内容については、いつもお馴染みのピストル節がこれでもかと流れてきます、当然ですが。ただ、このユニオンジャックのデザイン、イギリスに未来なんかあるかと言い、女王陛下をああいうふうに歌うパンク・バンドが、こうしたデザインのボックス。よく見ると、フロントにはBEST OF BRITISHと書かれています。アメリカのMC5あたりも同様で、反体制の権化のような悪辣なイメージのバンドも何故か堂々と星条旗を掲げるわけですな。この、国家反逆罪バンド笑たちもまた、自国旗をアイコンのように纏うならわし、ここが日本と決定的に異なるセンスですね。彼等もまた、誇り高い英国人にほかならないと思い至る次第です。それが彼等一流のひねくれた皮肉の表現だとしても。 #sexpistols
パンク・ロック CD ヴァージン揖斐是方
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アイリー隆の「捨て身の恋」
おそらく66年頃の、デビュー盤と思われますが定かではありません。テイチクの新人歌手、出身地、出身校から判断すると、そして何よりも遮二無二付けられたと思しき芸名から察すると、北海道の先住民族の方かと思います。だとすれば、もっと頑張ってほしかった。他にはこまどり姉妹くらいしかいないのではないでしょうか。昔は人権に対する配慮など皆無といっていい状況でしたから、こうして安易に命名されたのではないかと。知らんけど。楽曲や歌唱そのものにはこれといって特筆すべきものはありません。そこがまた哀しい。#ディープ歌謡
歌謡曲 7" Single テイチク揖斐是方
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ロマが「ラヴユー東京」を歌う違和感 トニー・ガトリフ監督の音楽映画『ベンゴ』
ガトリフという映画監督は音楽を、ロマ(ジプシー)の俗謡などをモチーフにした作品作りには定評のある映像作家で、秀作は少なくありません。ただし、そちら方面にフォーカスし過ぎて、シーンごとの音楽表現の連なりから醸し出される詩情のほうに観客はひっぱられてゆく傾向があります。2000年の作品、この『ベンゴ』もフラメンコを描いて圧倒的画力を放つのですが、ストーリーとしてはいまひとつ…。そしてマリア・ラ・コネヤという女性がアカペラで突然歌いだすのが、ロス・プリモスの大ヒット「ラブユー東京」。このアサッテぶり、この面妖さ、痛烈なインパクトをもたらす究極の違和感。55秒の収録ながら、一体どうしたことかと思わずにはいられません。それにしてもどうしてロス・プリモスを‥‥。#映画音楽 #tonygatlif #黒沢明とロス・プリモス
映画音楽 音楽CD DVD 定価揖斐是方
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TEDDY ROBIN AND THE PLAYBOYS (1969)
日本以外のアジアでの60年代ビート・ガレージ・バンドといえば、シンガポールのクエスツだとか、マカオのミスティツクス、インドネシアのクース・プルスの前身、クース・バーソウデラなどが有名ですが、香港といえば圧倒的にこのバンドでしょう。65年にニッカーボッカーズの「ライズ」のカヴァーでデビューした彼らの、これは69年の五作目でありラスト・アルバムの二枚組。当時のサイケデリック・アートとして秀逸なジャケットではあるのですが、内容は割とストレートなガレージ・ビートです。アジアのこのあたりのバンドはおしなべてそういう傾向があり、痛烈なサイケデリアが音楽にも表現されているかと思いきや、実際はそうでもない。しかしこの「そうでもない」感じもまた当時ならではの味わいなのでした。#garage #freakbeat
ロック 2CD paper sleeve Diamond Universal揖斐是方
