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Agnostus pisiformis
全体が分離した脱皮殻の集積からできていて、フォーティーはこれを「化石になった豆スープ」と呼んでいる。 知らない人が見たらどういう生物かさっぱりわからないだろう。 それは昔の発見者も同じで、Agnostus とは「さっぱりわからないもの」という意味だ。 この小さい豆の一粒一粒が、Agnostus の頭か尻尾なのである。 Agnostus の仲間は世界中から産出するが、種類が多いわりには見た目の区別がつきにくい。 そこで私は模式種である本種の豆スープで全体を代表させることにした。
Alum Shales UCAM Trolmen, Västergötland, swedenktr
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Agraulos ceticephalus
三葉虫には名前と現物とが釣り合わないものがある。 本種などもその一例で、名前だけきけばどんな三葉虫かと膝を乗り出すが、現物を見ると少なからずがっかりする。 小さくてあまり特徴もないので、よほど手広く集めている人か、あるいはチェコ産を集中して集めている人でなければ手に入れようとは思わないだろう。 本種は自在頬を欠いた標本がほとんどだが、本来は小さいトゲつきの自在頬があるので、それのついている標本はけっこう貴重だ。 全長:15mm
Jince Fm. MCAM Czech Repblicktr
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Altiocculus harrisi
三葉虫にあまり興味のない人にとっては、本種はたぶんエルラシアが長く延びたようにしか見えないだろう。 私もまあ現物を見るまではそんなふうに思っていた。 しかし、じっさいに見ると、やっぱりこれが違うんですな、当り前ですけど。 たんにエルラシアが延びただけではない、サムシングがそこにはある。 そのサムシングが本種の魅力を形作っているわけです。 しかし、前にLabログにも書いたように、表面を覆っている保護剤(?)のギラギラが、そのサムシングの発現を妨げているようにみえた。 そこでアセトンで剥がしてみたわけです。 結果は、おそらく前よりよくなった、少なくとも私の好みには合うようになったと思う。 ビフォーアフターの画像を並べておくので、ご覧ください。 全長:41mm
Wheeler Fm. MCAM Drum Mountains, Millard Co., UT USAktr
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Angelina sedgwickii
本種の名前を正式に書けば、Angelina sedgwickii Salter in Murchison, 1859 となる。古生物学界の大立者4名(註)にがんじがらめにされたような名前で、そのことからもわかるように、古くから愛好され、研究されてきた古典的な種である。 本種の産出するウェールズは地層の形成が安定していなかったようで、一定方向に引き延ばされた標本をよく見かける。本標本も縦方向に延びているが、それがかえってアンゲリナらしい趣を添えている。原形は、最後にあげた図版(1859年のマーチソンの大著『シルリア』から抜いたもの)を参照してください(2番の図がそれ)。 本種はオレヌス科に属していて、いまのところこれが私の手持の唯一のオレヌス科だが、この科に属するものとしては、ほかにオレヌス・トルンカタ、パラボリナ・スピヌロサ、ペルトゥラ・スカラベオイデスなどがあって、私の関心の的になっている。いずれも英国で産するもので、大きさは1インチ程度、見た目もひどく地味で、こんなものに特別の関心を寄せているのは私くらいではないかと思う。 サイズ:55㎜ (註)スウェーデンのAngelin, 英国の Sedgwick, Salter, Murchison
Sedgwickii Biozone LORD Garth Hill, Minffordd, Wales, UKktr
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Archimedes sp.
その特徴的な名前と形によってすぐに見分けがつくので、化石愛好家からは親しまれている。 コケムシとはいうものの、このような形で海底に突っ立っていて、おまけに節のひとつひとつに花冠のようなレース状の群体をもっていたというから、あまりコケという感じはしない。 むしろある種のサンゴに近いように思う。 サンゴは花虫(かちゅう)とも呼ばれる。 コケムシは蘚虫(せんちゅう)。 片や花、片やコケで、美観にだいぶ差があるようだが、化石になってしまえばその差はかなり縮まる。 本体の長さ:40mm
Bangor Limestone Fm. MISS Franklin, AL, USAktr
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Asaphus expansus
Asaphus の模式種がこれだ。 いまではこれに亜種が三つ見つかっているらしい。 私の手に入れたのがそのうちのどれに当るのか、それはまだ調べてみない。 この標本は見るたびに色合や質感が違っているようで、石そのものが季節の影響を受けて変化するのか、それとも光の種類や当り方でそう見えるのか、たんに私の目が頼りないのか、よくわからない。 Asaphus の仲間はどれも同じように見えるが、細かく見ていけば際限なく差異が見出される。 私としてはロシアの Asaphus の標本はこれと A. kowalewskii だけにとどめて、他の細かい差異は図鑑で楽しもうと思っている。 サイズ:68㎜
Kunda Level LORD Voibokalo Quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
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Asaphus kowalewskii
FFストアによれば、けっこうな人気種らしい。 そういえば、SPPLにも本種だけは十分すぎるくらいの在庫がある。 まあ、それだけありきたりなので、とくに欲しいとも思わなかった。 ところが、ちょっとしたきっかけで手に入れてみると、なるほどこれが人気があるのも頷ける。 なんということはないけれども、いつまでも見ていられる。 飽きがこない。 見れば見るほどそのフォルムに引き込まれる。 この標本は本体が母岩の端に寄りすぎていて、標本箱の縁に当って目が折れる危険性があるので、紙粘土で母岩を延長した。 これだけやっておいて、ようやく安心して眺めることができるようになった。 ところで、日本人ならだれでもこれを見るとカネゴンを連想するわけだが、私はカネゴンの回を見逃していて記憶にないので、このたびアマプラで視聴してみた。 古いことは古いが、まったく古びていない。 傑作也。 全長:47mm
Asery level MORD Vilpovitsy quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
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Aulacopleura koninckii
古くから知られている古典的三葉虫でたいていの図鑑に載っている。 古典種だけあって正式名称は長く、Aulacopleura (Aulacopleura) koninckii koninckii (Barrande) という。 今回買ったこの標本は外殻がほぼ剥がれていて、いわゆる内型になっている。 それがちょっと残念な点だが、しかし目だけは脱落せずにくっついているので、これでもってよしとしよう。
unknown SIL Loděnice, Czech Republicktr
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Bumastus ioxus
ニューヨークのシルル紀代表として Dalmanites と双璧をなすもの。 なんの特徴もない三葉虫だが、この特徴のなさが本種の場合ある種の魅力になっている。 じっさいコレクターにも人気があるようで、状態のいいものは出るとすぐに売れてしまう。 ものによっては10㎝近くなるのもあるようだが、私はそんなに大きいのは要らない。 手のひらサイズが本種には相応しい。
Rochester Shale SIL Middleport, NY, USAktr
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Ceratonurus sp.
デボン紀オクラホマの産。 オクラホマという土地は、他のアメリカの産地とはちょっと趣を異にしていて、ここから出るものは、むしろモロッコやチェコのものに近い。 オクラホマ、モロッコ、チェコという、今日ではずいぶん離れた場所から似たような種類がいくつも出るのが私にはおもしろく思われるのだが、その理由はまだ調べてみない。 本種はいまだに種としての名がなく、いわば名無しの権兵衛状態なのだが、発見されてからもう二十年は確実に経っているし、その間にいくつもの個体が市場に現れて愛好家には知れ渡っているわけだから、もう改めて記載しなくてもいいんじゃないの、と思われている可能性はある。 母岩の裏側に1991という数字が彫られているが、これが1991年を指すのかどうかは不明。 サイズはトゲ込みで42㎜。
Haragan Fm. LDEV Clarita, OK, USAktr
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Ceraurus pleurexanthemus
オルドビス紀ニューヨーク産。 ウォルコットの砕石場で採れたものらしいが、同地の他の標本と比べると、どうも風合いが違う。 産地を偽っているわけではないと思うが、あまり目にしないタイプの標本だ。 本種については、ウォルコットが三葉虫の付属肢を調べるのに使った切片標本の話が有名だ。 エンロール状態のものをスライスして磨き上げた標本の画像はじつにファンタスティックで、サイケデリックですらある。 フォーティはその話を紹介した際に、ウォルコットが本種を C.p.と略記している理由として、種小名の pleurexanthemus が長すぎてややこしいことをほのめかしているが、このものものしい名前はおそらく「花弁状の肋」というほどの意味ではないかと思う。 本体サイズ:尾棘込みで45㎜
Rust Fm. UORD Gravesville, NY, USAktr
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Chotecops ferdinandi
ヤフオクで売りに出したものの、「レプリカではないか」といわれて返ってきたもの。 たしかに改めてよく見ると、真正の化石でない可能性が高い。 いや、高いどころか、確実にブンデンバッハのフンスリュック粘板岩ではない。 ではいったいこれは何だろう? 表側を見るかぎり、どうしてもレプリカとは思えないほど真に迫っている。 ところが裏側を見ると、あちこちに気泡とおぼしい孔があいている。 比重もフンスリュック粘板岩としてはかなり軽い。 モロッコ産のレプリカ(というかフェイク)はさんざん目にして自分でも判別がつくが、まさかブンデンバッハの贋物をつかまされるとは…… というわけで、自分の愚かしさの象徴として、しばらく机の上に置いておこう。
Hunsrück Shale LDEV Bundenbach, Germanyktr
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Cleoniceras cleon
わが記念すべき化石購入第一号がこれ。 いまでこそ珍しくもないハーフカットのアンモナイトだが、これをヤフオクで見つけたときは衝撃だった。 すごいものが手に入ったという感動でしばらくは興奮が収まらなかった。 それ以降、各種のアンモナイトを漁る日々がつづいたが、やがて三葉虫熱に取りつかれてしまい、徐々にアンモナイト熱は冷めていった。 いまでは集めたアンモナイトはおおかた手放して、残ったのは本種を含む3個だけだ。 なぜその3個が残ったか? これは私には意味があるけれども、他人にはなんの興味も湧かないだろうから省略する。 いずれにしても、アンモナイト対三葉虫の戦いは、後者の圧倒的勝利によって終りを告げた。
Albian Fm. K Madagascarktr
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Cnemidopyge nuda
ラフィオフォルスの仲間をひとつも持っていないので、たまたま見かけた本種を購入。 もちろんそれには値段が安いとか、英国産であるとか、そういう理由もあった。 ラフィオフォルス類というのは、アサフスに分類されているけれども、底棲ではなく遊泳性で、そのフォルムも小型のエイのようだ。 三葉虫は「海の蝶」と呼ばれることがあるが、おそらくこの仲間がいちばん蝶に似ているように思う(註)。 遊泳性の三葉虫は、キクロピゲのように極端に目が大きいのもあれば、本種のように目がないものもある。 目がなくても、3本のトゲや触角を駆使して、たくみに敵をよけながら泳いでいたと思われる。 この標本は頭部前方のトゲだけ保存されているが、よく見ると(心の目で見ると?)左右の頬棘も保存されているような気がしないでもない。 全長:30mm(トゲ含まず) (註) 三葉虫が海の蝶と呼ばれるのは、本来的にはその尾板の形に由来すると思う。 中国の王冠虫の尾板等を参照のこと。
Hastsgraptus Tereticulus biozone LORD Pencerig Builth Wells, Powys, Walesktr
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Colpocoryphe rouaulti
カリメネ家の三兄弟である Neseuretus、Salterocoryphe、Colpocoryphe は、いずれも欧州や北アフリカで産出する一般種だが、私はこの三つはフランス産で揃えたいという願望がある。 なぜかを書き出すと長くなるのでやめておくが、今回の Colpocoryphe はフランスの Massif Armoricain というところで採れたもので、モロッコ産かと見まがうほど保存がよい。 サイズも37mmとまずまずの大きさだ。 なによりも顔つきが愛らしく、とても癒される。 Neseuretus は前にアップしたので、残るは Salterocoryphe だが、運よく見つけられるだろうか?
unknown ORD Massif Armoricain, Francektr
