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Vysocania iberica
なんとも知れない僻地の僻標本。 本種の画像を見て、その尾板の畝から、これはもしかしたらスクテルムの一種ではないか、と思って購入したもの。 ネットにはヴィソカニア・イベリカの資料も散見するけれども、どうも私の手に入れたものと同一とは思えず、いったいこの標本がヴィソカニアかどうかもいまのところ不明だ。 私の希望としては、ヴィソカニアではなくて、オルドビス紀に出た稀少なスクテルムの一種だったら嬉しいのだが、その可能性は低い。 本種について新たな知見があったら、また報告します。 全長:36mm
Ribeira do Casalinho Fm. UORD Mação, Portugalktr
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Stromatopora sp.
ストロマトポラは和名を層孔虫といい、さまざまな形の群体を形成する。 このゴトランド産のものは、ヘルメットを何層も重ねたような構造で、当地では catskull と呼ばれている由。 これほど見た目がつまらない化石も珍しいと思うが、私はどういうわけかこのつまらなさに惹かれるものがあって、ゴトランド産の各種サンゴ類がことごとく放出の憂き目に会うなかで、なんとか手元に残った数少ないもののひとつ。 これを眺めていると非常にリラックスできる。 この安心感は、これが形状的に胎内回帰の夢を孕んでいるからだろうか。 サイズは幅7㎝ほど。
unknown SIL Gotland, Swedenktr
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Spinocyrtia sp.
腕足類の類としての寿命はおそろしく長い。 なにしろカンブリア紀から現在まで生きているのだから、三葉虫などと比べてみてもはるかに長いわけだ。 しかしもちろんその間に滅びてしまった種類もある。 スピリファーもそのひとつで、三畳紀の中期に絶滅したとのこと。 かつては腕骨入標本もけっこう目にしたが、最近ではさっぱりだ。 今回買ったものは、写真では非常に魅力的に見えたが、現物はまあそれなりで、改めてプロのカメラマンの腕に敬服する。
Zagórze Fm. LDEV Bukowa Góra quarry, Holy Cross Mts, Polandktr
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Sphaerocoryphe robusta
うちにある標本では唯一の真の稀少種といえるのがこれだ。 サイズは14㎜と小さいが、これでも成体なのである。 私はどういうわけかこの手の頭ボールと呼ばれる三葉虫に惹かれるものを感じる。 しかし手に入れたのはこれだけで、ほかのにはなかなか手が回らない。 理由は簡単で、いずれも程度の差こそあれ稀少種であり、そのため値段がかなり張るのだ。 頭ボールときけば、断片であっても、部分であっても、やみくもに欲しくなる。 たぶん一種の病気だと思う。 本種においては、頭だけでなく、尾棘も魅力になっている。 頭ボールと二股になった尾棘とを兼ね備えている点で、本種は小さいながらも最強の三葉虫だ。 産地:ニューヨークのラスト・フォーメーション
Rust Fm. UORD Gravesville, NY, USAktr
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Scotoharpes spaskii
18㎜、オルドビス紀、ロシア産。 Harpes の仲間はいくつか買い求めたが、手元に残ったのはこれひとつだけ。 サイズのわりに目が大きいのは若い個体だからだろうか。 胸節はそれでも18あって、すでに成体と変らない(最多で20節)。 この標本はやや反り気味だが、そのために小さい尾板まで観察できるのはありがたい。 ハルペスの仲間は、部分化石なら世界のあちこちから産出するが、完全体が出るのはほぼモロッコとロシアに限られる。 そういう意味でも本種は貴重だ。
Aseri Level MORD Vilpovitsy Quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
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Remopleurides elongatus
ロシアのレモプレウリデスのうち、従来一般的だった R. nanus に代って、近年市場でよく見かけるようになったもの。以前は Remopleurides nanus elongatus といって、亜種扱いだったが、産地も地層も違うので、別種として立てられたらしい。 私とレモプレウリデスの仲間とのつきあいは、チェコのアンフィトリオンから始まって、オクラホマのロベルギア、そしてロシアの本種と続いてきたが、けっきょくのところこれだけが手許に残ることになった。あとはイギリスほか、いくつか産地はあるけれども、ちゃんとしたものを手に入れるのは至難なので、とりあえずは本標本で満足しようと思う。 さて本標本だが、じゃっかん左右に捩れはあるものの、ほぼ完全に延びきっていて、背中のトゲもわりに危なげなく保存されている。これが防御姿勢をとっていたりすると、トゲが飛び出した格好になって、非常に危なっかしい。好みにもよるけれども、見ていてはらはらするような標本はなるべく避けるようにしている。そういうものからは「癒し」は得られないと思うので。 保護剤(?)のせいでややアーティフィシャルな趣はあるけれども、前にアルティオクルスでやったような、アセトンで剥がすといったことはまったく考えていない。この繊細な三葉虫に対して、それは暴挙というものだろう。 さて写真をとって拡大して眺めてみると、どことなく「タイノエ」とか「ウオノエ」とか呼ばれる寄生虫に似ているような気がしてきた。とにかく、一般的な三葉虫とはかけ離れたフォルムであることだけは確かのようだ。 サイズ:トゲを含んで16㎜
Kukruze level UORD Alexeevka quarry, St.-Petersburg region, Russiaktr
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Redlichia chinensis
レドリキアは中国のほかオーストラリアでも産出するようだが、このシネンシスがもっとも一般的であるのはまず間違いない。 オレネルスと並んで、最古の三葉虫のひとつ。 この標本は、届いたときはおそろしく汚れていて、とりあえず水洗いから始めなければならなかった。 しかし、洗い浄めてみると、なかなか魅力的な標本だということがわかった。 いまでは北米のオレネルス、欧州のパラドキシデスと並んで、私のコレクションにおけるレドリキア目の三本柱のひとつとなっている。 本種の産地は不明だが、素人のあてずっぽうでいうと、湖南省の Balang Fm. から出たもののような気がする。 Balang Fm. は湖南と貴州の両方に露頭があるらしく、カンブリア紀前期の地層として知られている。 ちなみに本種の中国名は、「中華萊得利基蟲」という(旧漢字表記)。 中国語でどう発音するのか、聞いてみたい。 全長:50mm
Unknown LCAM Chinaktr
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Ptychoparia striata
かつてはプティコパリア目の頭目のような顔をしていた本種だが、いまでは未確定目に他のものといっしょに放り込まれて、もはや昔日の威光はなくなった。 とはいうものの、本種がチェコを代表する三葉虫のひとつであることに変りはない。 けっして稀少種というのではないが、りっぱな標本はやはりそれなりに貴重だ。 R・フォーティはその著「三葉虫の謎」のなかで、本種について「ミスター平均」という呼称を与えている。 三葉虫の基本的なシェイプからの「いかなる方向への誇張もいっさいない」というのだが、どうだろう。 私にはそれほどプリミティヴにはみえないし、むしろボヘミアらしい奇妙な偏向を感じてしまう。 偏向というのは、ボヘミア三葉虫がもっている、一種異様な地下世界的な風情だ。 私にはそれがなぜか鉱山のイメージと重なってくる。 そこに魅力を見出せるかどうかが、この地の三葉虫を鑑賞する際の決め手になるだろう。 全長:48mm
Jince Fm. MCAM Czech Repblicktr
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Pseudocybele nasuta
顔のかわいさという点では、全三葉虫のうちでも五指に入るだろう。 レドリキアやオレネルスの悪相(とあえていう)とはえらい違いだ。 しかしこんなかわいい顔をしながら、食性の面からみると捕食者すなわちプレデターだったという説がある。 顔で相手を油断させておいてガブッとやったのだろうか。 私は三葉虫にはあまり捕食などという野蛮な行為はしてほしくない。 なるべくならプランクトンあたりを餌にしていてほしい。 そうやって平和な三億年を過していたと思いたい(註)。 全長:18mm (註) 厳密には最大限に見積っても2.9億年ほどで、三億年には達していない
Ninemile shale LORD Eureka, NV, USAktr
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Pseudobasilicus lawrowi
全長45㎜の子供個体。 母岩とのマッチングはいいし、形も整っているので、小さくても気にならない。 考えてみれば、私のもっているロシア三葉虫は小さいものばかりだ。 理由は簡単で、そうでもなければとても手に入れられないほど、ロシア三葉虫は高価なのである。 Pseudobasilicus は昔は Ptychopyge の仲間に入れられていて、たしかに見た目もよく似ているのだが、どういうわけかいまは Pseudoasaphus の仲間に入っているようだ。 また Pseudobasilicus にも二種類あって、P. lawrowi と P. planus とを比較すると、前者のほうが頬棘が太くて長い、額の小さい角のような突起が明瞭、頭蓋前方が細長い、尾板の畝がカーブしている、などの違いがあるとのこと(SPPLの図鑑による)。 あと余談だが、本種の名前の元になった Basilicus というのは、イギリスで産出する三葉虫で、ソルターの画期的な論文「英国の三葉虫」でも大きく扱われている。 かなり大型化する種のようで、tyrannus の種小名が示すとおり、威風あたりを払うといった風情だ。 (追記) ソルターの本から Basilicus tyrannus の画像を追加しました。
Aseri Horizon MORD Volkhov river, St. Petersburg region, Russiaktr
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Pliomera fischeri
これは二代目のプリオメラで、当初からかなりアラが目立った。 しかし、これ以上に姿勢のよい、頭部の造作が理想的な、ハイポストマまでついた標本はなかなか見当たらない。 このプリオメラという種類は、かつてはそれなりの数が出ていたのに、最近ではふっつり見かけなくなった。 今後はどんどん稀少になっていくのではないか。 本標本は一見ぼろぼろだが、その目をルーペで見ると、微細な複眼の構造が保存されてる。 これもやはり私がこの標本を手元においている理由のひとつだ。 というわけで、いろいろと見どころの多い標本であることは確かだが、やっぱりどうしても気になるのはその全体のくたびれ具合と、母岩から外れている点だ。 これはまあ、諦めるしかないですね。 全長:40mm
Unknown ORD Russiaktr
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Pleurotomaria mutabilis var. corrugata
腹足類の化石で「これは!」と思ったのは、本標本が初めてです。 ショップの写真の撮り方もじつによかった。 現物以上に神秘感を漂わせてましたね。 本種の名前、私には初耳でしたけど、保育社の原色化石図鑑によると、「プリゥロトマリアという名前は、日本でも古くから知られ、とくに貝類愛好家の間ではよく通っている」とのこと。 なぜかといえば、かつてはオキナエビス(生きている化石として有名)の仲間がすべてこの名前で呼ばれていたからで、それだけ一般的だったんでしょう。 しかしその後分類が進んで、いまではプレウロトマリアというのはごく限られた種類の貝化石にしか使われておらず、それすら流動的で安定していないようです。 本種ももしかしたら Pyrgotrochus elongatus というのが正しい名前かもしれません。 まあいずれそれがはっきりするまでは、仮にしばらくプレウロトマリアということにしておきましょう。 これを机においてずっと眺めていますが、どうしても貝の化石という実感がわかず、バベルの塔のような建造物のミニチュアにしか見えません。 サイズ:25mm (最後の画像は食玩のバベルの塔)
Unknown MJUR, Dogger, Bajocian Evrecy, Calvados, Francektr
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Pleurocystites squamosus
オンタリオのオルドビス系から産出したもの。 海林檎は三葉虫などと比べると知名度は低いが、その奇妙な体制は見る者に訴えるものをもっている。 本種は海林檎のなかでは多産し、かつ保存もよいので、もっともよく市場に出回っている。 私もこれ以外の海林檎はもっていない。 この標本では苞は平らになっているが、本来はもっと立体的で、リンゴのように丸みを帯びていたらしい。 本種には孔菱と呼ばれる菱形の器官がある。 前方の二つはまるで目のようで、苞の全体が人間の髑髏のように見えなくもない。
unknown ORD Ontario, Canadaktr
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Placoparia tournemini
本種はイベリア半島一帯で広く産出する。 近縁種まで含めれば、チェコや英国、さらにモロッコでも多産するので、かなりの成功を収めた種類だといえる。 体制も一風変っていて、カクカクした感じの肋のある胸部や、弧を描くように丸まった尾部のトゲ、顆粒に覆われた目のない頭部など、一目でそれとわかるほど特徴的だ。 今回手に入れた標本は、小さいけれども色合いや質感がシックで、フランス産の美点がよく出ているように思う。 全長:22mm
Traveusot Fm. MORD La Dominelais, Britany, Francektr
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Perisphinctes sp.
化石集めの初期に購入したもの。 そのころは室内装飾に凝っていたので、なにか飾りになるものというのでこれを手に入れた。 保存はあまりよくないが、165㎜というサイズは装飾品としてはじゅうぶんだろう。 これを買ったころはペリスフィンクテスという名前で出回っていたが、いまはもしかしたら名前が変っているかもしれない。 しかし正式名称はどうあれ、一般的には「マダガスカルの白いアンモナイト」といえば本種を指す。 多産する種類で、もちろん値段は安いが、形としては数あるアンモナイトのうちでも優美な部類に入ると思う。
unknown Jura Tulear, Madagascarktr