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「上野三橋亭」のリキュールグラス2種
上野三橋亭で使用されていたと思われるリキュールグラス2種である。上野三橋亭(さんきょうてい)は、明治37年開業で戦前まで上野三橋町(現上野広小路あたり)にあったカフェー(洋食屋でもあった)で、夏目漱石の小説「行人」他、堀辰雄、佐多稲子、徳田秋聲など文学作品にも登場している。 計3脚で、内1脚は杯部が型吹き、エナメルを用いて桜に上野三橋亭本店と屋号がある。残り2脚は薄造りの吹きガラスで、杯部に英字筆記体で「Ueno Sankyotei」とある。どちらも成形が丁寧で、後者に至っては19世紀末のイギリスグラスと見紛うほどの端正な作りである。こういったものは新しく見えて案外古いものであることがある。やはり明治末~大正頃のグラスと見たい。
明治末~大正 日本M.S
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『山形千本切子』文様型吹きコップ
このコップは昨年入手したものであるが、和ガラス関連の書籍にも掲載がなく、類品を見たことがないので珍品であろう。 細い線状のカットを長さを変えながら山形になるように連続させて施した「山形千本切子」のコップは、当時よく製造された人気商品であったようで類品を見る。しかし、本来切子で表現されるべきところを型吹きで表現したものが本品である。木型を用いたようで、ガラスには縦方向の揺らぎが見られる。型吹きであるが故に、通常カットで表現される文様の凹部分は凸状に表現されている。 当時は切子を施す専門工の人件費を削減した廉価普及品的製品であったであろうが、見た目や触感から凸状の文様であるとは気づき難く、完成度が高い。また、端正な切子による文様よりもガラスに揺らぎやムラが出る型吹きの方が、味わいがあり好ましい。
明治後期〜大正 日本M.S
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おはじき
子供の玩具として、代表的なものの一つに「おはじき」がある。おはじきは、古くは奈良時代に中国より渡来し、平安時代の宮中遊戯から時代を経て庶民の遊戯として定着したものらしい。現在見るようなガラス製で扁平なおはじきは明治時代後期に普及したものである。 この品は、飛騨高山の古道具店から入手したもので、京都土産と思しき紙製の舞妓をデザインした小箱に収まっていたものである。時代はやはり明治時代後期から大正のものであろう。一つ一つ見ていくと、個性があり、まるで宝石を見るがごとく大変美しい。古い時代のガラスは玩具といえど馬鹿にできない。そんなおはじきであるが、いくつか種類があるのでご紹介する。 ・「型押しおはじき」(2枚目写真) 簡単なプレス加工のもので、栗、ひょっとこ、紅葉、茅葺の家などを象っている。赤色ガラスは当時高価であったためか、塗装による彩色となっている。残念ながら、ここでは赤と透明のもの以外ないが、青や緑、茶色、乳白、紫などの色ガラスを用いたものもあり、現在では高値で取引されている。 また、型押しの中でも表に花、裏に平仮名を押したものがあり、これは「花はじき」とよばれている。(3枚目写真) ・「ヘソおはじき」(4枚目写真) ガラス種を切り、扁平になるように押しつぶした簡単なものの中に、片側にヘソのような窪みを持つもの。 ・その他 個々の名称は不明ながら、片面に菊水紋や三ツ丸文(5枚目写真)、格子文を押したもの(大きいものは石蹴りか?)や、飴のように両端を切り離しただけのもの(6枚目写真)、碁石のように両面を凸形にしたもの(ガラス製碁石の可能性あり)(7枚目写真)、無紋で単にガラスを扁平に潰しただけのものがある。(8枚目写真)
明治後期〜大正 日本M.S
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アニメ「はいからさんが通る」のセル画
1978年6月~1979年3月まで放映された日本アニメーション制作のアニメ「はいからさんが通る」のセル画で、残念ながら背景や動画は付属していない。第27話のワンシーンである。 主人公の紅緒のもとに、シベリアに出征した婚約者の伊集院忍から手紙が届くシーンで、紅緒の柔和な表情が気に入っている。 肝心のアニメは、モスクワオリンピック放送のために早期打ち切りとなり完結しなかったことや、回ごとに作画にムラがあったりとあまり評価が高くないのが残念である。 原作は大和和紀の漫画で大正を舞台とし、大正デモクラシーから関東大震災といった時代を駆け抜ける男女のラブコメで、テレビドラマや舞台などにもなっている。名作と呼べる作品なので、未読の方はぜひ一読をお勧めする。
1978年M.S
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ウランガラスのガラスペン
ガラスペンはつけペンの一種である。ペン先は周囲に溝を施したガラス管をバーナーで焙り、引き切って作る。溝の毛細管現象を利用してインクを吸い上げ筆記する仕組みである。明治35年、風鈴職人であった佐々木定次郎によって考案された日本生まれの筆記具で、戦前から戦後にかけて盛んに使用された。しかし、ボールペンの誕生により徐々に顧みられなくなり、現在ではほとんど使用される機会がない。しかし、ペン自体の美しさや滑らかな書き心地などから根強いファンは多く、現在も少数ながら作られ続けている。 本品は竹軸にガラスペン先を挿入したタイプで、戦前のものである。このペンの最大の特徴は半透明の緑黄色を呈する、ウランを含有した練りガラスが用いられていることである。通常は透明ガラスが多く、有色のものであっても水色や茶、紫などが多く、このようにウランガラスを使用したガラスペンは珍しい。 残念なことにペン先に折れと商標ラベルに剥がれがあり、状態はさほど良くない。類品を探すと東京の鶯商會が販売した「鶯印万年」という商品であったようである。
大正〜昭和初期 日本M.S
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エナメル彩八重桜文コップ
コップの胴部にエナメル彩によって帯状に八重桜が描かれている。ガラス素地の色調は黒く鉛色である。 平凡社「別冊太陽 明治大正のガラス」(1994)には胴部がくびれた同形状のコップを「大正形コップ」と紹介している。 淡く光を透過する白いエナメル彩の花弁が桜の質感を見事に表している。
明治後期〜大正 日本M.S
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エナメル彩白孔雀文コップ
エナメル彩によって白孔雀が絵付けされたコップ。口縁と月の部分に水金による金彩がある。 孔雀の対面には舛屋雑貨店の文字が書かれている。
日本 明治後期M.S
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コープランド カップ&ソーサ―
イギリス、コープランド社製のティーカップ&ソーサー。 カップのねじり模様や金彩、盛り上げ金、白とターコイズのジュール打ち、鮮やかなネイビーブルーと、いとも豪華で繊細なカップである。 口縁部の金彩が経年使用により剥げているが、その欠点を補って余りある美しいデザインである。 と、あまり褒めすぎると自画自賛で嫌気がさすので、ここで止めにしますが、私の宝物の一つです。 金のバンドからターコイズの連珠が下がる、いわゆる瓔珞(ようらく)文の意匠で、イスラム風を意識した作品の一つ。 19世紀後期から20世紀初頭にかけて、コープランド社ではこのようなイスラム意匠のカップを多く制作した。 余談であるが、このカップを入手してしばらくたったある日の事、ソーサーの模様が何となくターコイズの首飾りをした白熊に見えて以来、白熊の顔にしか見えなくなりました。
19世紀末~20世紀初頭 イギリスM.S
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シャボン玉コップ(緑)
通称「シャボン玉コップ」 口縁部に乳白暈しと、胴部に二重環状に暈した模様を施している。鮮やかな緑色のガラスを用いているが、ウランガラスではない。アメリカからのウラニウム輸入がストップして以降の昭和初期のもの。緑以外に青とオレンジ色の存在を確認している。
日本 昭和20〜30年代M.S
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ジングラス
ジンなどアルコール度数の高い酒を飲むために使われたグラス。ステム(脚)とボール(杯)には六角形が連続したようなカット技法である、ファセットカットが施されている。生地は鉛ガラスでやや青味掛かる。
1780〜1800 イギリスM.S
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ソーススプーン
シカモアという木材から削り出されたソーススプーン。ハンドルには容器の縁に掛けるための突起や、装飾的な蕨型の彫刻がされている。また、杯部の背面にはシェル模様も彫刻されており美しい。 シェル模様はもう少し後の時代のシルバースプーンに多用された装飾で、その出現の早い例と言えるかもしれない。 約300年、ひとからひとへ受け継がれ、磨かれて琥珀色となり、トロリとした質感がある。
1700年頃 イギリスM.S
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タンカード
タンカードはビアマグを指す語であるが、はたしてこの器がどの様な用途で使用されたのか分からない。 紫掛かった深い藍色のガラスを用いて作られ、金彩で「Love &Live Happy」の文字を入れている。 イギリスの18末から19世紀にかけての色ガラス製品をブリストルグラスと総称している。
1800年頃 イギリスM.S
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ノベルティグラス「ポンパン」
コップではなくシャンパングラス。 昭和10年代に発売していた、林檎シャンパン「ポンパン(Pom Pan)」のノベルティグラス。当時のポスターにもこのグラスを持った美人が描かれている。 白色のエナメル刷りでロゴと波模様を施した美しいデザイン。また、ガラス成形も丁寧で現代のグラスに見紛う程だが、ガラス生地の気泡や揺らぎ(脈理)が時代の古さを物語っている。
昭和初期 日本M.S
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ノベルティコップ「アサシヲ」
美味滋養 清涼飲料 アサシヲとあるノベルティコップ。アサシヲ飲料株式會社が戦前に発売していた飲料であるが、どのような物かは史料が少なく不明である。当時の広告に「昔はサイダー 今はアサシヲ」とあるので、やはり炭酸飲料であると考えられる。また、ボトルディガーのブログを拝見すると、アサシヲの瓶は一般的なサイダー瓶のサイズであるが六角形である所に個性があり、胴部にアサシヲのロゴと底部に朝潮の文字のエンボスがあると言う。 王冠栓のサイダーは当時ラムネに比べて高級飲料と言う位置付けであったようで、品質が良く高級であることを謳った商品が多い。各地に様々なサイダーがあり、またノベルティコップも多く存在すると思われるが、なかなか入手は難しい。最近はサイダーのノベルティコップを蒐集の主軸としている。
大正〜昭和初期 日本M.S
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ノベルティコップ「アサヒビール・サッポロビール・リボンシトロン」
アサヒビールとサッポロビール、炭酸飲料のリボンシトロンの商品名がエナメル彩で刷られている。これは1906年、大阪麦酒(アサヒビール)と日本麦酒(エビスビール)、札幌麦酒(サッポロビール)の三社が合併し誕生した大日本麦酒株式会社のノベルティコップである。 1933年には日本麦酒礦泉を買収し、三ツ矢サイダー、ユニオンビールなども製造するようになるとノベルティコップにもこれらの商品名が刷られるようになる。
大正〜昭和初期 日本M.S