未完成メタルフィギュア “第71ハイランド軽歩兵連隊”(71st Highland Light Infantry) 一等兵 1837

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54mm Squadron Range/ British Army 1816-1837
SQN54 071
Private, 71st Highland Light Infantry 1837
Kit £13.45
ロンドンのメタルフィギュアショップ“The Tradition of London”が扱う「54mmスコードロン・レンジ」シリーズのうち、「英軍・1816-1837」編より『第71ハイランド軽歩兵連隊(71st Highland Light Infantry)一等兵1837』キットです。

この「1816年~1837年」というシリーズは、ナポレオン戦争後、ヴィクトリア朝が始まる直前までの間の時代が対象です。(ちょっと珍しいカテゴライズだと思うのですが…。日本人にはあまり縁のない時代ですね。)

4枚目の写真は、シングルモルトウイスキー「グレンマレイ12年」の外装缶の絵ですが、1885年にアイルランドで演習中の71連隊の様子を表現した絵画です。

5枚目の写真は、オスプレイ社 MEN AT ARMSシリーズNo. 107「British Infantry Equipments 1808-1908」のP25(6枚目はその本の表紙)、このフィギュアと時代は違いますが1815年のワーテルローにおける71軽歩兵連隊の兵士のイラストです。
青いのは水筒、なんとウイスキー樽のような木製の小さな樽なんです。重かったでしょうね。
樽の鏡板に「71」と連隊の番号が書かれています。

【部隊解説】
この『第71ハイランド軽歩兵連隊(71st Highland Light Infantry)』は、スコッチ・ウイスキー「グレン・マレイ」の展示解説に出てくる歩兵連隊です。(https://muuseo.com/miniature-models-bottles/items/128

1777年にスコットランドで編成された古い歩兵連隊のひとつで、マックリード卿ジョン・マッケンジー少将(Major-General John Mackenzie/※苗字の頭にMc=マックが付くのがスコットランド氏族の名前です)により、ハイランド地方から募兵した兵により“第73(ハイランド)歩兵連隊(マックリード卿のハイランダー連隊)”(The 73rd (Highland) Regiment of Foot (McLeod's Highlanders))として編成されました。

インド、ジブラルタルなど各地の戦役に参加し、1786年、“第71(ハイランド)歩兵連隊(マックリード卿のハイランダー連隊)”と改名、18世紀末の南インドにおけるマイソール戦争を転戦します。

1808年、“第71(グラスゴー・ハイランド)歩兵連隊”(The 71st (Glasgow Highland) Regiment of Foot)と改名、ナポレオン戦役の半島戦争に参加。その後、1810年、“第71(ハイランド)軽歩兵連隊”(The 71st (Highland) Regiment of Foot (Light Infantry))に再改名されました。
1815年6月のワーテルローの戦いでは、アダム少将率いる英軍第3軽旅団の一員として出陣、英軍右翼(戦線西側)を担当し緒戦のウーグモン城館の戦いなどに参加、当初936名いた兵員のうち202名の犠牲を払いますが、英軍の勝利に貢献したのでした。

ナポレオン戦争後、1824年に北米カナダに派遣され、1831年、植民地のバミューダに移駐、1834年に英国に戻りますが1838年にふたたびカナダに派遣されました。
(※このフィギュアは1837年の姿を再現したものなので、この時期のフィギュアのようです。)

クリミヤ戦争、インドセポイの乱の鎮圧などに参加した後、1881年、“第74(ハイランド)歩兵連隊”(The 74th (Highland) Regiment of Foot)と統合され、『ハイランド軽歩兵(シティ・オブ・グラスゴー)連隊』(HLI=Highland Light Infantry(City of Glasgow Regiment))となり、伝統の“71”の連隊番号はなくなりました。(※71連隊が第1大隊に、74連隊が第2大隊になっています。)

その後、ハイランド軽歩兵(シティ・オブ・グラスゴー)連隊はWW1、WW2に参加。
その第1大隊は英国大陸派遣軍に参加したことで、有名なダンケルクの撤退も経験しますが、その後、第53ウェールズ師団の一員としてノルマンディ上陸に参加、バルジの戦いなど著名な戦いに参加しました。
第2大隊は1941年から北アフリカ戦線に参戦、シシリー作戦、イタリア戦線に参加しました。

大戦の拡大で部隊は次々に拡大され新たな大隊が編成されますが、そのうちグラスゴーで編成された第13大隊はスコットランド北部のバンフシャーの警備を担当、シングルモルトウイスキーを作るバンフ蒸留所に駐屯するのですが、1941年8月16日、蒸留所はドイツ空軍の誤爆を受けます。

この日、バンフ蒸留所にはエジンバラ方面から疎開してきたウイスキー樽が貨物列車で到着したところでした。そこにドイツ軍の爆弾が落ちてきて一帯は火災に見舞われます。
類焼を防ぐため、ハイランド兵や消防隊員たちは蒸留所のウイスキーを付近の草原や川に流したのですが、その結果、付近の牛、鳥、ヒツジなど、動物たちは酔っ払い、なかにはかわいそうに死んでしまったものもいたそうで…。
さらに、13大隊の兵の中には、これ幸いと盗み飲みした者もいたとか…。(※という逸話は、H26年9月のモダン・モルト・ウイスキー・マーケットで講演させて頂いた話しです。)

第2次大戦後の軍縮の流れのなかで、ハイランド軽歩兵連隊も他部隊との統合を行います。
1959年、連隊はロイヤル・スコッツ・フュージリア連隊と統合され“ロイヤル・ハイランド・フュージリア連隊”(Royal Highland Fusiliers)の第1大隊となり、エジンバラに駐留。

2006年のスコットランド系の各歩兵連隊の大統合により、王立スコットランド歩兵連隊(The Royal Regiment of Scotland)の第2大隊(2 SCOTS)として現在に至ります。

スコッチ・ウイスキー『グレン・マレイ』(Gren Moray)“ハイランド連隊シリーズ”
スコットランド北部の町、エルギンにあるグレン・マレイ蒸留所のシングルモルトで、歴代の“ハイランド連隊シリーズ”のボトルコレクションです。 真ん中の茶色い缶カンのが古い12年もの、左が以前の16年もの、右の筒缶のが新しい16年ものです。 いずれの缶にも歴代の各“ハイランド連隊”の姿、名前、戦歴などが細かく描かれており、この外装を仔細に細かく見ていけばハイランド各連隊の歴史がわかるようになっているわけです。 古い四角い缶のシリーズでは、茶色い缶の12年は正面に『ハイランド軽歩兵連隊』(Highland Light Infantry Regiment)が主役として描かれており、側面には連隊の戦歴がずらっと書き込まれています。 “CORUNNA”とはナポレオン戦争のイベリア半島の苦しい撤退戦ですし、“SEVASTOPOL”とも書いてあるので、この連隊がクリミア戦争のセバストポリ攻略戦に参加したことも分かります。 反対の側面は、赤い制服にタータン柄のズボンを履く第71ハイランド軽歩兵連隊の兵隊がアイルランドにおいて演習をしている1885年の光景が描かれています。 この連隊は、現在のロイヤル・スコットランド連隊の第2大隊、ロイヤル・ハイランド・フュージリアーズ(Royal Highland Fusiliers)の母体となりました。 もう一つの四角い青い缶カンの主役は『クイーンズ・オウン・キャメロン・ハイランダーズ連隊』(The Queen’s Own Cameron Highlanders Regiment)です。 こちらも同様に、側面には連隊の戦歴が…、コルーナ、ワーテルロー、セバストポリ、ハルツーム(スーダン戦役ですね)、そして、マルヌ1914、イープルス1914とあるのは、WW1の凄惨な毒ガス戦で有名なイープルス会戦でしょう…。シディ・バラニ、エルアラメインはWW2の北アフリカ戦線ですし、さらにマンダレー、コヒマとあるのは日本軍とたたかったビルマ、インパール戦線ですね。さらにゴシックラインとくればドイツ軍とたたかったイタリア戦線ですから、著名な戦役、会戦のほとんどに参加したことが分かります。 本連隊も、大英帝国の歴史とともに歩んできたわけです。 反対側面には1852年の閲兵式の様子の絵が描かれています。 キャメロン・ハイランダーズは、1994年にゴードン・ハイランダーズ連隊と統合し『ハイランダーズ連隊』(Highlanders (Seaforth, Gordons and Camerons))の第1大隊となり、さらに2006年の大統合で『王立スコットランド連隊』の第4大隊である『ハイランダーズ』大隊として、現在に至ります。 いちばん新しい筒型の缶カンは、上段の大きな絵のほうで最近の統合されたハイランド連隊、すなわち『王立スコットランド連隊』(Royal Scotland Regiment)の現代の姿を描いています。 下段は、統合前の各連隊の歴代の姿(18世紀~WW1頃の時代)を描いており、各連隊の制服の違いなどを図鑑のように見比べることができますので、大変興味深い絵になっています。 こちらはお酒ですので、コレクションと言いつつ、一部はもう飲んじゃってます(笑) ライトかつソフトな、どちらかというと特徴の薄いモルトウイスキーだと思いますが、そのクセの無さがこのおサケのイイところなのかもしれませんね。 2000年にスコットランドを巡ったのですが、その際、レンタカーでこの蒸留所の“前”を通りました。 確か「あぁ、ここがグレンマレイか。」と素通りしつつ思ったように記憶してますが…、あまり印象がありません。(中を見せてくれるようなビジター設備が無かったから、素通りだったと思います…。それでも降りて様子くらい見てくれば良かったな、と反省。。。)
https://muuseo.com/miniature-models-bottles/items/128

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