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A Damsel in Distress
「アステア=ロジャース シリーズ」から一度離れたことになる。 その背景や理由についてはいろいろな所に書かれているが、それを考慮しながら見る必要はない良い一本だと思う。 これまでソロかジンジャーと踊るかしかなかったアステアがトリオで、しかも男性ダンサーを含む3人で見せる「Put Me to the Test」(捉えどころのない覚えにくいタイトル)は秀作。 伝わりやすく小気味いいリズムのステップに、ジョージ・バーンズが途中で二度 " Yeah! "と声を出す気持ちもわかるというもの。 中盤の遊園地のシーンの諸々を見て『バンド・ワゴン』の「Shine on Your Shoes」を連想して楽しくなるか、『レッツ・ダンス』の「Tunnel of Love」を思い出して苦い気持ちになるかは、その日の体調と運勢による。 「Nice Work If You Can Get It」のドラムナンバー、燕尾服は製作側からの要望だったかもしれないが、アステア本人が見せ場としてやりたいようにやった感じが滲み出ているようだ。 原題は「囚われの姫君」の意(自分のための備忘録)。
1937 ジョージ・スティーヴンス パンドロ・S・バーマン 踊る騎士Nozomi Shirakawa
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Carefree
気儘=「きまま」と読む。 この作品がアステアとの初めての出逢いだった。 1990年(頃)の正月三が日(あたり)に、日本テレビの深夜枠で、水野晴郎氏の映画番組の特番として『アステア=ロジャース特集』が組まれた。 オンタイムでは見ずに、ビデオに録画したのだが、記憶が間違っていなければ放映の順に見たはずなので、どういう意図でこの一本が最初だったのかは不明。 他の主演作と比べられる今ならわかることだが、ダンスシーンが少ない作品である。 その最初のナンバーが「Since They Turned 'Loch Lomond' into Swing」(全然覚えられない)で、ゴルフクラブを手に、見事なスイングを披露しながらタップを踏むというもの。 とにかく驚いた。「なんだ、この楽しさは!」と。 何度も何度も巻き戻して見直して、このダンスにタップが入っているのに気付いたのは、かなりの回数を経た後だ。 つまり、タップの技術を見せるのではない、、、「見て楽しかった、それがタップだった」という体験。 この体験の翌年からタップダンスを習い始めた。 そんな個人的な思い出は置いておいたとしても、この作品でのジンジャー・ロジャースはとにかくキュートだ。 催眠状態で街に出て、いろいろなイタズラをしでかす時の表情のカワイさといったら! そうそう、ほぼどうでもいいことだが、アステアが珍しく精神科医の役です。
1938 マーク・サンドリッチ パンドロ・S・バーマン 気儘時代Nozomi Shirakawa
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Easter Parade
一時引退からの復帰作。 その経緯については有名な話 ―― もともと主役を務める予定であったジーン・ケリーが休日中のフットボールで足を骨折。自ら直接電話をして代役を頼んだ、と。 結果的には良かった、と言えるのかもしれないが、やはりトホホな話だと思う。 それはともかく。 実際の撮影がケリー版でどこまで進んでいたかは知らないが、各ダンスシーンの振り付けに関しては早くから準備が行われていたのではないか。 その根拠はアステアっぽくない振り付けが散見されることだ。 完全にソロで踊るシーンは作り変えたのだろうが、相手がいるものに関してはそうもいかなかったのだろう。 「Snooky Ookums」のように歌のシーンを扱うのは他では見られないし、「When the Midnight Choo-Choo Leaves for Alabam」では、えもいわれぬ違和感がある……アステアの腕が長く見え、足が短く見える。 などと何か悪いところばかり記しているようだが、どのナンバーも安定感があり素晴らしい。単にマニアとして意地悪に見ると、というハナシで。(アステアにはバーリンの楽曲が一番合うと思う) 今回、わざわざDVDを焼き直した理由の一つが「自分の見たいシーンにチャプターを付ける」ということで、当然 アステアのダンスシーンを総て見られるように、な訳だが、この作品に関してはジュディ・ガーランドの「演技」にも幾つか付けた。 長くなるので箇所の説明は省くが、細かい芝居が本当に上手い。単に「自然だ」というだけではなく「キュートなおかしさ」を見事に入れ込んできていて、何度も繰り返して見たくなる。 実は少し苦手な女優だが、この映画での共演は素晴らしく見える。 追: アン・ミラーとの終盤でのデュオ「It Only Happens When I Dance With You」のダイナミックなエレガントさ、大人っぽさ、そしてアステアのズボンの丈が好きだ。
1948 チャールズ・ウォルターズ アーサー・フリード イースター・パレードNozomi Shirakawa
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The Story of Vernon and Irene Castle
一連の「アステア=ロジャース シリーズ」の最終作(後に一本だけ共演するが)。 最終作で実在のダンスペアを演じるというのは、妥当というか、誠に相応しい。 衣裳を始め、事実に忠実に描かれたというハナシなので、各ダンスの振り付けも当然そうなのだろうが、どれもアステアにしか見えないというのは流石、というべきか、ご愛嬌とするべきか。 (オリジナルナンバー「By the Light of the Silvery Moon」の軽妙さは素晴らしい) そしてそして。 前作辺りから顕著になってきた、ジンジャー・ロジャースの際立つ美しさ。 初共演の『空中レヴュー時代』から6年。スター女優に“変身”したジンジャーに比べ、アステアは相も変わらず燕尾服を着せられ・・・というようなことが、いろいろな文献に書かれている。 ちなみにこの作品で、アステアは出演ミュージカル映画史上 唯一「死ぬ」。 今回は実在の人物の事実に基づいているので例外なのだが、フレッド・アステアという男、実は「死なない」のだ。 この件に関しては別のところで文章にまとめたので、ご興味がある方は「死なないアステア はしりがき 白川」とGoogleででも検索してみていただきたい。
1939 ヘンリー・C・ポッター パンドロ・S・バーマン カッスル夫妻Nozomi Shirakawa
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Broadway Melody of 1940
どのダンスナンバーも素晴らしいが、やはり「Begin the Beguine」ということになろう。 わざと一度 話を逸らす。 もう一人の主役スター、エレノア・パウエルはダンサーである ―― 体の柔軟性も活かしさまざまなスタイルを取り入れることもできるが、彼女は「タップダンサーである」と言いきっていいと思う。 だから演技は稚拙だ(或るシーンで “驚いて物陰に身を隠す”という芝居など、大袈裟すぎて微笑ましくなってしまうほど)。それはそれでいい。それを補って余りあるほどのダンスシーンの美しさがあるのだから。 で、 その彼女が、この共演から41年後、アステアの「AFI生涯功労賞」受賞パーティーでの祝辞で、 「あの作品(『踊るニュウ・ヨーク』)は、二人のHOOFER(=タップダンサー)がせめぎ合って作り上げたものだった」 というようなことを語っていた。しかも、あの演技力からは想像できないような説得力ある語気で。 話を戻す。 好みの問題はあるにせよ、「Begin the Beguine」はタップダンスとして(ダンサー同士の意地とプライドを懸け)振り付けられた作品として最高峰の一つだと思う。MGMのミュージカルアンソロジー『ザッツ・エンタテインメント!』の冒頭で紹介されているのもその証拠。 他のシーン、例えば「Jukebox Dance」を踊り終えたアステアとパウエルの二人が顔を見合わせ笑いながらフレームアウトしていく様子などは、作品の役柄ではなく素のダンサー同士にしか見えなくて嬉しくなってしまう。 また「Don't Monkey with Broadway」では、アステアには非常に珍しい男性ダンサーとのデュオが見られる。
1940 ノーマン・タウログ ジャック・カミングス 踊るニュウ・ヨークNozomi Shirakawa
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Yolanda and the Thief
アステア出演作としては、ここからがカラー作品(なのでジャケットの写真もカラー)。 ヒロインのルシル・ブレマーと製作のアーサー・フリードの関係がドウノコウノとか、そういう話は省略。 詐欺師というアステアの役柄設定も、そこに「神様」が絡んでくるという展開も、ストーリーとしてはアステア作品中 一、二を争う面白さだと思う。 各シーンの意味をわかりやすく押し付けてくる、モダンバレエ風の「Dream Ballet」も、プログレッシヴな(??)リズムを組み込んだ「Coffee Time」もとても楽しめる。 だからといって、繰り返して何度も観たくなるかというと、全然そうではない。
1945 ヴィンセント・ミネリ アーサー・フリード ヨランダと泥棒Nozomi Shirakawa
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You'll Never Get Rich
正直に白状すると、コレと『You Were Never Lovelier』は区別がつかなくなってしまっている。マニアとしては恥ずかしい。 ただ、原題も出演者も、ストーリーがつまらないところも全部が似すぎている。 そんなことより。 撮影技術でダンスの動きがより的確に捉えられるようになったり、音響効果で音楽とタップの音のバランスが良くなったりと、その辺のおかげも少しはあるのかもしれないが、この作品から数本のアステアの“キレ”には目を見張る凄まじいものがある。年齢的にも最も“体がキく”頃に差し掛かっていた筈だ。 どアタマの「Boogie Barcarolle」でのリタ・ヘイワースとの短いデュオ。 シャッフルやフラップというタップ特有の足の使い方がどうのこうのではなく、ただ足を打つだけ、単に歩くだけ、のような動きのシャープさといったら! そしてこの絶妙なブレンドバランスを「A-Stairable Rag」で、しっかり一曲見せてくれる。
1941 シドニー・ランフィールド サミュエル・ビショフ 踊る結婚式Nozomi Shirakawa
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Second Chorus
なかなか見ることのできなかった作品の一つだったが、事前の情報として、あのチャップリンの奥方(だった)ポーレット・ゴダートと共演しているというのが驚きだった。 最後を飾るナンバー「Poor Mr.Chisholm(Hoe Down the Bayou)」だけで見る価値のある作品だが、それよりも長年マニアが思いを馳せていたのが、アウトテイクナンバーの「Me and the Ghost Upstairs」だ。 アステアとの共同振り付けとしてクレジットされるハーミズ・パンとの共演ナンバーとされ、その内容について大いに想像力をかきたてられてきた。 これが最近 YouTubeで遂に見ることができたのだが。。。 こりゃアウトテイク(つまりは「ボツ」)にするよな、と うなづきました。ハイ。 (いつも“誰かを想定して”構成を練り、振り付けをしている二人が、いざ自分たちで踊るとなった時に何をどの程度していいかわからなくなった、という感じなのではないだろうか)
1940 ヘンリー・C・ポッター ボリス・モロス セカンド・コーラスNozomi Shirakawa
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The Barkleys of Broadway
「アステア=ロジャース」ゴールデンコンビ 10年振りの復活! であり、前回は実在した夫婦(カッスル夫妻)だったのが、今回は架空の、しかも自分たちをパロディーにしたような夫婦ダンスコンビを演じることになったという、ファン、マニアにとっては結果として夢のような作品。 これだけのお膳立てなのに、元はジュディ・ガーランドで撮ろうとしていたというのだから、そっちの方が不自然で不思議。例によってその辺の事情は知らない(もしくはジンジャーになってから脚本をある程度書き変えたのだろうか)。 ダンスナンバーはどれも抜群の安定感。時間が経ってから見ている人間にとっては安心よりも微笑ましくもなる喜びだ。 初めて見た際の驚きで覚えているのは三つ。 ※タイトルが長い! ※ジンジャー・ロジャースがカラーだ! ※アステアとジンジャーのキスシーンだ! タップデュオ「Bouncin' The Blues」の振り付けとダンスが素晴らしいのは言わずもがな。 はじめの頃は、ナンバー途中で数回聞かれるアステアの後付けの笑い声に強い違和感があったが、何度も繰り返し見た今は慣れた。 そしてアステアの衣裳……リハーサル用の稽古着という設定なのだろうがカッコよすぎる。よくマネをする。 追: 個性的なピアニストのオスカー・レヴァントの病的な感じが好き。 アステア、ジンジャーと3人で歌いながら歩くナンバー「A Weekend in the Country」は1949年のミュージカル映画としても懐古趣味な一曲ということなのだと想像する。隠れた名曲だと思う。
1949 チャールズ・ウォルターズ アーサー・フリード ブロードウェイのバークレー夫妻Nozomi Shirakawa
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The Band Wagon
フレッド・アステアのミュージカル映画31本の中で、個人的にベスト1。 登場人物とそのキャスティング、ストーリー、展開、ミュージカルナンバー、どれをとっても素晴らしい。マニアを自称しているわりにはマニアックではない素直なランキングだと思う。 全映画のダンスナンバーの、というとまた違ってくるが、映画一本通してとなると、繰り返した回数はこの作品が一番。何度観たかわからない。何度でも観たくなる。 本当に全部が好きなので、書きだすと長~~くなってしまうので割愛。 でも、その中から一つだけ―― 一大ダンスシークエンス「Girl Hunt Ballet」。 「で、結局あれはどういう意味なの?」と尋ねられたことが数回あるが、そうではない。 何かの設定をわからせるようなパントマイムではなく、全体の(ここではハードボイルド小説の)イメージをパロディにして表現する、というのがダンスシークエンスの味わいの一つだ。台詞付きの構成だが、その配分も絶妙。 シド・チャリシーは台詞なしのこの一人二役、ハマっていると思う。 そのシド。 ジャック・ブキャナン演じる大演出家ジェフリー・コルドバ邸でのシーンで、婚約者で振付師のポール・バート(役のジェイムズ・ミッチェル)から緊張をなだめるキスをされる。鼻の頭に。その瞬間の表情が超絶カワイイ。 もう一つだけ! 不朽のナンバー「Dancing in the Dark」の前後に全く台詞がないのは名演出。 追: フレッド・アステア出演ミュージカル映画の中の「アステアが出ないナンバー」でベスト1が「Louisiana Hayride」。パワフルな楽曲、ナネット・ファブレイのダンス、表情。大好きだ。 ほらー。 けっきょく長くなった。
1953 ヴィンセント・ミネリ アーサー・フリード バンド・ワゴンNozomi Shirakawa
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Dancing Lady
「ほぼ本人役」のアステア。シルエットも声も尖っている印象。 当時のジョーン・クロフォードの人気がどれほどなのかは知らないが、いくらなんでもダンスはひどすぎる。 最初に字幕なしで観た際、大まかにしかストーリーがわからなかったので、彼女は自分が下手なことを悩んでいるダンサー役なのだと信じて疑わなかった。 一大シークエンス風の「Let's Go Bavarian」は後の『バンド・ワゴン』での「I Love Louisa」で見せる「ドイツ=ビール」「ドイツ人=無表情」というステレオタイプな演出が既にあって面白い。 ご想像通り、アステアのシーン以外は観ません。
1933 ロバート・Z・レオナード デイヴィッド・O・セルズニック ダンシング・レディNozomi Shirakawa
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Holiday Inn
アステアは男性とのデュオで踊るナンバーが極端に少ない。 理由を想像するのは難しくない。 自分の方が劣って見える相手と、しかもその相手の土俵で勝負など誰もしたくはなかろう。 そしてもう一つの理由。 この映画の話から離れて少し長くなるが、男性同士、複数で踊ることも多かったジーン・ケリーと比べるのがわかりやすい。 名作『雨に唄えば』の中でも有名で人気のある一曲「Moses」。ドナルド・オコナーとのダイナミックなタップを繰り広げるが、あれはまさしくユニゾンで踊ることを目的とした「振り付け」がなされているナンバーである。 これは個人的な妄想だが、アステア(とハーミズ・パン)はそういった振り付けができなかったのではないかと(勿論、技術的・能力的になどという気は毛頭ない!)。 幼いころから姉・アデールと踊ってきたアステアにとって、ユニゾンで踊るにしても相手は異性。衣裳も基本的な身のこなしも違う。更にアステアの独特なニュアンスは、体の向きや腕の方向などを正確に合わせることが求められる振り付けには不向きだと思う(アステアにそれを頼むのはとても無理だし、相手役にアステアのムーブメントを真似ろというのは酷なハナシだろう)。 そんなこんなで、誰も組みたがらない孤独なフレディと見事に渡り合っているのが、この作品のもう一人の主役 ビング・クロスビーである。 「I'll Capture Your Heart」の楽しさ……そう、アステアに勝つにはこの動きしかない!(4年後の再共演作『ブルー・スカイ』では更なる進化を遂げることになる) ダンスシーンではどの場面でもノっているアステアだが、最大の魅せ場「Say It with Firecrackers」のソロでの最後のガッツポーズは“素”であるように見える。 「Fred Astaire & Bing Crosby」という二大看板に予算を割いたためか、そもそも当時のパラマウントにはスター女優がいなかったのか知らないが、共演の女性陣がとにかく地味。華がない(失敬)。 「You're Easy to Dance With」では衣裳まで地味。その隣でカッコつけまくりのアステアさん。少しは手加減しなさいよ。 最後にもう一つ。 役柄的に、クロスビーがどこまでもお人好しで、アステアは結構な感じの嫌な奴。 クロスビーのことは知らないが、Mr.A、ぴったりだと思う。
1942 マーク・サンドリッチ マーク・サンドリッチ スイング・ホテルNozomi Shirakawa
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You Were Never Lovelier
身近にいるハリウッドミュージカル好きな人たちから よく「フレッド・アステアが(映画の中で)あんなにモテるというのが納得できない」という意見を頂戴するが、反論は全くない。 なかでも、これが二作目の共演となるリタ・ヘイワースとは「全然つりあってないじゃないか!」と言われる。 全面的に同意する。 (しかも今回は、リタが前回の『踊る結婚式』の勝気な性格とは反対の純真無垢な女性役を演じていて、可愛らしさを押し出してきてるもんだから余計だろう) 直接この作品とは関係ない話になるが ―― もう一人のミュージカルスター、ジーン・ケリーは作品中ではいつも(?)引っ込み思案で憧れの女性に思いを伝えられない……と見せかけて、いざダンスシーンになるとギラギラした表情で、ラストはドヤ顔のどアップだ。 一方のアステアは、自信満々のモテ男を演じつつも、(振り付けの中で)鏡に自分の顔を映した時などは目を覆っておどけた風を見せるし、ダンスの最後をカメラ目線で終わることは殆どない。 ファンならではのツッコミどころをいろいろと持ちつつも、ケリーには納得させられ、アステアは許してしまえるのは、そういったことも含めての全体があるからかな、と想像する。 などという勝手な考察を忘れてしまえるほど、中盤の二人のデュオ「The Shorty George」は曲のアレンジ、衣裳も含めてカッコ良い。
1942 ウィリアム・A・サイター ルイス・F・エデルマン 晴れて今宵はNozomi Shirakawa
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The Sky's the Limit
戦時下ということで、一応「戦意高揚映画」らしい。 他の何本かの映画でも言えることだが、今作では「踊れないアイドル」を相手役に迎えても文句一つ言わず……かどうかは知らないが、きちんと仕上げてくるのだから、アステアという人の職人気質を感じる(勿論、自身の魅せ場はキッチリと用意されているのだけれども;今回は「One for My Baby」が圧巻)。 途中、罰ゲームとして“踊らされる”「Snake Dance」。 好きでやってると思う。ぜったい。
1943 エドワード・H・グリフィス デイヴィッド・ハンプステッド 青空に踊るNozomi Shirakawa
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Ziegfeld Follies
(アステアの出演シーン以外に言及すると長くなるので省くが、初めて見た時に強烈に感じたことは「日米(日欧)の“笑い”の違い」だ。 面白くないとか、笑えないという感想ではなく、なにか「痛々しいほどの演じ方」の加減に引いてしまった。) 「そうこなくっちゃ!」とファンなら膝を叩く人選のオープニング。 わかりやすい、安定の流麗さの「This Herat of Mine」。 側転の振り付けに驚く「Limehouse Blues」。 美しいのに目立たない女性が相手役ということもあって、どれも完全にアステアがメインなので、マニアとしては心おきなく集中できる楽しさだ。 いやいやしかし、いつ誰がどこで何と言っても「The Babbitt and the Bromide」でしょう!! やっぱり。 長嶋か王か、レノンかマッカートニーか、大鵬か玉子焼きか、に並ぶ「フレッド・アステアとジーン・ケリー」がサシで踊るのだから!!! かつてアステアがお姉さんのアデールと踊っていた曲(タイトルが「凡人と俗人」というのもなんともはや!)を選び、自分たちを茶化した導入で始まり、スタイルの違う二人に同じ衣裳を着させて……と、もうずーっとニヤニヤさせられっぱなしである。 何百回と観かえして、いろいろと語りたい細かいところが沢山あるが、本当にキリがないので割愛。 ただ一つ、個人的に勝手に解釈し納得しているのは、恐らく振り付けの9割以上がケリー主導だということ(ケリーが尻もちをついている間に踏むほんの短いステップが、まさに「アステア振り」で嬉しくなる)。 ――このナンバーだけで一晩は語りあかせる。 追:ジュディ・ガーランド主演のナンバー「A Great Lady Has an Interview」。 上記「The Babbitt~」を繰り返したあと必ず見たくなる。
1946 ヴィンセント・ミネリ アーサー・フリード ジーグフェルド・フォリーズNozomi Shirakawa
