2019 ウィーン美術史美術館
公開日:2022/6/20
先日、フェルメールの絵が地元にやってきたので見に行きました。とても良い絵だったのですが、以前彼の絵を見に行ったことを思い出し、その時のことを書くことにしました。
2019年6月にウィーンに行きました。2000年に父親を連れて行って以来の訪問です。コロナも全くなくみんな元気に街を闊歩していて、ほんの少し前なのにずいぶん昔の様に思えます。
私にはどうしてももう一度行ってみたい場所、「ウィーン美術史美術館」がありました。2000年の旅行の際にも行ったのですが、父の足の具合が今一つだったので後ろ髪を引かれる思いで早々にホテルに戻った記憶があります。
まずアルベルティ―ナへ
美術史美術館に行く前に「アルベルティ―ナ」に行きました。ここには印象派の名作もありますが、7万近い素描と100万の版画を所蔵しており、「スケッチの殿堂」と呼ぶに相応しい美術館です。父と一緒の時には行けなかったところです。

第二次世界大戦で連合国の爆撃を受け、アルベルティ―ナの建物は激しく損傷を受けましたが、現在は修復されて美しい建物になっています。
所蔵作品が膨大なので、早速作品を見て回ります。
世界一美しい雑草、デューラー作「芝」です。近くで見ても驚くような正確さで描かれています。ただ、デューラーのスケッチの恐るべき実力が、油彩ではあまり発揮できていないような気がすることがあります。
アルベルティ―ナの広告に必ず出てくるデューラーの「野兎」です。
こちらもおそらく世界一有名な兎です。
デューラーの「祈り手」です。ハイライトの使い方が絶妙です。
「書斎の聖ヒエロニムス」です。
ルーベンスの息子を描いたスケッチです。
こちらもルーベンス作。本人の性格まではっきり伝ってくるような絵です。
ミケランジェロのスケッチですが、やはりここでも彼の「筋肉袋」は健在です(笑)。
ウィーン美術史美術館へ
ここから歩いて数分、美術史美術館に向かいます。当日は金曜日でしたので、夜8時まで鑑賞できます。

美術史美術館の建物です。1891年と比較的新しい建築ですが、やや重く古めかしい印象があります。向かいの自然史博物館と全く同じデザインです。
早速館内に入ります。

エントランスを入るとこの大階段がまず入場者を圧倒します。ただならぬ豪華さですが、このホールで観覧する人の気分が高揚することは間違いないと思います。

大階段中央の「テセウス群像」です。ナポレオンが注文した彫刻です。

テセウス像の上から美術館入り口をみるとこんな感じです。

奥の壁画の女性二人の絵は若きクリムトの手によるものです。
さてこの美術館は世界でも指折りのコレクションを持っていますが、ここが何といっても素晴らしいのは「混んでいない」ことです。これは美術鑑賞をするうえで最も大切なことだと私は思っています。ルーブルやオルセーでは入場するだけで大変で、わりと空いていると言われるプラド美術館でも、絵を見るまでにそれなりに時間が掛かるようです。
美術史美術館は年間70-80万人の入場者がありますが、これを一日に換算しますと1920‐2200人前後、この広大な美術館の面積を考えるとびっくりするほどの少なさで、人が密集することが考えづらい人数です。ハイシーズンでは多少込み合うこともあるかもしれません。ただ私の行ったのは6月下旬ですから、それなりに混んでいるシーズンだったと思われます。閑散とは言いませんが、人気の絵の前でさえ多くても3-4人くらいしか人がいませんでした。
「絵画だけを見るなら1.5-2時間は必要」などと言っているガイドブックがありますが、とんでもない話です。絵をほとんど見ないでオリエンテーリングのように展示室を歩くだけでも2時間はぎりぎりでしょう。絵の質、量とも気が遠くなるほどで、絵が好きな人なら一日中居てもとても足りません。私は二日通いました。

ルカ・ジョルダーノの「大天使ミカエルと反逆天使」の前もこの状態です。
そして・・・・
ラファエロの名作の前でもほとんど人がいません。
彼の代表作「草原の聖母」です。
ブリューゲルの傑作の前にも誰もいない。驚きの光景です。ちなみに三脚、フラッシュなしなら写真撮影はどの絵も自由です。
日本にもやってきたデューラーの「若いヴェネツィアの貴婦人」です。
私の大好きなフランス・ハルスの「若い男の肖像」です。

ジョルジョーネの「ラウラ」。彼の署名と製作年が書かれた唯一の作品です。

一番見たかったフェルメールの『絵画芸術の寓意』です。2000年訪問のときもこの絵だけは見に行きました。あらゆる意味で彼の最高傑作だと思います。絵の中も物音もなく静か、その絵の置かれている環境も静か。気のすむまで堪能出来ます。
しかし、今回の訪問で一番感激したのはこの彫刻でした。
アフロディーテ。2000年も前の彫刻です。ほとんど紹介されない作品ですが、自分だけのお気に入りの作品が見つけられるのも、美術館探訪の大きな魅力ですね。

途中、いつでもこのカフェでお茶を飲んで休むことが出来ます。

外はいかつい姿ですが、天井からは自然光が燦々と照り付け、館内はとても気持ちがいい空間です。またいつかこの美術館に行ける日が来るといいなと思います。
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