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1920-1930年代製 マーシャル&スネルグローブ スタッグキルトシューズ
1920-1930年頃の製作と思われるマーシャル&スネルグローブ別注のビスポークです。素材はスタッグスエードのキルトシューズになっています。キルト部分は画像3枚目のように脱着不可で、タン部分に縫い付けになっています。ソールを見ると分かりますが、踏まず部分は恐ろしく細くなっています。ヒールの化粧釘の密度も凄いです。元々は婦人用かもしれませんが、私は頓着せず履いています。私はグリーンのスタッグを何度も見ていますが、このスタッグスエードはそのどれよりも素晴らしい柔らかな肌触りです。100年近く前にはこんな革もあったのかと驚かされました。 Marshall & Snelgroveは1848年ロンドンで創業した総合デパートです。1973年にオックスフォードの店舗は取り壊され、今は他社に合併吸収されそのブランドネームもありません。画像7は1884年の広告、画像8は1917年の広告です。華やかな店内の様子が伺えます。
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1920年代 ワイルドスミス コードバン製ビスポークブーツ
イーベイで購入したワイルドスミスの未使用のビスポークブーツです。「17 ジャーミン・ストリート」の住所になっており、1920年前後の製作と思われます。乗馬文化のある英国靴では非常に珍しいのですが、アッパーはコードバンです。せっかくこれだけの素材で注文したのに、なぜ一度もオーナーに履かれなかったのか分かりません。 初めて見た時、100年経ってもこんな美しい靴があるのだと感嘆しました。さすがにコードバンには多少のムラや染みのようなものがありますが、見事としか言いようのないブーツの出来です。ハーフミッドソールで、ヒールトップの釘打ちも緣ギリギリを攻めています。キャップが大きめなのも私の好みです。
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1925年以前の製作 HELLRTERN & SONS ビスポークローファー
日記にも書きましたが、100年ほど前の製作と思われるパンチドキャップトゥのローファーです。タンが大変長く、デザインも独特でデコラティブな印象があります。エドワーディアン時代の靴といった感じです。側面から見るとコバがほどんど見えません。パンチングの穴は大変小さく作られており、華奢な印象です。僅かにスクエァに作られたトゥ。カーフは薄いのですが、特に乾燥した感じもなく良好なコンディションを維持しています。ライニングも柔らかで滑りづらい良い革が用いられています。 アウトソールの革もしっとりしていて、オークバークを使ったものと思われます。 Hellstern & Sonsは1870年にパリ・ヴァンドームに創業したビスポークシューズ・メゾンです。1925年にロンドンに支店を出しました。1925年以降、靴のインソックには『ロンドン』の文字がスタンプされますので、この靴の製作は1925年以前ということになります。 https://muuseo.com/shinshin3/diaries/144
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1928年11月 リプロダクション初期 Manfield & Sons フルブローグ
1928年11月のリーガルの広告です。英国のビスポークメーカー、Manfield & Sonsの靴をリーガルが購入し、そのリプロダクションを作ったものです。オリジナルは$18.70(78シリング)でリーガル製は$6.60です。素材はマーチン社のスコッチグレインが使われています。ラストが大変美しく、現代でも古臭い感じが全くしません。鳩目のアイレットも良いですね。 本文にもありますが、リーガル社はマンフィールドから40組もの靴を購入して研究したようです。大変な力の入れようですが、リプロダクションの出来を見ますと、見事に目的を果たしていると思われます。何とかリーガルのあら探しをしようと目を皿のようにして比べてみますが、違いは全くわかりません。 画像5枚目が1897年のマンフィールドの店舗です。画像6枚目は1907年の製作工房での様子。沢山の従業員がいたことがわかります。画像7枚目は1930年代のマンフィールドのショーウィンドーです。
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1928年3月 リプロダクション初期 Bartley & Sons セミブローグ
1928年3月のリーガルの広告です。ロンドンのブーツメーカー、Bartley & Sonsのリプロダクションです。小さ目のパンチングの美しいラウンドトゥで、“punched and notched" toe capと書かれています。本文中でリーガルはこのバートレー社に計36足分の注文をしています。画像2枚目がオリジナルで一足£5.10($26.50)という値段でした。画像3枚目のリプロダクションは$6.60です。 画像4枚目はリーガル社のプレジデント、E.J.Blissさんのコメントです。この中でバートレーのオリジナルは、オランダの「オーイステルウェイクOISTERWYK」で鞣されたカーフスキンと書かれており、リーガルも同じ革を使っています。 この文章で何より私が興奮したのは、バートレーのソールが「オークバーク」を使っているという箇所です。オークバークはご存知の方もいらっしゃるでしょうが、オークの樹液に浸して時間を掛けて作られた最高級の底革です。2000年以上前からの製法で、通常のソールの数倍の価格ですが、古いグリーンにはこのオークバークが使われています。 バートレー社からの手紙を写真に撮り、そのまま広告に載せているというのは大胆な手法です。ピールに吸収合併される前なので、のちの時代ではフォスターでお馴染みの「走るキツネ」のロゴが手紙の中に見られます。ロイヤルワラントも二つこの時点で受けています。
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1928年9月 Allen&Brigde リプロダクション セミブローグ
1928年9月のリーガルの広告ですが、ポスターのデザインが格好いいですね。ここではAllen&Brigdeのセミブローグをリプロダクトしていますが、実に良い靴だと思います。甲の高さの抑えられたスマートな木型で、ラウンドトゥですが先端もシャープな印象です。アイレット周りのパンチングが小さめで、アイレットもフレアのない平行のものでこれも私好みです。コバはやや張っていますが、ウィールもしっかりつけられており力強い。 ここでも再びリーガルのプレジデントBlissさんの言葉が語られています。リーガルは40足の靴をAllen&Brigdeに注文していますが、リプロダクションにセミブローグを選んだのは、"it is worn by the best dressed men in London" だからだと言っています。Allen&Brigdeの靴もBartley&Sonsと同じく、オークバークのソール、アッパーはオランダのオーイステルウェイクで鞣されたカーフを使っています。Allen&Brigdeは4人で製作する工房ですが、「リーガルは150人の職人がおり、Allenが一足作る間に100足作れる」と豪語しています(笑)。 Allen&Brigdeに関しては私はほとんど知りませんが、Blissさんは1928年時点で「一世紀以上の歴史を持つブーツメーカー」と語っていますから、19世紀初頭には創業していたということになります。日本では文化文政の頃ですね。1851年に"excellence of art and make"というメダルを受賞したと書かれています。
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1928年 エドワード・グリーンからの手紙
今から100年近く前の1928年にエドワードグリーンから米国サンディエゴの百貨店と思われるJ.H.Kahle & Sonsに出された手紙です。イーベイで初めて見た時は興奮してしまい、速攻で購入してしまいました。タイプミスがあったりするのが人間臭いですね。 手紙の冒頭に印刷されている通り、当時はテニスや釣り、ゴルフ、シューティング、ミリタリーシューズなど様々な靴を手縫い、機械縫いで作っていたようです。1928年以前、BURNS St.からOLIVER St.に工場が移転しており、ここから90年代の移転まで、70年近くこの場所(オリバーストリート)で操業することになるわけですね。感慨深いです。 米国の会社が非常に古くからグリーンとの付き合いがあったことがわかる証拠です。
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1929年10月 G.W.Bunting リプロダクション スコッチグレイン フルブローグ
1929年10月のリーガルの広告です。前年にBartley,Allen,Manfieldと続いたあと、Bunting製のフルブローグのリプロダクションが紹介されています。Buntingはロイヤルワラントを持つ名門ブーツメーカーですが、実際に作られた靴は写真を含め一度も見たことがありません。この靴は本文中で"Galosh Oxford"と呼ばれていますので、一応防寒用の冬靴なのだと思われます。「ガロッシュ」はフランス語が語源の「防寒用のオーバーシューズ」の意味です。防寒靴といってもやはり相当に洗練された印象です。アッパーはMartin社のスコッチグレインで、ダブルソール、フルライニングと書かれています。周囲にはBunting製ではない、Allen,Bartleyなどの靴が紹介されています。 今回リーガルはBuntingに40足靴を注文しています。オリジナルは一足$33.10とリプロダクションは$6.60となっています。ここでもBuntingはロンドンに一店のみに対して、リーガル社は主要な都市に支店があることを謳っています。 画像6枚目は1924年のMartin社の広告です。この「リーガル広告の時代と同時期の革」の紹介と言っていいと思います。
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1930-1940年頃製作 TOM HILL製 ライディングブーツ
日記のところにも掲載しましたが、1930-1940年頃の製作と思われるTOM HILLのライディングブーツです。英国のアンティークショップから購入しました。完全なデッドストックで入手しています。1873年創業のTOM HILLはビスポークブーツの製作で有名な工房で、1960年頃まで操業していました。 ややコバが張っていますが、とても美しいラウンドトゥです。アッパーはやや乾燥気味のカーフではありますが、厚みがあって素晴らしいコンディションです。ただステッチの糸の劣化が激しく、画像のように簡単に切れてしまいました。この細かなステッチに対応したミシンを持つ修理工房が国内にあるか鋭意調査中です。 https://muuseo.com/shinshin3/diaries/109
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1930年4月 画期的なミーティング 『ロンドン・スタイル・カンファレンス』
1930年4月、これまで英国の超一流ビスポークメーカー、Bartley and Sons , G. W. Bunting , Ltd. , Allen and Bridge , Manfield and Sons とリーガルが時間を掛けて対話を重ねてきた成果がついに表れます。四つの名店のスペシャリストを一室に集め、リーガルのリプロダクションを見せて意見を聞く機会を得たのです。四社が一堂に会するのは初めてのことであり、この画期的な会を"London Style Conference"(Regal Spring Style Conference)と呼んでいます。 各氏とも大変な靴のエキスパートでありますが、特にBuntingのCoombee氏(スペルがよく見えないので間違いかもしれません)は同社で50年以上仕事をされたと書かれています。靴を矯めつ眇めつしている四氏の写真が載っていますが、ヒリヒリした緊張感は感じられず、何か親密な雰囲気が漂っています。これもリーガルが十分に気を使って準備をしてきたおかげでしょう。ここでは広告に掲載された6種の靴が検証されたようです。左列上から下に向かってBunting, Manfield, Bartleyの製作、右列上から下に向かってAllen, Bunting, Allenの製作となっています。どれも靴好きには垂涎ものですが、特に右中央のBuntingの靴はBliss氏に「これまで作られた中で最も素晴らしいゴルフシューズ」と言われています。 この四つのメーカーはいずれも今はありません。マンフィールドは1970年頃まで存在したようですが、バートレーはこの後ピールに合併吸収されますし、他のメーカーも第二次大戦後に閉業します。明治以前から靴を作っていた名門がみんな無くなって何かとても寂しい気がします。ピールからキツネのロゴを受け継いだフォスターも近年無くなりました。 それにしてもプライドの高い英国人が、米国の会社であるリーガルに当時よくこれだけ協力したものだと感心します。 London is recognized as the source of Men's Styles , just as Paris is for Women's Styles . 本文にある通り、米国人にもロンドンはこのように考えられていたのですね。
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1930年5月 Manfield Featherweight shoes
1930年5月のリーガルの広告です。マンフィールドには当時「Featherweight」と呼ばれる軽い靴があったようなのですが、その真髄に迫る内容です。企業秘密に関わる情報のやりとりを公開することは現在では考えられませんが、無防備なほど「のどか」としか言いようがありません。リーガル社に悪気があったとは思わないのですが、結局名門シューメーカーが斜陽になっていく下地が徐々に作られているような気がします。 それにしてもなんと美しい6アイレットのパンチドキャップトゥかと見惚れてしまいます。
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1930-1940年頃製作 Tuczek ビスポーク ライディングブーツ
Tuczekはトゥーシェックと読むようですが、日本ではタッグゼッグと言われています。まず靴の個体自体目にすることはほとんどない大変貴重な靴です。これはTuczekが作ったビスポークブーツで、1930-1940年頃の製作と思われます。爪先の細い大変美しいラストになっています。アッパーは勿論ライニングの革が素晴らしいです。
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1931年4月 リーガル・ナショナル・コンペアー・コンテスト
1931年4月のリーガルの広告ですが、今回は"Regal National Compare Contest"と銘打って、全米に投票用紙を配り集計されました。1000人以上の人がオリジナルとリプロダクションを見て、その違いが分かるか調べたようです。ある靴の専門家は「虫眼鏡を使ってステッチとミシン目を数えた」そうです。10人に9人はオリジナルとリーガル製の差が分からなかったと書かれています。実際、この広告内にあるアレン製、バートレー製のオリジナルとリプロダクションの差は画像だけでは全く分かりません。ハンドウェルトとグッドイヤーウェルトの違いはほとんどの人には分からないということでしょうか。
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1934年3月広告 "Resco Twin-Foot Measuring Machine" ~リーガルのサイズ測定法の変遷
1934年3月のリーガルの広告ですが、足のサイズ測定の変遷が語られています。よくわからないのですが、この年からリーガルでは、"Resco Twin-Foot Measuring Machine"という仰々しい機械を用いてサイズ測定することになったようです。 画像3枚目の1921年の機器と何がそんなに違うのか私には分かりません(笑)。
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1940-1950年代 フォスター&サン スエード ビスポークローファー
「Duke of York」の住所のロゴですので1966年以前の製作ですが、出来の良さから40-50年代の製作と思われるフォスター&サンのビスポークローファーです。甲の薄いスマートなラストです。とても手触りの良いベルベットのような素晴らしいスエードが使われています。ステッチも現在の靴と比べて非常に細かなものです。アウトソールの革も良質で、長く歩いてもなかなか減りません。 何よりライニングの革質が素晴らしいのは、古い英国靴に共通する特徴です。履いているうちに飴色に光ってきます(このライニングの良さはイタリア靴にはありません)。今の靴のように簡単に擦り減ったり破けたりしません。 中をくりぬいた超軽量のツリーの出来も出色です。
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