シンセティック・ズィンカイト/紅亜鉛鉱

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べっこう色の六角錐と切子細工のような球体からなる酸化亜鉛の小さな結晶です。

ズィンカイトは天然にも産する亜鉛鉱物ですが、この結晶はとある色材プラントの中で意図せず生成された副産物とされています。

ポーランドのシレジア地方に建つその工場では、亜鉛を精錬し塗料を製造していました。
その生産過程で発生した排ガスが冷却され、飽和状態にあった成分が析出。

その結果、煙道内に付着したのがこの結晶とされます。

もしそれが事実であるとすれば、これは火山ガスの噴気孔に硫黄結晶が発達するものと同じ作用であります。
自然界にも存在する現象が偶然人の手の中で再現され、天然物と比較しても遜色ないズィンカイトの美結晶が成長したのでありましょう。

こうして生成された結晶は煙道から『採掘』され、単なる産業廃棄物ではない、収集に値する鉱物として扱われているのです。

自然の神秘は工場の中にも存在するのですね。

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