〇〇水系の高温緑石英/グリーンベータクォーツ

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これまでに採集した高温石英の中でも特に変わり種で、こんなのも採れるのかと正直驚いてしまった風変わりな一石です。
https://muuseo.com/tezzarite/items/96

大きさは先に展示した結晶を上回る7㎜級。
エッジは摩耗し結晶面は抉れシルエットはやや崩れていますが、六角形かつソロバン玉の形状から高温石英であることが分かります。

しかしこの石の特筆点は大きさなどではありません。

そう、タイトルのもある通り "色" です。
なんと面白いことに他の結晶に見られない濃緑色を呈していたのです。

このミドリ色は当然ながら石英自身の色ではなく、結晶の内部に取り込まれた他の鉱物に起因するものです。
その "他の鉱物" の正体については肉眼鑑定なので定かではありませんが、大抵は「緑泥石」や「緑閃石」「灰鉄輝石」といった緑色鉱物が原因なのでそれらの内のどれかであると思われます。

この緑水晶は、草花の茂る岸辺を散策していたところ保護色のごとく周囲に溶け込むように転がっていました。

はじめ石英だとは分からず、色味の印象から野ウサギの糞に見えてしまったのはここだけの話です。

〇〇水系の高温石英/ベータクォーツ
普通 "水晶" あるいは "石英" と聞いて真っ先にイメージする姿というと、恐らく削った鉛筆のような先端の尖った六角柱の結晶が殆どだと思います。 しかし彼らのように柱面を著しく欠いた特徴的な結晶形の者も存在します。 それが約573~867℃の高温条件で晶出した『高温石英』です。 思えば3月上旬。 雪の融け残る山間を訪れ、川底の砂泥からこの特異な結晶を見止めた瞬間から探求が始まります。 https://muuseo.com/tezzarite/diaries/11 それから長閑な谷川に通い詰めること数ヶ月。 最初の漁り場から上流1㎞ほどの範囲を探しまわり、ようやく数粒の理想的な結晶を見つけることができました。 まずは大きさ。 見つかる結晶は精々1~3㎜程度といったものが殆どでしたが、1枚目の標本は堂々た5ミリ級。 6枚目の上部に映っている結晶に至っては軸長6㎜にも達していました。 次に透明感。 実は5㎜以上の結晶にもちょくちょく遭遇したですが、そういった個体の悉くが亀裂もしくは不純物だらけ。 お世辞にも美しいとは呼べぬものばかりでした。 そんな中、大きさと透明度を兼ね備えた彼らは奇跡の存在であります。 加えて形状バランス。 結晶面のひとつひとつがほぼ均等な大きさで揃っており、結晶軸にも偏心がありません。 そのため上下の六角錐が鏡写しになっていると錯覚するほど対称性に優れています。 また多少の欠けこそあるものの致命的な欠損には至っておらずソロバン玉のシルエットはしっかり保たれています。 総じて様々な要素が小高く纏まった合格品。 かの有名な千本峠産にも匹敵する美結晶であると思います。 これまでは形が綺麗なのに極小サイズだったり、5㎜以上だけれど欠けが多かったり…といった調子が殆どであったものですから、見つけた瞬間は最高に嬉しかったです。 山が育み川が運んだ水の結晶。 恵んでくれた自然に感謝です。
https://muuseo.com/tezzarite/items/96

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