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矢塚の緑簾石/エピドート
水酸化ケイ酸カルシウム-アルミニウム-鉄を主成分とする鉱物。 お茶受けに合いそうな、渋さの漂う濃厚なグリーンが特徴です。 外見からは想像つきませんが、先に投稿した「タンザナイト/灰簾石」とは化学的に近しい間柄にある鉱物です。 和名の緑簾石は、幾重にも走る条線や、複数の結晶が並列に連なる様子が“簾(すだれ)”のようであることに由来します。 こう見えて「多色性」が顕著な鉱物でもあり、光に透かすことで様々な色相を目にすることができます。 透明度の高い美結晶なだけに、その変化ぶりは鮮明であります。
宝石 鉱物標本 6~7 2004年テッツァライト
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アストロフィライト/星葉石
水酸化フッ化ケイ酸カリウム-ナトリウム-鉄-チタンを主成分とする鉱物。 どうやら世の中には、昼も夜も関係なく輝き続ける、不滅の星が存在しているようなのです。 しかも驚くことにその星は、空ではなく石の中で輝いているのです。 その名は『アストロフィライト』。 星の煌めきが化石となってしまったかのような、とても風情溢れる子です。 ギリシャ語の「星/astron」と「葉/phullon」が語源であり、和名はそれを直訳したものとなっています。 古銅色をした葉片状の結晶が放射状に広がり、それがあたかも記号的な星に見える・・・ この鉱物の特徴を的確に、かつ詩的に表現した素敵なネーミングだと思います。 星を見たくなったら、夜空を見上げるのでもプラネタリウムに行くのでもなく、たまには石を観察してみましょう。 仲良く並ぶ双子の星に、尾を引く彗星。そして今にもスーパーノヴァを起こさんばかりの巨星。 これまで目にしたことのない未知の星空がそこに広がっているのかもしれません。
鉱物標本 3 2019年 ロシアテッツァライト
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アゲート・ダイナソーボーン/瑪瑙化した恐竜骨
ジュラ紀後期、太古のユタを闊歩していた恐竜が化石となり、アゲート化したものです。 これはその骨片を磨き上げたものであるため、恐竜の名前はおろか、どの部位の骨なのかも分かっていません。 ユタ州産と聞いてまず思い浮かべたのがユタラプトルでしたが、果たして真相やいかに。 とは言えこの海綿のような多孔質構造は紛れもなく骨そのものです。 巨体を支える頑丈な器官なだけあって、化石となっても綺麗に残るものなのですね。 ひとつひとつの空洞がすっかりメノウで満たされており、光に透かすとなんとも不思議な世界が浮かび上がります。 一度小さくなって、この中を泳いで探検してみたいものです。
化石 鉱物標本 2015年 ユタ州テッツァライト
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フェロアキシナイト/鉄斧石
ホウケイ酸カルシウムに鉄やアルミニウムを主成分とする鉱物。 多色性や圧電性・焦電性をもつ鉱物ですが、この子の特徴はなんといっても結晶の形にあるでしょう。 研ぎ澄まされたような薄い結晶は、まさしく「斧」。アキシナイトという名前もこのような外観に由来しています。 良質で透明なものは当然ファセットも映えることから、カッティングが施されコレクター向けとして流通します。 とは言えせっかくの「斧」石なのですから、形の良いものであればなるべく研磨せず、原石そのままの姿で楽しみたいものです。 鋭角で攻撃的な形状を持ちながら、ガラスのような透明感が加わったことでどことなく繊細な印象。 アキシナイトはご覧のとおり、基本的に地味色なため決して煌びやかではありません。 しかしクリアスモークのシックな装いに、白熱灯で浮かび上がるレディッシュな貌など、魅力的に映る要素はたくさん備わっています。知れば知るほど、見れば見るほど嵌り込んで行ってしまう不思議な子なのです。
宝石 鉱物標本 6.5~7 2012年テッツァライト
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タンザナイト/灰簾石
水酸化ケイ酸カルシウム-アルミニウムを主成分とする鉱物。 1967年、タンザニアのメレラニ鉱山で発見された比較的歴史の浅い宝石です。 - そして時は流れ2018年。 日本では長らく商品名として扱われていた『タンザナイト』が、ようやく正式な宝石名として 認定されたことが宝石鑑別団体協議会によって明かされました。 名峰キリマンジャロを臨む地で発見されたこの石は、かの有名なティファニー社に見出され宝石界に躍り出ました。 灰簾石の中でも宝石質の変種であり「夜へ移りゆくキリマンジャロの空」と称される美しい青紫色が特徴です。 この宝石には「多色性」という、光の透過する方向により色が異なって見える性質が備わっています。 そのため、観察する角度によって青が強くなったり紫が深まったり・・・といった変化を見ることができるのです。 また驚異的ではないながら、光源の違いによって色調が変化することも知られています。 このような光学特性からタンザナイトの青紫色はウィットに富んだものとなり、キリマンジャロの空と形容されるに相応しい神秘性が宿るのです。 こちらのタンザナイトは将棋の駒のような結晶に青紫色と黄色が閉じ込められた二色構成。 白熱灯の暖かい光が透過することで鮮やかなパステル調となり、花畑のようなコントラストを目にすることができます。 結晶先端に現れるピンクの夕日もまた見所のひとつであります。
宝石 鉱物標本 6~7 2016年テッツァライト
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アレクサンドライト・キャッツアイ/金緑石
酸化ベリリウム-アルミニウムを主成分とする鉱物。 「金緑石(クリソベリル)」という鉱物の変種であり、カラーチェンジ効果とシャトヤンシー(猫目効果)が二重発現した光学特性の塊たる宝石です。 この石の目玉である色彩変化は、アルミニウムの一部と置換されたクロムによる演出。 クロムが不純物として含まれることにより、クリソベリルには『黄色スペクトルの吸収効果』と『短波長(青~緑)と長波長(赤~橙)の光を均等に反射する性質』が備わります。 そのため日光の他、蛍光灯といった寒色成分の強い光では青緑色に染まり、逆に火明りや白熱灯といった暖色成分の多い光では赤紫色を帯びるのです。 彼らのカラーチェンジも本当に見事なもので、その鮮やかさには感嘆するばかり。 極めつけに現れるシャープな虹彩が炯々として猫好きの心を射止めにかかるかのようです。 #クリソベリル #キャッツアイ
宝石 鉱物標本 8.5 2018年テッツァライト
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ブラッドショット・アイオライト/菫青石
含鉄ケイ酸アルミニウム-マグネシウムを主成分とする鉱物。 知名度はそれほど高くありませんがこの「菫青石(きんせいせき)」も青紫色の美しい鉱物で、宝石名「アイオライト」として流通しています。 上質なものはブルーサファイアのように清々しく、別名「ウォーターサファイア」とさえ称されるほどです。 しかしこちらのように「鱗鉄鉱(レピドクロサイト)」の微細結晶を内包すると様相が一転。 鉄鉱たちの透過光によるものか、充血したように紅く染まってしまうのです。 ブラッドショットなだけに闇堕ちしたような色調も相まってどことなくヴァンパイア的な雰囲気でもあります。 絶妙なダークっぽさが厨二心を刺激する魅了の魔石です。
宝石 鉱物標本 7~7.5 2018年テッツァライト
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ルーベライト/リチア電気石
水酸化ホウケイ酸ナトリウム-リチウム-アルミニウムを主成分とする鉱物。 圧力と熱を電気に変換する性質を持つ天然の帯電体です。 カラーバリエーションに富むリチア電気石のうち、紅~ピンク系統のものが『ルーベライト』と呼ばれます。 ラテン語で赤を意味する“ruber”が語源なのはルビーと一緒ですが、彼方がクロム発色なのに対し此方はマンガンによる発色です。 甘酸っぱいクランベリー色の華やかな美結晶です。
宝石 鉱物標本 7~7.5 2007年テッツァライト
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ヴェルデライト/リチア電気石
水酸化ホウケイ酸ナトリウム-リチウム-アルミニウムを主成分とする鉱物。 和名が示す通り、微弱な圧電性・焦電性を示す石として知られています。 リチア電気石のカラーバリエーションのうち、不純物として含まれた鉄分に由来する個体がこちらのグリーントルマリン。 またの名を「ヴェルデライト」と言います。 非常に小ぶりな結晶ですが、その分クラックも最小限に抑えられているので透明度が高く保たれています。
宝石 鉱物標本 7~7.5 2006年テッツァライト
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カンテラ・ファイアオパール/火蛋白石
水和酸化ケイ素を主成分とする鉱物。 その名の通り「火」を思わせる暖色系の地色のものがこう呼ばれます。 夕焼け空のように燃えるオレンジが美しく、ノスタルジックな情景がこのひとつに凝縮されたかのよう。 これだけでも心が揺さぶられるというのに、追い打ちと言わんばかりに差し込む虹が卑怯、ほんとに卑怯です。 オパールらしい遊色効果も確認でき、赤~橙~黄~緑~青へとグラデーションのように移り変わっているのがよくわかります。 心が涙するような景色は、石の中にも広がっているのですね。 思い出の風景があってもなくても、なぜだか懐かしさを感じさせてくれる不思議なオパールです。 #オパール
宝石 鉱物標本 5.5~6.5 2014年テッツァライト
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アルマンダイン&ショール/ざくろ石と電気石の共生
水酸化ホウケイ酸ナトリウム-アルミニウム-鉄を主成分とするトルマリン『ショール(鉄電気石)』と ケイ酸アルミニウム-鉄を主成分とするガーネット『アルマンダイン(鉄礬柘榴石)』の共生結晶です。 明らかにショールの方がメインなのですが、アルマンダインの存在感が食わんとしているようです。 血豆を思わせる赤々とした結晶に目を奪われがちになりますが、濡烏のように艶めくショールもまた魅力的であります。 端部に見られる謎の水色鉱物が、涼やかなワンポイントを飾っています。
宝石 鉱物標本 アルマンダイン:7.5 ショール:7.5テッツァライト
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アクアマリン&ショール/緑柱石と電気石の共生
ケイ酸ベリリウム-アルミニウムを主成分とする鉱物。 淡い浅瀬の水色から外洋のごとく深い碧色まで、大海原そのもののように幅広い色相を見せるこの石は、航海の守護石として古い時代の船乗りの間で用いられました。 あのエメラルドも属しているベリル群のうち、二価鉄イオンにより水色を呈したものが『アクアマリン』と呼ばれます。 この透明感溢れる海色が、見る者の心を海中へトリップさせるかのようです。 根本にあたる部分に密集している黒い結晶はショール(鉄電気石)という鉱物です。 トルマリンらしい三方晶系の結晶が見られる中、主人であるアクアマリンと同じ六角柱の姿も見られます。 これがまたゴツゴツした岩場みたいで、じーっと眺めていると磯の風景に見えてくるのが面白いです。
宝石 鉱物標本 7.5~8 2015年テッツァライト
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ルビー&ゾイサイト/鋼玉と灰簾石の共生
酸化アルミニウムを主成分とする鉱物。 コランダムの中でも1%程のクロムを含有し、赤色を呈したものだけがルビーと認められます。 濃緑色のゾイサイトから覗く断口がなんとも情熱的。 傷口から滲む血のようにも地表に湧き出る溶岩のようにも見えるそれは、ブラックライトや白熱灯に照らされることで一層赤みを増します。
宝石 鉱物標本 9 2004年テッツァライト
