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シャンパントパーズ/黄玉
《当館の2018年投稿アイテムいいね!No.1》 酒黄色なものが広く知られていることから和名で『黄玉』とも称される11月の誕生石です。 現存する所持品の中では最古参の石ですが、現在においても一線級の存在感を放ち続けている私のエース。 石っ子になり初めて手にした宝石質標本がこの石で、現在の方向性を決めたと言っても過言ではない唯一無二の存在であります。 柱面にはアウターファントム的な発達痕が刻まれており、彼の成長過程が一筋縄では行かぬものであったことを伺わせます。 また結晶の形も個性的で、上から見るとハート形にも見えるという他のトパーズには見られない要素も備わっています。 ひとくちにトパーズと言ってもこの鉱物には2つのタイプがあり、副次的に含まれている成分の比率によって次のように区別されます。 ひとつは水酸基が優勢な「OHタイプ」。 もうひとつはフッ素が支配的な「Fタイプ」。 この両者のうち希少とされるのは前者の方で、所謂『インペリアルトパーズ』が属しているのもそのタイプです。 屈折光がより煌びやかで色も濃く、また紫外線による退色にも強いという特徴があります。 こちらは恐らくフッ素タイプの個体ですが輝くシャンパンゴールドがとても美しく、入手して15年以上経過した今でも色褪せは見られません。 これから何十年と先、私がどんなに年を重ねてもこのトパーズには変わらない姿でいて欲しいものです。 #トパーズ
宝石 鉱物標本 8 2004年テッツァライト
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ルビー&ゾイサイト/鋼玉と灰簾石の共生
酸化アルミニウムを主成分とする鉱物。 コランダムの中でも1%程のクロムを含有し、赤色を呈したものだけがルビーと認められます。 濃緑色のゾイサイトから覗く断口がなんとも情熱的。 傷口から滲む血のようにも地表に湧き出る溶岩のようにも見えるそれは、ブラックライトや白熱灯に照らされることで一層赤みを増します。
宝石 鉱物標本 9 2004年テッツァライト
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赤瀬の普通蛋白石/コモンオパール
自然保護条例施行前の採集品です。 一部が玉髄化しているほか、ぽつりぽつりとしたクリストバル石らしき球状鉱物も確認できます。 オパールも玉髄もクリストバル石も、実はみな水晶と同じ成分で構成された鉱物なので、この標本はまさく二酸化ケイ素の三種盛り状態。 和名である「蛋白石」は、日本産オパールにありがちなゆで卵の白身のような質感に因むそうですが、これを見ると的を得たネーミングだと思います。 #オパール
鉱物標本 5.5~6.5 2017年 SiO₂・nH₂Oテッツァライト
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ショッキングピンク・カルサイト/方解石
炭酸カルシウムを主成分とする鉱物。 平時の姿は薄ピンク。 しかし紫外線の下では2通りの蛍光反応を示すトリプルチェンジャーな方解石です。 方解石といえばこの斜めに歪んだ箱のような形が有名ですが、この形は『劈開』という性質から生まれたものです。 これは原子間の結合に脆弱な箇所が存在するために起こる現象で、その結びつきは衝撃が加わると簡単に切断されてしまいます。 さらに原子は規則正しく配列・積層しているため、結合の弱い箇所が特定の方向に集中しやすくなります。 その結果、割れ口は不自然なほど平坦となり、その欠片は人為的に切り出したかのような形を成すのです。 さて、この石の見所は何といっても光るところです。 マンガンに起因するのか、ブラックライトの長波ではピンク色に。(1、3枚目) 短波では青白い蛍光を。(4枚目) そして短波に限り照射を止めた後も数秒間だけ青い燐光を放ち続けます。(5枚目) 劇的な変化で目を楽しませてくれるミネラルなイルミネーションです。
鉱物標本 3 2006年 メキシコテッツァライト
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アクアマリン&ショール/緑柱石と電気石の共生
ケイ酸ベリリウム-アルミニウムを主成分とする鉱物。 淡い浅瀬の水色から外洋のごとく深い碧色まで、大海原そのもののように幅広い色相を見せるこの石は、航海の守護石として古い時代の船乗りの間で用いられました。 あのエメラルドも属しているベリル群のうち、二価鉄イオンにより水色を呈したものが『アクアマリン』と呼ばれます。 この透明感溢れる海色が、見る者の心を海中へトリップさせるかのようです。 根本にあたる部分に密集している黒い結晶はショール(鉄電気石)という鉱物です。 トルマリンらしい三方晶系の結晶が見られる中、主人であるアクアマリンと同じ六角柱の姿も見られます。 これがまたゴツゴツした岩場みたいで、じーっと眺めていると磯の風景に見えてくるのが面白いです。
宝石 鉱物標本 7.5~8 2015年テッツァライト
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ペトロレウムクォーツ/石油入り水晶
水晶(石英/クォーツ)といえば誰もが知る鉱物の代表格で、今日までに多種多様な種類が発見されています。 色によって宝石名が変わるだけでなく、内包する不純物によって呼び名が変わることもバリエーションが豊富となった一因です。 一例としてこちらの両剣水晶。 結晶化の過程で内部に鉱物油を包有したことから『石油入り水晶』などと呼ばれています。 この鮮黄色の液体はハイドロカーボンを主成分とするものとされており、紫外線を照射することで青白く幻想的な蛍光を放つのでした。 さらに液中には炭化物らしき固形物と天然ガスと思われる気泡が浮かんでおり、結晶を傾けるとコロリと動く姿が確認できます。 太古の遺物が外界から隔絶され変容することなく保存され続けた様はコールドスリープさながらであります。
宝石 鉱物標本 7 2014年テッツァライト
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レッドスピネル/苦土尖晶石
ミャンマーに所在する世界的な宝石産地『モゴック』で産出したレッドスピネルの八面体結晶です。 彼らスピネルの誇る真紅色も見事なもので、しばしばルビーと誤認され用いられることがありました。 イギリス王室が所有する大英帝国王冠。 その正面中央に座す"黒太子のルビー"の正体が、実はスピネルだったというエピソードが最たる例です。 しかし結晶の発達した原石であれば、ルビーとの結晶系の違いから八面体を成すため判別はそこまで難しくありません。 何らかの鉱物でしょうか。 抉れたような結晶面には黒い粒状物が埋め込まれています。 赤いボディの中でただひとつ、太陽の黒点のようでもあります。 数あるスピネルの中から彼を選んだのは、この包有物の存在感に惹かれたからでもありました。 人によっては単なる不純物でしかないかもしれませんが、自分にとっては魅力的な艶ボクロなのです。
宝石 鉱物標本 7.5~8 2018年テッツァライト
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エクリプスマーブル/多結晶質方解石
ジャワ島で産出したエクリプスマーブルのオーバルカボションです。 エクリプス "ジャスパー" の名でも知られる石ですが、その実態は多結晶質の方解石をベースとする混合体。 宇宙に浮かぶ天体のような模様が特徴で、このような外観から2009年に観測された皆既日食の際、海外のパワーストーン界隈で大いに注目されたのだそうです。 個人的には日食というより月のイメージが強かったため、こちらのように真ん丸お月さまに見える石を探し当てました。 闇色の黒地に黄斑がぼんやりと映る様は、朧月夜の空を描き写したかのよう。 さらに月輪のようなのグラデーションが、外縁部から徐々に蝕まれつつある様子を表現しているようで何とも雅であります。 ちなみにこの "月" の正体は、ヒ素の硫化鉱物である『オーピメント(石黄)』が浸み込んだものであるとされています。 月は常に人々に寄り添い、慈しみの光で危険な夜を照らし私たちを守ってくれます。 しかしその一方で精神をかき乱し、人々を惑わせるという怪しげな伝承があるのもまた事実。 そういった狂気的な一面がこの毒物によって鮮やかに体現されているようで、エクリプスという石を単に神秘的なだけでは終わらせないアクセントになっているのではないかと思います。
宝石 鉱物標本 3 2015年テッツァライト
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ボルダーオパール/母岩付き蛋白石
2005~2007年頃でしょうか。 『世界の宝石・鉱物コレクションSTONE WORLD』という商品が、〇〇発掘キットなどでお馴染みのノルコーポレーションより発売されていました。 〔参考:画像6枚目の後列中央( "いのちのたび博物館メールマガジン第18号" より引用)〕 当時のお小遣いでも買えるほど手頃な価格でしたし、何より鉱物専門店が遠方にしかない自分にとっては貴重な入手源でした。 こちらの商品、なんと鉱物科学研究所の監修であります。 そのため当時から石に縁のある方であれば記憶に残っているかもしれません。 そうでなくても大手の総合スーパーでも取り扱われていたほどの物なので "鉱物は集めていないけど気になったから買ってみた" という方もいるのでしょう。 ラインナップは全39種類。 ダイヤモンドやルビーサファイアを始めとするメジャーな宝石から菫青石や苦灰石といったちょっとマイナーな鉱物まで幅広く収録されており、その中から引き当てたのがこのオパールでした。 同封のラベルにはただ鉱物名が記載されているのみでしたので産地が不明なのはそのためです。 とはいえ焼き菓子を彷彿とさせる褐色の母岩が特徴的であることから、オーストラリア産の『ボルダーオパール』なのではないかと推測しています。 また水に濡らすことで局所的ながらオールカラーの遊色が現れます。 写真に捉えることも儘ならないほど些末なものですが、初めて肉眼観察する魅惑の揺らめきに当時の私は深く魅入られてしまったのでした。 オパールという鉱物に興味を抱くきっかけとなった、実に印象的な出会いでした。 #オパール
宝石 鉱物標本 5.5~6.5 2007年テッツァライト
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強蛍光ハイアライトオパール/玉滴石
和名を『玉滴石』といい、その名の通り水滴が固まったかのような瑞々しいルックスが特徴的。 特定の結晶系を持たないガラス状(非晶質)であり、その透明な見た目から「ミュラーズガラス」とも渾名される鉱物であります。 不純物として含まれる微量なウランによりほんのりと黄色がかっているため、さながら天然のウランガラスです。 さらに外線を照射することでネオン管の如く強烈な蛍光を発します。 妖しくも美しい光で見る者を魅了して止まない、ウランは偉大な演出家なのかもしれません。 #オパール
宝石 鉱物標本 5.5~6.5 2014年/2018年テッツァライト
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アゲートシェル/瑪瑙化した巻貝
始新世後期の巻貝化石がシリカと置換されアゲート化したものです。 光にかざすと半透明で、シリカが内部まで浸透していることがよくわかります。 コーヒーシュガーを思わせる香ばしいブラウンがなんとも美味しそうです。 規則正しく生え揃ったトゲは生存率を高めるための防衛策なのでしょうか。 精いっぱいの威勢を張っているようで微笑ましく思います。
化石 鉱物標本 7 2013年テッツァライト
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パイライト・アンモナイト/黄鉄鉱化したアンモナイト
ジュラ紀を生きたアンモナイトの化石が硫化鉄と置換され、パイライト化したものです。 幾つもの隔壁で仕切られた気室には細かなパイライト結晶が発達し、星々のような煌きを見せています。 研磨面が重厚な金属光沢を放つ一方で、裏面には虹色の真珠層が残っており、研磨せずとも充分目を楽しませてくれます。 見る者をどんどん引き込む、魅力的な渦巻です。
化石 鉱物標本 2011年 ロシアテッツァライト
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フェアリーオパール/珪乳石(メニライト)
パリ近郊のメニルモンタンで産出したことに因んで命名された鉱物です。 歴としたオパールの一種で、水中で堆積した珪藻の死骸を起源として形成されたとされます。 決して卵ではありません。 その証拠に、卵には見られない突起がぽっこりと。 しかしこのタンコブが余計に鉱物らしさを損ねているような気がしなくもありません。 このような鉱物離れした外観は、まさしく妖精の意匠。 #オパール
鉱物標本 5.5~6.5 2015年 SiO₂・nH₂Oテッツァライト
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モルダバイト/天然ガラス
隕石衝突による凄まじいエネルギーが生み出したインパクトガラス『テクタイト』の一種です。 約1500万年前、とある隕石が現ドイツ・バイエルン州へと飛来し巨大なクレーターを穿ちました。 膨大な熱量によって一帯の砂岩は融解。 そして吹き飛ばされる過程で急冷され、ガラス状物質へと変異しました。 こうして生成された天然ガラスの大部分は東方のチェコ・ボヘミア地方へと飛散し、緑色テクタイト『モルダウ石』として発見されるに至ります。 その名称は“Týn nad Vltavou”すなわちヴルタヴァ川(モルダウ川)流域の町に由来します。 テクタイトは他にも種類があるのですが、その中でもとりわけ美しいのがこのモルダバイトではないでしょうか。 ゆったりとした緑色が印象的で、森林浴でもしているような安らぎを与えてくれます。 テクタイトはガラス質なので、厳密には鉱物ではありません。 しかしその成因が自然的かつ神秘的な現象であることとその美しい外観から、今日では宝石・パワーストーンとして市民権を得ているのです。 こちらのモルダバイトはなんとも不思議な形をしています。 一体どのような飛び散り方をしたら、こんなゴジラの尻尾みたいになるのでしょうか。 ともかく瞬間的に生じた極限環境が壮絶であったことは想像に難しくありません。
宝石 鉱物標本 5〜6 2015年テッツァライト
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アルマンダイン&ショール/ざくろ石と電気石の共生
水酸化ホウケイ酸ナトリウム-アルミニウム-鉄を主成分とするトルマリン『ショール(鉄電気石)』と ケイ酸アルミニウム-鉄を主成分とするガーネット『アルマンダイン(鉄礬柘榴石)』の共生結晶です。 明らかにショールの方がメインなのですが、アルマンダインの存在感が食わんとしているようです。 血豆を思わせる赤々とした結晶に目を奪われがちになりますが、濡烏のように艶めくショールもまた魅力的であります。 端部に見られる謎の水色鉱物が、涼やかなワンポイントを飾っています。
宝石 鉱物標本 アルマンダイン:7.5 ショール:7.5テッツァライト
