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ブラックオパールの惑星系/宇宙ガラス
宇宙空間や惑星をイメージして製作されたガラス工芸品。 通称『宇宙ガラス』。 ハッブル宇宙望遠鏡の捉えた銀河系を目にしているような、壮大かつ神秘的な光景が凝縮されたアクセサリーです。 ベースとなる素材には耐熱性に優れるホウケイ酸ガラスを使用。 内部には合成オパールのビーズが浮かんでおり、大小の異なる二つの石が寄り添うように配置されている様子はまさしく惑星と衛星であります。 また独特な模様や色合いは、気化させた純金や純銀をガラスに吹き付ける「フューミング」という技法により表現しているのだそうです。 ひとつひとつが手作りという性質上まったく同じものは存在し得ず、自分好みの作品に出会うことは容易ではないと考えます。 しかしそれだけあって、長い長い漂流の末に自分だけの宇宙に辿り着いたときの感動は一入であります。 以下の動画はPlusAlphaさんによる制作風景になります。 https://www.youtube.com/watch?v=Wg0KG0fVOX8
ガラス製品 宝石 鉱物アイテム 鉱物標本テッツァライト
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ボーノナイト/車骨鉱
ガチャガチャとした外観が特徴的な車骨鉱の結晶です。 国内においては埼玉・秩父鉱山のスカルン鉱床、石川・倉谷鉱山および三重・紀州鉱山の熱水鉱床が著名な産地でありました。 希少金属であるアンチモンを含有する鉱物ですが、この石の特筆点はその形状にあります。 重厚感のあるスチールグレーの光沢。 ほどよく厚みのある円形平板の結晶。 その外周部に刻まれた、繰り返し双晶によるギザギザの凹凸。 この様相はまさしく平歯車のそれであり、和名もずばり『車骨鉱(しゃこつこう)』であります。 「車骨」という単語については常用外かあるいは造語なのか、いくら辞典を調べてもそれらしい意味は載っていませんでした。 しかし各種図鑑を読んでみると “歯車のような形状をしているため車骨鉱と命名された” という旨の記載がなされていることから、歯車のことを指している言葉なのかもしれません。 一方で、結晶の凹凸が放射状に並んだ様子を車輪の骨、すなわち「スポーク」に見立てたという説もあります。 ちなみに歯車型に見えるのは世界共通のようで、海外においても “cogwheel” という渾名で呼ばれているのだそうです。 この車骨鉱。 私事ですが、数ある硫化鉱物の中でも特に好きな石であります。 過去に機械分野を学んでいたもので、代表的な機素である歯車の姿をしているとなると妙に親しみを感じてしまうのでございます。
鉱物標本 2.5~3 2018年 CuPbSbS₃テッツァライト
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マルチカラーベリル/緑柱石
不純物として含まれるマンガン(或いはセシウムやリチウム)により、ピンクに色づいたベリルが『モルガナイト』と呼ばれます。 クロム由来の緑色ベリル「エメラルド」や、鉄由来の水色ベリル「アクアマリン」らとは色違いの同種にあたる鉱物です。 一方で、何物にも染められていない純潔な個体は『ゴッシェナイト』。 実際には完全な無垢というわけではなく発色に至らない程度の不純物を含んでおり、特にセシウムを内に秘めていることが多いとのこと。 しかし地質由来の微量元素の影響を受けやすく何らかの色味を帯びて産出することが多いベリルにとって、無色透明な姿はある意味珍しいことでありましょう。 こちらはそのモルガナイトとゴッシェナイトが1:1となるように切り出したものであると思われます。 丁度半分が淡く桜色に染まっており、何とも心温まる色相を織りなしています。 彼らの内部を注意深く観察した結果、水溶液と気泡からなる「二相インクルージョン」が無数に閉じ込められていることが分かりました。 石を傾けることで気泡が動く様子がしっかりと確認できます。
宝石 鉱物標本 7.5~8 2018年テッツァライト
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パープルターフェアイト/ターフェ石
紫色の美しい石ですが、彼の特筆すべき点は発見された経緯にあるでしょう。 1945年、アイルランドの宝石愛好家であったリチャード・ターフェ伯爵がスピネルのルースを観察していたところ特異な点を発見。 淡紫色のスピネルと思われていたその石が、立方晶系のスピネルには在り得ない「複屈折」を示していたことに伯爵は違和感を覚えたのです。 その後の詳細な測定と専門機関の検査により新種であることが判明。 発見者に因み、その鉱物は『ターフェアイト』と命名されました。 このようにカッティング石から新種が発見されるなど前代未聞であります。 そのようなエピソードから興味を持ったこともあり、マイナー石ながらも心惹かれるものがあったのでした。 とは言うもののターフェアイトの示す複屈折率など微々たる数値で、とてもではありませんが肉眼判別できるほど劇的なものではありません。 そのような中で微々たる光学的差異に着目した観察眼の鋭さには、ただただ敬服するばかりであります。 ターフェ伯爵が発見者でなければこの石はどのような名前になっていたのか・・・あるいは新種と認識されずにスピネルと混同され続けていたかもしれません。 探求の眼差しが、ある一石の運命を変えたことは間違いないでしょう。
宝石 鉱物標本 8~8.5 2018年テッツァライト
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バンブーカルセドニー/玉髄
植物の茎を軸に発達したとみられるユニークなカルセドニーです。 バンブーとありますが鍾乳石状に発達した様子がそのように見えるだけであって、実際に竹の化石がカルセドニー化したわけではないようです。 しかし植物を起源としていることは確かなようで、中心部の空洞にその名残を見ることができます。 表面のモコモコに乳白色も相まってとても柔和な印象です。
宝石 鉱物標本 7 2018年テッツァライト
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アレクサンドライト・キャッツアイ/金緑石
酸化ベリリウム-アルミニウムを主成分とする鉱物。 「金緑石(クリソベリル)」という鉱物の変種であり、カラーチェンジ効果とシャトヤンシー(猫目効果)が二重発現した光学特性の塊たる宝石です。 この石の目玉である色彩変化は、アルミニウムの一部と置換されたクロムによる演出。 クロムが不純物として含まれることにより、クリソベリルには『黄色スペクトルの吸収効果』と『短波長(青~緑)と長波長(赤~橙)の光を均等に反射する性質』が備わります。 そのため日光の他、蛍光灯といった寒色成分の強い光では青緑色に染まり、逆に火明りや白熱灯といった暖色成分の多い光では赤紫色を帯びるのです。 彼らのカラーチェンジも本当に見事なもので、その鮮やかさには感嘆するばかり。 極めつけに現れるシャープな虹彩が炯々として猫好きの心を射止めにかかるかのようです。 #クリソベリル #キャッツアイ
宝石 鉱物標本 8.5 2018年テッツァライト
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フォスフォリッククォーツ(仮称)/燐入り水晶
内部に蛍光するリン(P)と石油を内包しているとされる未知の水晶です。 そのまま観察したのではリンの姿を捉えることができないため、パッと見ただのオイル入り水晶にしか見えません。 しかし紫外線を照射してみると、なにもないはずの箇所も蛍光を示すため、確かに石油ではない「目に見えない何か」が閉じ込められていることが分かります。 これは蛍光色の違いからも一目瞭然であります。 リンが内部に入り込むとは非常に興味深いのですが、まだ出回って間もないのか情報がまったくありません。 現時点で判明しているのはマダガスカルが産地であること。 そして分析の結果、リン以外にも複数の成分のインクルージョンが確認された、ということくらいです。 これを購入したお店の方も「珍しいけど流通が少なすぎて、たいして話題にもならずに終わるかもしれない」と仰っていたのが印象的でした。 青白い燐火が幻想的で美しく、存在そのものも含めて面妖な水晶です。
宝石 鉱物標本 7 2018年テッツァライト
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ブラッドショット・アイオライト/菫青石
含鉄ケイ酸アルミニウム-マグネシウムを主成分とする鉱物。 知名度はそれほど高くありませんがこの「菫青石(きんせいせき)」も青紫色の美しい鉱物で、宝石名「アイオライト」として流通しています。 上質なものはブルーサファイアのように清々しく、別名「ウォーターサファイア」とさえ称されるほどです。 しかしこちらのように「鱗鉄鉱(レピドクロサイト)」の微細結晶を内包すると様相が一転。 鉄鉱たちの透過光によるものか、充血したように紅く染まってしまうのです。 ブラッドショットなだけに闇堕ちしたような色調も相まってどことなくヴァンパイア的な雰囲気でもあります。 絶妙なダークっぽさが厨二心を刺激する魅了の魔石です。
宝石 鉱物標本 7~7.5 2018年テッツァライト
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ユーパーライト/蛍光性方ソーダ石含有閃長岩クラスト
2017年にスペリオル湖の周辺で発見された新種石です。 アッパー半島に居住する人々を “ユーパーズ”(Upersが転じてYoo-pers?)と呼ぶことに因み命名されました。 これを発見したのは現地に住む鉱物商のEric Rintamaki氏。 氏が湖畔を探索していたところ、紫外線ライトに強く反応する不思議な石を発見。 本種が認知されるに至りました。 日本では2018年から広く知られるようになったように思います。 一見するとどこにでも転がっている石ころですがブラックライトを照射すると一転、赤熱したように煌々と発光するのです。 このショッキングな変化が話題を呼び、新鉱物として大いに注目されました。 実はこのオレンジ色の部分は「ソーダライト(方ソーダ石)」という既存の鉱物です。 従ってその実態は『ソーダライトを含有した閃長岩』であるため、完全な新種ではないのです。 しかし何の変哲もない石が煉獄のごとく輝く様は、新種認定されるのに充分すぎるインパクトだったことでしょう。 https://youtu.be/xhtIX8rF-MM?t=15
鉱物標本 2018年 ミシガン州テッツァライト
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プラチナ&ゴールド/自然白金と自然金の共生
銀白光沢が眩いプラチナの元素鉱物。 自然金と共生が見られる立体結晶です。 他の元素と化合することなく産出した天然のプラチナ…というのは飽くまでも理想の状態。 実際にはロジウムやパラジウムといった同じ白金族元素を含有しているとされます。 また不純物として鉄を含むため弱磁性を帯びることも多く、その場合はネオジム磁石といった強力な磁石の下に吸い寄せられる様子が確認できます。 プラチナもまた高い腐食耐性を備えていることから、宝飾用の貴金属として人々を虜にしてきました。 その化学的な安定性に裏打ちされた輝きはゴールドと同等かそれ以上。 金を凌駕する希少価値を持ちながらも光沢は銀のように上品であるため、ゴールドよりもプラチナのほうが好きという方も多いのではないでしょうか。 他方でこのプラチナという金属には、有害物質を無害化するという強力な触媒作用が備わっています。 この性質に着目し、例えば自動車分野においてはエンジンから発生する排ガスを低減するための「触媒コンバータ」に利用されており、浄化装置として組み込まれ環境負荷の低減に一役買っているのです。 私たち人類にとってかけがえのない友人とも呼べる白金。 その美しい外観に違わず、空気までをも綺麗にしてくれるという非常にありがたい存在なのであります。
鉱物標本 白金:4~4.5、金:2.5~3 2018年 Pt & Auテッツァライト
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シルバー&コッパー/自然銀と自然銅の共生
柔らかく展延性に富む、銀と銅の元素鉱物。 未精錬でありながら既に高純度。 白銀色のAg部分と赤銅色のCu部分、どちらもほぼ単体元素で構成されています。 同じ第11族元素なれど、この二種が共生した姿はそうお目にかかれません。 シルバーもコッパーも希少性で言えばゴールドには敵わないのですが、彼ら場合はどうでしょう。 なにせ銀と銅のハーフです。 単体の金とはまた違った希少価値を秘めているのではないでしょうか。
鉱物標本 2.5~3 2018年 Ag & Cuテッツァライト
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ゴールド&プラチナ/自然金と自然白金の共生
柔らかく展延性に富む金の元素鉱物。 他の元素と化合することなく産出した、言わば天然の純金です。 とは言うものこれは飽くまでも理想の話であって、実際には銀や銅といった不純物が含まれているとされます。 特にAgとの合金状態にあるものはエレクトラムと呼ばれ、紀元前においてはこれらを加工したものが金貨の一種として利用されていました。 金は高い腐食耐性を持つため酸素程度に侵されることはありません。 そのため輝きが褪せることはなく、高貴な存在として人々を魅了し続けてきました。 前述の貨幣材料としてははもちろん、絢爛な装飾品や、豪華さを演出するための金箔。 果ては金メダルといった "栄光の象徴" として用いられて来たこともその表れではないでしょうか。 こちらの標本は何の因果か、自然金が自然プラチナの表面を覆い尽くした状態で共生していました。 当然ながらこれはすべて天然の産物なのですが、この不思議な有り様はさながら人工的な蒸着を施したかのよう。 従って外観こそ自然金のそれですが、この角ばった形状はプラチナの貫入結晶のものなのであります。 画像では分かり難いですがその証拠に、ところどころ金のコーティングが及んでいない箇所を観察すると銀白色の下地が顔を覗かせているのでした。
宝石 鉱物標本 金:2.5~3、白金:4~4.5 2018年テッツァライト
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アドマイヤ隕石/石鉄隕石
ようこそ地球へ! 遠い昔、遥か宇宙の彼方からの来訪者。 小惑星が何らかの要因で破壊され、マントルやコアの一部だったものが宇宙空間へと投げ出されたことが彼らの長旅の始まりとされます。 こちらは1881年にカンザス州で発見された石鉄隕石で、名を『アドマイヤ隕石』といいます。 鉄-ニッケルを主成分とする合金の中にオリーブ色の宝石「パラサイティック・ペリドット」が散りばめられています。 メタリックなボディに透明なペリドットという組み合わせがどことなくエイリアンチック。 やはり隕石というものは、地球産の鉱物たちとは一風変わった風貌をしているのですね。 地球外の出自でカンザス州に飛来してきたという点が、かの有名なマン・オブ・スティールをも連想させます。
宝石 鉱物標本 隕石 2018年テッツァライト
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セイロン・ブルーサファイア/鋼玉
無垢のダイヤモンド、紅のルビー、翠のエメラルド、変彩のアレクサンドライトと並び五大宝石として尊ばれてきた貴石です。 鉱物学的にはルビーと同じ「コランダム/鋼玉」の色変種に属しています。 和名で『青玉』とも呼ばれる9月の誕生石です。 サファイアと聞いて誰もが想像するのがこの色ではないでしょうか。 主要元素であるアルミニウムの一部と置き換わった「鉄とチタンの相互作用」が生み出すイノセントなブルーです。 おまけにこちらは結晶面の照りが強く、それでいて透明度の高いことから“ガラスボディ”とも称えられる理想的な結晶です。 端から端まで徹頭徹尾、ひたすら蒼く清々しく、さながら明け空が落としたひと雫のようであります。 #サファイア
宝石 鉱物標本 9 2018年テッツァライト
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アルマンダイン&ショール/ざくろ石と電気石の共生
水酸化ホウケイ酸ナトリウム-アルミニウム-鉄を主成分とするトルマリン『ショール(鉄電気石)』と ケイ酸アルミニウム-鉄を主成分とするガーネット『アルマンダイン(鉄礬柘榴石)』の共生結晶です。 明らかにショールの方がメインなのですが、アルマンダインの存在感が食わんとしているようです。 血豆を思わせる赤々とした結晶に目を奪われがちになりますが、濡烏のように艶めくショールもまた魅力的であります。 端部に見られる謎の水色鉱物が、涼やかなワンポイントを飾っています。
宝石 鉱物標本 アルマンダイン:7.5 ショール:7.5テッツァライト
