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バイオレットコモンオパール/蛋白石
厚切りスライスされたメキシコ産のパープルオパール原石です。 母岩に包まれたノジュール状で産出することが多く、この標本もその名残としてアイボリー色の外殻を纏ったままとなっています。 これもまた歴としたオパールの一種で、虹の揺らめきは現れないものの鮮やかなスミレ色が特徴的です。 別名「モラドオパール」とも呼ばれますが、moradoは現地の公用語であるスペイン語で "紫" を意味しています。 この紫色の部分についてですが、実は短波のブラックライトを照射することによりアップルグリーンの蛍光を放ちます。 オパールの醍醐味たる遊色効果は観察できませんが、こうした奇抜な色変化で意表を突いてくるところはオパールらしいと思います。 やはりオパールは多種多様で面白い。 改めてそう感じさせる一石でありました。 #オパール
宝石 鉱物標本 5.5~6.5 2015年テッツァライト
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立山の魚卵状珪石/シリケイトウーライト
温泉水の中で濃縮されたケイ素の凝固物。 このガラスビーズのような球体もまた歴とした鉱物です。 それどころか驚くべきことに、なんとこんな姿でもオパールの一種であるというのです。 決してお菓子の乾燥剤をばらしたものではありません。 地質由来の自然物である証拠に、この1~2mmの小さな球体ひとつひとつの内部に砂粒が封じ込められている様子が確認できます。 これは岩石の破砕物を核としてケイ素酸が凝集したことを意味していると同時に、オパールと言う鉱物の奥深さを物語っているものでもあります。 この奇石は一体どのような環境から生まれてきたのでしょうか。 その場所は国内にありました。 飛騨山脈の一角、立山火山の爆裂火口の中に、彼らの故郷である直径30メートルほどの熱水泉“新湯”が存在します。 元々は単なる火口湖でしたが、1858年に起きた飛越地震により熱水が湧出したことで、現在のような湯煙の立ち込める温泉に変じたと伝えられています。 約70℃の地下水が滾々と湧き続けるこの池のケイ酸濃度は異様に高く、溶存するミネラル分が固形物として析出するには充分な条件が揃っていました。 このような泉質の中、浮遊する砂粒を中心にシリカが集積して大きく成長。 そして絶えることのない湧水に煽られ続けた結果、こんなにも美しい玉滴石質のオパールの生成に繋がったと推測されています。 ここもまた国内の鉱物愛好者にとっての聖地、ならぬ“聖池”なのであります。 現在では『新湯の玉滴石産地』として国の天然記念物に指定されているため、当然ながら採取不可の聖域となっています。 https://toyama-bunkaisan.jp/search/2195/ とはいえ発見された当時にそのような保護が施行されている訳もなく多くの標本が海外に持ち出されてしまい、その珍しさのためか一粒1$もの価格で取引されたとの逸話も残されています。 こちらに掲載している彼らも明治期に海を渡ったと訊いていますが、それ再び国内に戻した形になるのでいわゆる里帰り品ということになります。 海も時代も超え遠路遥々よく戻ってきてくれました。 #オパール #国産鉱物
鉱物標本 5.5~6.5 2014年 SiO₂・nH₂Oテッツァライト
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宝坂の貴蛋白石/ノーブルオパール
福島県・宝坂の『屋敷鉱山』といえば、その道の人間で知らぬ者はいないオパールの聖地。 阿賀野川の支流「鬼光頭川」の畔に位置するこの地にはとある伝説が残されており、それ基にした「宝の川」というエピソードがまんが日本昔ばなしで放送されました。 (以下データベースへリンクします) http://nihon.syoukoukai.com/modules/stories/index.php?lid=852 それはとある娘が川の中から美しい石を見つけ幸せを掴むというお話なのですが、ここに登場する石というのがまさしくオパールなのではないかと伝えられているのです。 劇中ではその美しい石を宿場へ持ち込んだところ高価で買い取られ、おかげで娘は裕福な暮らしを手に入れることができたと語られています。 もしその石が本当にオパールのことを指しているのだとすれば、宿場で高値が付いたという話も頷けます。 現代よりも煌びやかなものを目にする機会が少なかったであろう時代、それも日本の貧しい山間が舞台。 ともすれば、オパール特有の鮮やかで目まぐるしく変化する光学特性が奇特に映ったことは想像に難くありません。 このような話を幼い頃に観ていたこともあり、いつかは自分もその場所に行くことを夢に見ていたのでした。 しかし私がオパールに興味を持ち始めた矢先、2008年に鉱山が完全閉山。 何しろ採掘権を所有する企業が退いて以降、一家一個人が管理してきた小規模な鉱山のこと。 それを危険の伴う坑道掘りで操業してきたとなると致し方ありません。 その坑道も既に埋め戻されてしまったとのことでした。 幕を下ろすにはあまりに惜しすぎるこの美しさ。 真珠岩から覗く凝固体がとても瑞々しく、水に濡れ、光を透過する姿は皮を剥いたライチの果実と見紛うばかり。 その表面には極彩色が踊り狂い、色とりどりの炎が潤いの中で燃え盛っているかのようです。 このように美麗な遊色に出会える確率は低かったようで、運が良くて数十個、悪い時は数百個もの原石をかち割ってようやく一個といった調子であったと聞きます。 それだけに、見事な虹が目に飛び込んでくる喜びは筆舌に尽くし難いものであったことでしょう。 私もその感動を直に味わいたかったです。 #オパール #国産鉱物
宝石 鉱物標本 5.5~6.5 2014年テッツァライト
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クリスタルオパールキャッツアイ/貴蛋白石
真ん丸お目々に緑色の瞳光が輝くクリスタルオパールです。 遊色、蛍光、燐光、そしてシャトヤンシー… 様々な美点を併せ持つこの石は私の宝物であり、まさしく当館の "目玉" と呼べる存在であります。 オパールには変幻自在の光学特性が備わっているため個体ごとの表情は多岐に渡ります。 そのため真に自分好みの遊色パターンを持つ石を見つけることは容易ではありません。 そんな中、猫好きテッツァライトが目標としていたのが『ローリングフラッシュ』というパターンを示す石。 角度を変えることで端から端へと転がるように移り行く特殊な遊色で、これが時としてキャッツアイ状の光線となって現出することから強く焦がれていたのでした。 通常「キャッツアイ効果」とは繊維状の包有物を要因として内部反射した光が収束し、その結果球面に絹糸光沢のような光条を示す現象です。 しかし彼はそのような内包物に依存することなく、偶然に描かれた遊色によって猫目模様を生み出しているのです。 このように理屈では分かっていながら種も仕掛けもまったく見えないタイプのシャトヤンシーには、猫好きであるそれ以上の感動を抱かずにはいられません。 遊色効果ゆえに元から備わる神秘性と、それに加え紫外線による蛍光反応が合わさり実に神妙不可思議であります。 私に投げかけられた魅了の視線。 その魔力は生涯解けそうにありません。 #オパール #キャッツアイ #猫
宝石 鉱物標本 5.5~6.5 2019年テッツァライト
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ハイアライトオパール/玉滴石
先に投稿したメキシコ産と違いこちらは無色透明ですが、より「玉滴石」らしい石です。 別名「グラスオパール」のとおり、溶かしたガラスを岩の上にかけたかのような趣を感じます。 クリアな外観からは想像つきませんが不純物として微量なウランを含んでいるため、短波光を照射することでグリーンの蛍光を発します。 水飴のようにも粒々ゼリーのようにも見えるルックスがなんとも瑞々しいです。 #オパール
宝石 鉱物標本 5.5~6.5 2010年テッツァライト
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フェアリーオパール/珪乳石(メニライト)
パリ近郊のメニルモンタンで産出したことに因んで命名された鉱物です。 歴としたオパールの一種で、水中で堆積した珪藻の死骸を起源として形成されたとされます。 決して卵ではありません。 その証拠に、卵には見られない突起がぽっこりと。 しかしこのタンコブが余計に鉱物らしさを損ねているような気がしなくもありません。 このような鉱物離れした外観は、まさしく妖精の意匠。 #オパール
鉱物標本 5.5~6.5 2015年 SiO₂・nH₂Oテッツァライト
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強蛍光ハイアライトオパール/玉滴石
和名を『玉滴石』といい、その名の通り水滴が固まったかのような瑞々しいルックスが特徴的。 特定の結晶系を持たないガラス状(非晶質)であり、その透明な見た目から「ミュラーズガラス」とも渾名される鉱物であります。 不純物として含まれる微量なウランによりほんのりと黄色がかっているため、さながら天然のウランガラスです。 さらに外線を照射することでネオン管の如く強烈な蛍光を発します。 妖しくも美しい光で見る者を魅了して止まない、ウランは偉大な演出家なのかもしれません。 #オパール
宝石 鉱物標本 5.5~6.5 2014年/2018年テッツァライト
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赤瀬の普通蛋白石/コモンオパール
自然保護条例施行前の採集品です。 一部が玉髄化しているほか、ぽつりぽつりとしたクリストバル石らしき球状鉱物も確認できます。 オパールも玉髄もクリストバル石も、実はみな水晶と同じ成分で構成された鉱物なので、この標本はまさく二酸化ケイ素の三種盛り状態。 和名である「蛋白石」は、日本産オパールにありがちなゆで卵の白身のような質感に因むそうですが、これを見ると的を得たネーミングだと思います。 #オパール
鉱物標本 5.5~6.5 2017年 SiO₂・nH₂Oテッツァライト
