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ボロビエバイト/アルカリ緑柱石
セシウムを含有しているという…触れ込みで流通していた緑柱石で、アルカリ元素を含有していることから『アルカリベリル』とも呼ばれているものです。 "Vorobievite" とは本来であれば無色あるいはピンク色の緑柱石―すなわちセシウムに富むゴッシェナイトとモルガナイトのことを指す異名だったようで、一昔前の書籍の中にはそのような記載も確認できます。 しかし近年見かけるようになったこのアフガニスタン産のベリルに対してもその名が用いられているようです。 とは言えよくよく調べるとこの石自体のセシウム含有量はとても低いようで、ボロビエバイトの名は飽くまでも商品名として用いられている節があります。 緑柱石は色によって呼び名が変わる鉱物で、例えば緑色であればエメラルド、水色であればアクアマリンといったように区別されます。 こちらの石もまた冷徹な青色を呈しており、ともすれば単なるアクアマリンなのではないかと思ってしまうところです。 しかし通常の緑柱石の多くが柱面の発達した縦長の形状に成長するのに対し、こちらのボロビエバイトは薄板の形状をとっているのが個性的です。 また結晶内部には霜柱を思わせる繊維状組織が観察できることから、通常のアクアマリンとは明らかに異質な存在であることが伺えます。 このような六角板同士が密集し重なるように群晶となった姿は八重咲きの花そのものです。 花を象る鉱物として代表的なものに石膏や重晶石の「デザートローズ」や赤鉄鉱の「アイアンローズ」が挙げられます。 どれも大変美しい結晶でありますが、色彩的な観点で言えばこのアイスブルーの華々しさには及びません。 やはり花は色鮮やかであった方がより心惹かれるのであります。 #ベリル
宝石 鉱物標本 7.5~8 2019年テッツァライト
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ローマン・ガラス/銀化ガラス
アフガニスタンで出土したアーティファクト。 『ローマンガラス』とは帝政ローマにおいて作られたガラス工芸品のことを指します。 それら古代ローマの遺物が地中に埋もれ、約1600~2000年の時を経て『銀化現象』を起こしたものが銀化ガラスと呼ばれています。 銀化とは言うものの実際に銀(Ag)が表面を覆っているわけではありません。 地中に含まれる鉄やマグネシウム、銅といった金属元素とガラス成分が反応したことで形成された化成皮膜であります。 このように元は人工物なのですが、自然作用によってタマムシ様の干渉色が作られること、そして宝飾品としても人々を魅了していることから半天然石と言えるのではないかと思います。 特徴的なリング部分は何かの持ち手かと思いましたが、小指すら通れないほど小さな穴です。 となると紐状のものを通すための細工なのでしょうか。 このガラス片は一体なにの道具の一部で、どんな人に使われていたのか・・・ 想像がロマンを膨らますローマンガラスなのでした。
ガラス製品 宝石 2016年 アフガニスタンテッツァライト
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ヴェルデライト/リチア電気石
水酸化ホウケイ酸ナトリウム-リチウム-アルミニウムを主成分とする鉱物。 和名が示す通り、微弱な圧電性・焦電性を示す石として知られています。 リチア電気石のカラーバリエーションのうち、不純物として含まれた鉄分に由来する個体がこちらのグリーントルマリン。 またの名を「ヴェルデライト」と言います。 非常に小ぶりな結晶ですが、その分クラックも最小限に抑えられているので透明度が高く保たれています。
宝石 鉱物標本 7~7.5 2006年テッツァライト
