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ヘマタイト・アンモナイト/赤鉄鉱化したアンモナイト
ジュラ紀に生息していたと見られるアンモナイト化石が酸化鉄と置換され、ヘマタイト化したものです。 こちらの標本は切断はおろか研磨すらされていないため、一見するとヘマタイトらしさは見当たりません。 しかし表面にできた小傷をよく観察すると、なにやら赤茶っぽく粉吹いている様子が確認できます。 この色こそ、かつて赤色顔料「ベンガラ」の原料として利用されてきた血錆の赤。 彼が赤鉄鉱化を遂げていることを示す大きな証拠であります。 先にヘマタイトらしさが見当たらないと書きましたが、前言撤回です。 しっかりとライティングを整えて見てみれば、確かにどことなく色艶が金属質な仕上がりに感じられます。
化石 鉱物標本 5~6 2011年テッツァライト
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エンロール・アカストイデス/防御態勢の三葉虫
三葉虫は古生代における代表的な示準化石。 すなわち、その化石が産出した地層の年代を特定するうえで指標となる生物群です。 堅固な背甲と体節を持っているため、カブトガニやムカデなどと同じ節足動物でありました。 彼らはカンブリア紀に出現して以降、目覚ましい分化を遂げ、大量絶滅の発生したペルム紀まで綿々と命脈を繋ぎ続けました。 彼はその中でもデボン紀に生息していた『ファコープス』なる系統の個体で、多数の個眼からなる大型の集合複眼を備えているのが特徴です。 特に鉱物化していない素の化石ではありますが、彼の特筆すべき点はそのポージングにあります。 頭部と尾部を限りなく近づけ、弱点である腹部を隠すかのような防御態勢を取っているのです。 三葉虫といえば水底を這い蹲る扁平な姿が一般的に想像されますが、その身体構造は意外にもフレキシブル。 特定の種においては胸部関節の干渉が少ないため自由度の高い屈曲が可能となっており、球形態への移行もスムーズに行われるのです。 もちろんこのファコープス目も、そのような能力に長けていました。 こちらは全体的な状態も良好で、体節はもちろん複眼の凹凸など、各部のディティールが生前さながらに保存されています。 何よりもその丸まった姿は今も生きているようであり、ただの化石であることを忘れて愛らしさすら感じてしまうのです。
化石 2019年 モロッコテッツァライト
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アゲートシェル/瑪瑙化した巻貝
始新世後期の巻貝化石がシリカと置換されアゲート化したものです。 光にかざすと半透明で、シリカが内部まで浸透していることがよくわかります。 コーヒーシュガーを思わせる香ばしいブラウンがなんとも美味しそうです。 規則正しく生え揃ったトゲは生存率を高めるための防衛策なのでしょうか。 精いっぱいの威勢を張っているようで微笑ましく思います。
化石 鉱物標本 7 2013年テッツァライト
