Viaphacops bombifrons / Phacops cristata bombifrons

0

米国ニューヨーク州の、オノンダガ累層 (Onondaga) のファコプス類 (Phacopida) の標本です。頭胸部は揃っておりますが、尾部は折れ込んでいて、その有無は微妙です。

オノンダガ累層は、あまり知られていない累層であると思います。同産地から産出する種としては、吻の串状の構造が特徴的な、オドントケファルス (Odontocephalus) が、比較的有名かと思います。

ヴィアファコプスの一種かも (Viaphacops sp. ) との事で出品されておりました。
特徴から考えるに、ペンシルベニア州産の同累層産の、ファコプス・ロガニなどという名で、ごく稀に提供されていた個体と同種の可能性があるのではないかと考えております。ただし、この学名自体は元々古く19世紀中頃に使用されていたもので、その後、パシファコプスとして再記載されている形跡もあり、有効な学名でない気がします。未記載のファコプスとするのが妥当であると思われます。

希産でもあり、部分化石がほぼ全てであります。更に、ペンシルベニア側の産地は既に閉鎖産地なので、参照できる標本が数体のみしかありません。

それら理由により、全体像を把握することは難しいのですが、色々な画像を見るに、体高が低く、頭鞍の頭部に占める割合の大きな種だったのだろうなというような感想を抱きました。

追記:
コメントにて、ktrさん、Trilobitesさん、tatsutoyさんの3名よりご意見を頂き、Viaphacops bombifrons / Phacops cristata bombifronsで良いのではないかと思われましたので、学名を変更いたしました。参考の論文中の同種のfigureを写真の最後に掲載しました。

Default
  • File

    ktr

    2025/02/08 - 編集済み

    これ、もし産地情報が正しいとすると、相当な稀少種ですね。
    Viaphacops bombifrons かなあ、とも思いますが、どうでしょうか? あまりいいかげんなことは言えませんけど、頬棘(に当る部位)が尖っていたら、その可能性はありますね。

    返信する
    • 産地情報については、カナダで一番?のtrilobite enthusiastであるH氏からでもあり、信じても良いんじゃないかなと思っています。
      V. bombifronsの可能性について、Trilobitesさんの論文と併せて色々調べるに、仰る通りかと思います。頬棘あたりは埋もれていて見えないのですが、産地と頭鞍周囲の様子から、かなりの高い可能性でその種なんじゃないかなと思うに至りました。大変有益なご提案をありがとうございました。

      返信する
  • File

    Trilobites

    2025/02/08 - 編集済み

    以前話題に出した謎のファコプスですね。私も急遽、来月post分を同一産地と思われるphacops loganiとされる標本を出してみます。この公開が無ければ永遠にお蔵入りしてたと思います。複眼が分かれば古い論文で区別がつくかもしれないです。

    https://www.academia.edu/48252524/Systematics_of_Lower_and_Lower_Middle_Devonian_species_of_the_trilobite_Phacops_Emmrich_in_North_America_Bulletin_of_the_AMNH_v_151_article_4

    返信する
    • そうです、以前言及していた種です。
      mixi図鑑時代に、何度見返したかもわからないTrilobitesさんの素晴らしい標本群の中に、確か本種と似たような、extinctions経由のレアな北米のファコプスが掲載されていた記憶があります。来月公開予定なのは、その標本でしょうか?、楽しみに待ってます。
      複眼については微かにわかるかな?レベルで、私の腕では写真に写せませんでしたが、縦列でみて、おおよそ4〜5程度なのかなという感じです。

      論文ありがとうございます。私はこの論文を見つけられず、他の古い論文をみつつ、ああでもないこうでもないと、彷徨っておりました。ざっと読むに、tatsutoyさんと同じ結論になり、ktrさんご提案のP. c. bombifrons/ V.bombifronsなのではないかと、かなり確信を持てました。

      返信する
  • File

    tatsutoy

    2025/02/08 - 編集済み

    ormさんの標本、ktrさんの推理、Trilobiteさんの参照論文が絶妙なハーモニーを繰り出しており、思わずわくわくして拝見しておりました。私も少し推論を書きますね。
     産地のNew York州シラキュースは、アメリカ‐カナダ境界にあるオンタリオ湖に近いです。オンタリオ湖周辺にはRochester, Buffalo, Colborneと三葉虫化石が産出する地層がぐるりと取り囲んでいます。つまりormさんの標本はこれらの地層から見つかるPhacopsの近種である事が推察できます。
     更に論文を読み込むと、Onondaga層(注カナダの)からは、Phacops cristata canadensisが、またNew YorkからはPhacops cristata bombifronsが採掘されています。New York Onondagaの地層はオハイオ州の地層とほぼ同じなので、ktrさんの推論bombifronsがばっちり当たっています。 
    私はPhacops cristata bombifronsなのかなぁ、と思いました。楽しい推理をさせて頂き有難うございました。

    返信する
    • 大変詳しい解説をありがとうございます。オンタリオ湖周辺の地層まで把握されているとは流石ですね。私はその辺さっぱりですので、大変参考になります。
      Trilobitesさんから頂いた論文を参照にしつつ考えていたのですが、私も、P. c. bombifronsなのではないかという結論に至りました。
      複眼を縦で見た際の数は4-5個程度かなぁ程度ではっきりしないのですが、やはりOnondaga層で産出する種であるという事と、やや感覚的ですが、頭鞍の顆粒の疎な感じ、頭鞍と複眼の配置、複眼周囲のpalpebral lobeあたりの構造などが、論文中の同種のfigureにそっくりだと感じました。
      Tatsutoyさんのお墨付きでより自信が持てました。

      返信する