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Pseudophillipsia artiensis
ペルム紀ロシア産の本種は、昔から知られていて、年代別にコレクションするコレクターにとって、ペルム紀を代表する三葉虫として本種の完全体を探しているコレクターも多いと思います。珍しいとはいえ遊離頬が外れている個体は、長年収集していれば入手の機会はあったと思いますが、完全体は相当の難易度である事は三葉虫コレクターなら理解する所です。この標本も国内の有力なコレクターを経由して私の所に辿り着いています。Ditomopyge artinskiensisという別名も同一種と見ています。
Lower Permian Phillipsiidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-551-2 ArtiTrilobites
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Eokochaspis piochensis
Eoptychopariaとも呼ばれていた初期のPtychopariida(科)の仲間ですので、Ptychopariida(科)系の先祖と思われます。Piche shaleの中でもComet Shale Memberと呼ばれる層から産出される様です。平面的で短めの頬棘以外に目立った棘も無く、眼も確認できない特徴の乏しい種類です。同じ産地から4種類ほど記名されてはいるのですが、比較できるほどの個体数や状態の良い標本が少なく、同定は困難で最も古くから認識されていた本種が代表種の様になっています。
Middle Cambrian Ptychopariidae,Ptychoparioidea,Ptychopariina,Ptychopariida TRI-459 Pioche shaleTrilobites
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Paradoxides davidis trapezopyge
三葉虫コレクターのバイブル的な図鑑である「THE TRILOBITE BOOK」では、多くのページを割いて紹介される特別な存在として知られます。本種の初期にして完成された優美な姿と迫力ある大きさは、記名者で著者のRiccardo Levi-setti(1927-2018)だけでなく、多くのコレクターも魅了される存在である事に異議はありません。著書の中でも詳細が触れられていますが、P.davidisは、4つの亜種に細分され、素人目でも判断できるのは尾板の大きさで区別できます。本標本は、最も尾板が大きな亜種という事になります。産状として剥がれ易い母岩全体に幾つかの個体が折り重なる様に重なり、実物を見ると図鑑の様な完全な標本など奇跡的といえる状態である事が理解できます。元々崩れやすいカンブリア紀の大型三葉虫なので、この標本の状態でも一般的に入手できた中では最上位クラスであります。 [Left side:Negative,Right side:Positive] 【参考リンク】「Phenotypic variation in the Middle Cambrian trilobite Paradoxides davidis SALTER at Manuels, SE Newfoundland. 」 https://paleoarchive.com/literature/Bergstrom&Levi-Setti1978-PhenotypicVariationParadoxidesDavidis.pdf
Middle Cambrian Paradoxididae,Paradoxidoidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-734 Manuels RiverTrilobites
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Protolenus sp.
モロッコでは新産地とされるIssafenes。大型で特徴的な種が多く、コレクターに注目されて来ていましたが、実は軟体部も保存されている個体が存在する事も密かに知られていました。石質だけ見ていると軟体部が保存されるように思えなかっただけに意外に思えるかもしれません。近年は、オルドビス紀Fezouata累層の軟体部保存の知名度がありますが、Issafenesの軟体部もクッキリしています。触覚が保存されている、この標本、細くてしなやかな質感が良く分かります。
Lower Cambrian Ellipsocephalidae,Ellipsocephaloidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-686 IssafenesTrilobites
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Tretaspis sortita
地味に思われがちなTrinucleidae(科)の仲間ですが、頭部の鰐の規則正しい粒々と長い頬棘など小さいから目立たないだけで、実は派手な装飾のある三葉虫なんだと思います。化石では茶色ですが、実際は分からないだけでカラフルな配色だったかもしれません。この標本はスコットランドの閉鎖された著名産地からで、現代の剖出がされた貴重な標本です。この種の特徴の頭部鰐の粒々と長い頬棘が立体的に残されています。
Ordovician Trinucleidae,Trinucleoidea,Asaphida TRI-690 South ThreaveTrilobites
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Malvinella buddeae
入手時は、Calmoniidae(科)の一種という名称で学名不明でした。ノジュール中に埋もれるデボン紀ボリビア産の三葉虫は、見た目が同じように見えてしまうのですが、Malvinellaは一目で区別ができます。それ程、密に生えている訳ではありませんが、全身が棘で覆われていたと思われる突起が確認できるからです。大きくならない種類でありますが、ノジュールという産状であり、棘として取り出す事ができないのですが、実物はもう少し長くて細い棘が生えていて派手な種類だったと想像できます。 [Left side:Negative,Right side:Positive]
Middle Devonian Calmoniidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-267 BelénTrilobites
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Misszhouia longicaudata
ナラオイアの仲間を三葉虫の分類に含めて良いのかという結論は出てはいません。一般的な三葉虫の様に炭酸カルシウムの硬質の外骨格を持たなく、胸部と尾部が一体で頭部と二分割する構造は、外観上、明らかに別物であると見方もできます。但し付属肢(鰓脚)は、三葉虫とほぼ同じであり懸け離れた分類でも無さそうです。澄江動物群のMisszhouiaは、普通の産地では化石化できないであろうナラオイアの様な軟体部を保存できている貴重な産地で、言わずと知れたユネスコ世界自然遺産(澄江の化石産地/2012年登録)です。澄江のナラオイアは、大型の本種と小型で棘が特徴のNaraoia spinosa(Zhang & Hou, 1985)が知られていますが、本種の方が産出は少ないです。 (中国名:長尾納羅虫)
Middle Cambrian Naraoiidae,Nektaspida TRI-214 HeilinpuTrilobites
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Scabriscutellum sp.
Scabriscutellum hammadi(CHATTERTON et al.,2006)として入手した標本ですが、まだ正式な学名は付いていないと思われます。頭部や尾部が分かりやすいのですが、全体が細かい孔状の窪みがあり、体表面がツルっとした種類が多い他のScabriscutellumとは少し印象が異なります。幅広な体形でもあり、例え細かい窪みが無くても他のScabriscutellumとは違うことが分かります。産地のTafraoutは、他の産地とは違う亜種の様な三葉虫が多く見られ、一時期注目していました。
Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-506 TimrhanrhartTrilobites
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Parisoceraurus xiushansensis
2020年辺りから、今まで中国で見掛けなかった様なオルドビス紀の三葉虫が散見してきました。カンブリア紀産地では世界的な産地がある雲南省でしたが、オルドビス紀でも注目すべき産地が出現した事になります。褐色系軟泥質の母岩に同色の立体感が無い産状です。本種は購入元からの情報で、Parisoceraurus xiushansensisとなっていますが、まだ正式には命名されていない新種であると思われ、今後の研究に期待されます。
Upper Ordovician(Lower Ashgill Series) Cheiruridae,Cheiruroidea,Cheirurina,Phacopida TRI-730 PupiaoTrilobites
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Platyscutellum cf. massai
巨大なPlatyscutellumの尾板だけの標本です。同じ個体か分かりませんが、頭部の一部も残されています。扇子を広げた様な巨大な尾板だけでも迫力があり、推定する全長は15㎝を超えていた可能性があります。この大きさですとドロトプスにも引けを取らない存在感だった筈です。尾部の部分化石が積層している様な産状で、1990年位は市場で少し見掛けましたが、近年は珍しい化石となりました。
Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-276 Hamar LaghadTrilobites
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Stenopareia nexilis
スコットランドの著名産地であるガーバン(Girvan)産らしい焦げ茶色の標本です。頭部が折り曲げられてしまっていますが、全体が保存されています。姿としては、ポルトガル等で産出するEctillaenusとほぼ同じで、頭部と尾部が非常に大きく楕円形の体形をしています。
Upper Ordovician Illaenidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-361 South ThreaveTrilobites
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Asteropyge eonia
ベルギー国境に接するヴィルー・モルハイン(Vireux-Molhain)にはデボン紀の地層があり、周辺のドイツ、ベルギー、などと共通のデボン紀の三葉虫が産出します。現在は国立自然保護区に指定され採掘はされませんが、多くの種類が確認されています。保存状態だけ見ると他のエリアには敵わないのは事実ですが、味わい深い焦げ茶の化石は、欧州の三葉虫らしい渋みを持っています。Greenopsは比較的多く産出しますが、本種を始め数が少ない種類は入手が難しい産地です。
Middle Devonian Calmoniidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-685 JemelleTrilobites
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Huntoniatonia(Huntonia) lingulifer
デボン紀オクラホマ産の人気種の一つで、ダルマニテスの代表的な姿をしています。一昔前は、Huntoniaという属名でしたが、近年はHuntoniatoniaとされています。H.huntonensis(Ulrich & Delo,1940)やH.oklahomae(Richardson,1949)と比較すると明らかに尾棘が長いので見分けがし易い種類と言えます。
Lower Devonian Dalmanitidae,Dalmanitoidea,Phacopina,Phacopida TRI-486 HaraganTrilobites
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Zacanthoides liddelli
カンブリア紀の中では棘で武装していたZacanthoidesの仲間は、幾つか存在が知られ、その中でも本種は比較的近年に記載されています。Z.liddelliは更に2つのタイプが素人でも区別できるので、今後更に細分化される可能性もあります。本標本の様に頬棘が太めで背棘が短いか目立たない、尾棘も長くないタイプ。全体的に面長で背棘と尾棘が長めのタイプも見かけます。
Middle Cambrian Zacanthoididae,Corynexochoidea,Corynexochina,Corynexochida TRI-600 Spence ShaleTrilobites
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Greenops widderensis
見た目がモロッコの一般種、Hollardopsに近いので一般種に錯覚しますが、北米のGreenopsは簡単に入手できない種となっています。オンタリオ州(カナダ)やニューヨーク州(米国)で産出しますが、Greenopsの中では本種は最も入手はし易い種と思います。ニューヨーク州では、見た目がほぼ同じのBellacartwrightia(中葉に1列の細かい棘の痕跡)も産出しますが、Greenopsの方が希産で小型である事が多いです。 【標本リンク】Fossilera https://www.fossilera.com/fossils/85-greenops-trilobite-hungry-hollow-ontario
Middle Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-707 WidderTrilobites
